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よもやま話

更新2023.11.22

積載する歓び。積載車は新しいクルマ趣味のカタチではないだろうか

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中込 健太郎

GAZOO.comのデイリーコラムでも書かせていただいておりまして、小ネタや、イベントのレポートを書かせておりますが、昨年秋に購入した私の日野デュトロ、極東フラトップの積載車ですが、これについて「積載車を買ったライターはそんなにいないだろう」ということで記事を書かせていただきました。まあ、面白半分で買って、いろいろ気づきも多いということなのですが、ふつう私の書くネタはちょっと一般受けするものでない話題が多いのか、1か月ほど経って3000とかその程度の来訪者数であることが多いのです。



しかし、この積載車の記事、早々10000ページビューを突破した模様。書いた本人も若干ひいております(笑)

【買ってみた】クルマを載せる積載車を買って感じたメリット・デメリット(GAZOO.com)

しかしながら、購入からもうすぐ10か月、専業の運送屋さんではありませんが、13000kmほどを走破。そんな中で感じたことは自動車ライターとしてかけがえのない体験やコミュニケーションをもたらしてくれることに気が付いたのです。そんなことを今日は書き留めておきたいと思います。



最初は本当に、面白いだろう、誰も乗ってないだろう。本当にそれだけで、個人的な与信枠もいっぱいになりそうだというギリギリのタイミングで、頃合いの価格の個体に出会えたので購入した、というのは本当のことであります。共有在庫で売りに出されているモデルはどれも高価。業販の売り物でも200万円(税抜き車両価格)位するものがほとんど。距離が20万キロ台の多すぎないもの(ヘタすると50万キロオーバーのものも出てくるので。)で、それなりに錆も浮いて、看板車で、オートマチック。

価格が競りあがりやすい条件に逆行する要素が多数ある私の個体を、自社でも使おうということで競り落とした岐阜の中古車屋さんが比較的良心的な利幅で中古車情報サイトに掲載。お店の人曰く「載せた途端に中込さんが問い合わせを入れてきた」とのこと。そのくらい実は珍しい、というかドンピシャな個体が私のデュトロなのです。大垣のショップまで見に行き、その場で手続きをして購入することにしたのでした。車検も取って川崎まで納車してもらって197万円。破格の出物でした。




▲実物大の「走るコレクションケース」

さて、そんなデュトロ、はじめのうちは近しいショップのおつかい的なので利用することが少なくありませんでした。しかしそんな中、私がこのクルマで運ぶのは希少車も少なくありませんでした。古いクルマ、輸入車など運転席後ろの窓越しに荷台に乗るクルマをバックミラーで眺める。純粋にクルマ好きとして至福の時間でした。クルマを愛でる方法。博物館や、コレクターのおうちを訪問して眺める。縁あってステアリングを握って試乗する。大体これが一般的でしょう。

しかしながら「積んで運ぶ」はこれと同等くらい独立した、しかもほかの方法では味わえない妙な一体感を感じることができる鑑賞方法だと言えるのです。運ぶからには誰かのため、であることも多いですし。実際移動させています。そのクルマ固有の重みがデュトロのステアリングを伝わって感じられるのです。「積載する喜び」は積載車を買って、積んで運んでみないとわからないクルマの楽しみ方だ。積載車を買って初めて知ったクルマのもう一つの楽しみ方でありました。




▲積んだ車の重量、重心位置、を味わう。

私のデュトロは最大積載量2000㎏のクルマです。しかし超ロングと呼ばれるクルマで、ベース車のブレーキなどが3000㎏積みようのモノより小さいため、見た目にはやや華奢なホイールをつけていること以外は3000㎏積み車に近い成り立ちののトラックになっています。積むということは、空荷の時より車体全体が重たくなります。実は積んだ時の方がバタつかず乗り心地はいいのです。シャーシがしっかりしているので、なだらかなカーブは楽しいものです。そういうクルマのバランスも含め、重量的には積載状態を基準に設計されているのがよくわかります。

そして単に1000㎏積んだ時、1500㎏のクルマを積んだ時。もちろんそのフィーリングの差は感じますが。それ以上に車高やエンジンの搭載位置に起因する重さもステアリングを伝って味わうことができるのです。これもまた、クルマをダイレクトに乗り回してわかることとは違う積載車特有の楽しみ方だと思います。ちなみに理想的なのは996/997あたりの水冷ポルシェ911を後ろ向きに搭載した時、でしょうか。重量もおそらく荷台設計上のほぼ「中値」であり、単独で走っても特有の安定感を加速時にもたらす圧倒的なリア偏向型荷重。これをキャビンのすぐ後ろに来るように積むのです。

ポルシェ911のいいところは車高も低いので、おそらく運転台の屋根の高さをさほど超えない高さにしかなりません。これを積んでいる状態はデュトロ全体に特有の塊感をもたらします。車輪の固定位置やその締め付け具合もしっかり固定してあることが前提ですが。今までの短いキャリア(色んな意味でキャリアですねww)の中ではこんなことが言えるのです。




▲目的地で言われるありがとう

広報車を借りて、発表会に呼ばれて乗って評価する。多くのインプレッションはそういうものだと思います。私の同業者の中にも有力媒体でそんなものを書かれている方もいらっしゃいます。しかし、クルマを記事ですすめて、その先読者がその記事を読み、購入する。ここが実際にはかなり肝になるとは思うのです。九州で首を長くして購入したクルマを待つ方にデュトロでお届けに伺ったこともあります。その時「こんな遠くまでありがとう。おもっていたよりもきれいで大満足!ありがとう!」と言われるのです。

新車でも中古車でも購入者は納車を「待ちに待つ」のです。その時の感動はひとしおです。世の中「カーライフ」のことばかり言いますが、「納車の瞬間」は一度きりしかありません。もちろん昔から憧れていたクルマを手に入れた歓び、ただローンの始まりで少し気が重いかもしれません。そんな甘美でほろ苦い、しかし期待に胸の膨らむ一瞬だって、このデュトロがあったから立ち会えました。クルマのライター、メディア関係者はこういう機会にもっと触れねばならないのです。本当は。あの言葉を聞いたとき、1100km荷台に積んで走ってきた意味をかみしめたものです。



クルマの良さを分かりやすく解説することも必要です。しかしそんなものはどんなにきれいな文でまとめても、鋭く斬っても、契約書にハンコをつく前の最後の判断はユーザー自身なのです。そんなことよりも、ユーザーが当然に感じる感動。こういうものももっと身近に肌で感じているかどうか。

クルマのライターやジャーナリストはもっと知っておくべきではないでしょうか。自分がもともとリテール寄りのところでクルマを扱ってきたのが実務経験では長かったことも影響しているのかもしれませんが、そんな風に感じました。こう考えると、デュトロがあるからこそ体験できること、感じることはとても多いのです。





日本に何台あるのかしら?マンションも買えるんじゃない?というクルマも運んだりしました。マセラティに乗っているといちいち視線の先にちらちらと割り込むトライデントが「あなたが運転しているのはマセラティですよ」と主張するという話は以前ここでしたかもしれません。しかし「今○○を運んでいますよ」とミラー越しに主張してくる荷台のクルマ達。

まずクルマ趣味としても「積んで初めてわかること」をいろいろと感じさせてくれました。これからも様々な発見を求めて積載車を使っていこうと思います。そんな素敵な体験をさせてくれたクルマ関係の仲間たちには改めてこの場を借りてお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。また何かあればお声をおかけくださいね。





[ライター・カメラ/中込健太郎]

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