アイキャッチ画像
よもやま話

更新2023.11.22

「川崎33」のナンバーを引き継いだ、左ハンドル仕様の1998年式ルノー ラグナ

ライター画像

中込 健太郎

前にもご紹介したかもしれませんね。私の愛車マセラティ430、今年の猛暑の中、エアコンガスがどこかから抜けてしまったようなのです・・・。コンプレッサーは動いているので、おそらくはガスを充填すればいいのですが、こういうのは虫の知らせかもしれません。日常の使用にマセラティ430を用いるのは気が引けていました。こういう症状は、「こんな猛暑の中、アシに使うな!」という、クルマからの悲鳴のような気がしていました。昔はエアコンはつけずに乗っていましたが、私も年を取ったものだと思います・・・。

しかし、お金がない。悲しくなるくらいお金がないのです。何かクルマを迎え入れるにしても、安いクルマと言っても手に入れればそれなりの出費がッ掛かります。まあ、そう都合よくクルマは見つからないだろうと思っていた矢先でした。取材の帰り、久しぶりに東京都大田区のアウトレーヴにコーヒーでも飲みに行こうと寄ってみると、ムッシュこと平澤さんに「込みちゃんいつもいいところに来るね」と言われたのです。そこにあったのが、このルノー ラグナでした。



1998年式のRXE。珍しい左ハンドルで、オールレザー「バカラ仕様」。トランクのスーツケースもかなりきれいな状態で残っています。距離は34000km台。「実はもう廃車しかないかなと思って。廃車にすれば解体屋さんに買ってもらえるし。」ということで、多少のきんすを支払って引き取ったのだそうです。



しかし、商品車にするには、外装の状態、色褪せが気になります。引き取ってはみたものの、売ろうにも売れない・・・。小売りをするとなればそれなりに責任も伴います。さらに、車検が間もなく切れる状態でした。フランスモータース、ヤナセが仕入れたこのクルマ、以降、ことあるごとに点検整備はディーラーで受けている個体でもあります。

前回の車検時も、事業を引き継いだ横浜の日産ディーラーで一連の作業を受けていて、それからの積算距離は1000km程度。特に問題もなさそうです。しかも、ワンオーナー車であるこの個体、「川崎33」というナンバーも、筆者は引き継げます。そんなことから「このクルマ、エアコン効くかなあ。エアコンが効いて、しかも車検が通ったとしたら、このクルマをメインのアシとして少し使うのもありかな・・・」と思い始めました。



ムッシュに断って、一周試乗することにしてみました。まずドアを開けたとたん、想定するフランス車の剛性感をはるかに凌駕するしっかりとしたボディ。その後、都度都度感じることとなるのですが、20世紀との別れを惜しむかのようにルノーがこのラグナに込めた技術の粋、そして、間もなく20年という歳月を迎えつつあるにも関わらず、いまだに35000kmに満たないという極めて僅少なマイレージ。さらに、その間に趣味的に・・・ではなく、どこか淡泊ではあるけれど、必要最低限以上に注がれてきて愛情・・・。この双方についての驚き、同時に初めて感じたのでした。



イグニッションをオンすると、柔らかく一発で、静かに目覚めるエンジン。たちまち強烈に送り出される、猛暑にも負けないエアコンの冷気。あらゆる点に歳月を感じさせないほころびのない灯火・警告灯類。いやなにおい、ほころびのない内装のコンディション。一瞬にしてそうしたことを冷静に確認できるほど気を安らかにさせる秀逸かつ大きすぎないシート。そして、気持ちを静かにさせる佇まい・・・。

それでも、確実に高揚させるコンディションを誇るこのルノー ラグナ、実は一番気になっていたオートマチックでした。悪名高き「AL4」、極東の島国ではおよそその挙動はふさわしくないとされ、これが故障してクルマとの別れを告げる人の話を聞いたことは一度や二度ではありません。ここに怪しいにおいがあれば、そこであきらめるつもりでした。しかしながらどうでしょう。結論としては、今までに乗った数多のオートマチックの中でも屈指の滑らかにして静かな動き。それこそ、セルシオ用のオートマチックにも匹敵するほどショックが少ないコンディションでした。最後の4速は60km/hをまたがないと至らしむことのないローギアながら、ひとたび4速をまたいだら、ある程度のトルクを送り続けることで4速を保つ挙動のこのオートマチック。これを今体験するというのも、こういうコンディションのクルマならできると思わせるほどの無垢さが感じられたのです。

この時点で、半分決めました。迎え入れることにしたのです。とりあえず引き取って、車検を通すことに。店頭で商品車とするには確かにややみすぼらしい外装状態ながら、その反面、他にネガティブさを感じさせない・・・そんな個体でした。「確かにつぶすのは惜しいクルマですが、かといって商品車するにはコストがかかりすぎて合わないし、このままでよければ・・・」ということで、筆者に譲ってくれることになりました。



個人的にはフランス車ではシトロエンが一番好きです。新車当時は、エグザンティアの前にこのクルマの良さはわかりませんでした。そして「にもか関わらず」とあえて申し上げた方がいいでしょうが、当時からこのクルマに対する評価は極めて良いものでした。シトロエンにはトピックがあります。ハイドロニューマチック。エグザンティアにはその発展型ハイドラクティブⅡサスペンションという話題がありました。それに比べて、ルノーは極めてオーソドックスな手法でクルマが成り立っています。少年時代の私には、エグザンティア以上の魅力が感じられなかったのです。それでも尽きることのない高い評価。来年には初年度登録から20年を迎えるこのアッパーミドルルノーなら、乗らねばわからない、ルノーならではのキャラクターや魅力を垣間見ることができるかもしれません。そんな期待があったのも事実です。



ひとまず、アウトレーヴが前のオーナーから引き取った3万円、自動車税の未経過分、(私が引き継ぐには一か月余分ながら)前オーナーが受けるはずだった還付分の3万200円、それと、ETCがないと困るので、何か見繕ってつけておいてほしいと頼み、トータル6万5千円を支払って引き取ることにしました。このほかに継続車検を受けねばなりませんが、市中自動車販売店、どこを探しても見つからないクルマ。見つけたらその価格で買えるはずもありません。またその価格なら、車検が通らなくても、途中で例の鬼門である「ガラスのオートマ=AL4」が臨終の時を迎えても、デュトロで解体屋さんに持っていけば、得はしないままでも、ほぼ近い金額が回収できるレベル。実は、最小限にリスクを抑えられるクルマでもあります。



結論として、後継続車検も一発合格しましたので、名義変更の手続きも実施。10月下旬に開催されるフレンチブルーミーティングにも取材に行けるかしら。少しだけ乗ってみましたが、エアコン効けばいいはずだったのに、これは相当いいクルマである予感がするのです。



「まいったな」というのが今の正直な感想です。エアコンでも効いていれば、こんな希少で秀逸な車種でなくてもよかったのです。



早速「近所の某編集部Sさん」とのナイトドライブや、はじめて登録車の車検を自分でレーンを通した話、ローギヤードなはずが割と燃費もよさそうという話・・・等々、今後、よもやま話にご紹介できればと思います。

[ライター/画像 中込健太郎]

外車王SOKENは輸入車買取20年以上の外車王が運営しています

外車王SOKENは輸入車買取20年以上の外車王が運営しています
輸入車に特化して20年以上のノウハウがあり、輸入車の年間査定申込数20,000件以上と実績も豊富で、多くの輸入車オーナーに選ばれています!最短当日、無料で専門スタッフが出張査定にお伺いします。ご契約後の買取額の減額や不当なキャンセル料を請求する二重査定は一切ありません。