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よもやま話

更新2023.11.22

聴きたいのは名曲ではなく名演奏(メルセデスベンツE220d ステーションワゴン試乗記)

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中込 健太郎

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先週はメルセデスベンツの新車整備センター累計整備台数100万台突破ということで、急遽メルセデスベンツ日本からお誘いただいたもので、愛知県豊橋まで出かけてきました。お誘いをいただいたついでに「折角なんで、何か試乗させていただけたりします?」まったく何が折角なんだかは全く謎に包まれていますが(笑)、快くE220d アバンギャルドステーションワゴンを貸していただけることになったという次第です。

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現在メルセデスベンツEクラスは、単一車種で2種類のディーゼルエンジンをチョイスできる唯一の乗用車ではないでしょうか。2014年に関西往復の際に拝借した6気筒のディーゼルは、間違ってガソリンを借りたのではないか、だとすると燃料ハイオク?燃費もディーゼルの半分とかかなあ・・・ガクガクと勝手に恐れ戦きつつ、フューエルリッド(キャップ)と後ろのバッジを確認するため、クルマを停めて確認したほど、静かでした。今でもあの感動は忘れられません。今回の、2015年になって大量導入している4気筒ディーゼルエンジンはどんな感じかしら。メルセデスコネクションで少しだけ乗せていただいたことはありますが、やはり最低豊橋くらいさくっと行って帰ってこないと、それなりのことは言えないのではないか、という口実のもとに憧れのドンガラ(褒め言葉です)実用ディーゼル乗用車をテストドライブさせていただくことになったわけです。

その感想を今週は少し綴っておこうと思います。

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フロントに納まるエンジンが「4気筒のディーゼルエンジン」であることの価値

まず何よりも、運転席に座るや否や「ああ帰って来た。」と思えるあの瞬間は間違いなく「メルセデスな瞬間」だと思います。別に何か射幸心をあおるような扇情的なギミックや、演出の盛り込まれた空間ではありません。しかし、あるべきところにあるべきモノがあって、十分にゆとりがあって、新車なのに「懐かしい」のです、どこかしら。

日本車のウィンカーレバーのようなところにあるシフトセレクターを「D」にセットし、走り始めると、たちまち実は驚くほど大きい荷室を背負っているワゴンであることを忘れそうなしっかりとしたボディの感覚を実感するのです。そしてメルセデスベンツ日本がある駐車場からスロープを上がり、ホテルオークラとアメリカ大使館に通じる道へクルマを出そうとした瞬間に「君、任せておいて大丈夫だね。」と思わせられたのです。決して分厚い、扁平率からいって乗り心地重視だな、などというタイヤは履いておらず、当然にスタイリッシュ、当然に大きく重たいボディをそこそこのハイペースで振り回し、クルマを支えるのに必要な幅とグリップを稼ぐことも考慮した薄めのタイヤです。それでも嫌みのある突き上げは皆無です。それどころかどういう路面かのインフォメーションもタウンスピードから得られつつ、歩道をまたぐ際の低くなった縁石などを越える時に「ぴょこん」というサスペンションの伸び縮みがしっかり感じられるのです。もっちりと、いちいち「面取り」をしてくれて振動を伝える心づくしは「あ、メルセデスメルセデス♪」とその都度思うのです。

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ここまでのわずかな間に、まず「全方位にわたってお金がかかっている」ということ。「足回りに関しては完全にキャパが勝ってる」ということを気づかせてくれました。これはすなわち、6気筒より軽く全長の短いエンジンは、ガソリン4気筒よりは重たい。そういう質量をボンネットの下に抱えていることがハンドリング、乗り心地に影響していると言うことの気づきと言っていいかもしれません。エンジンのマウント、各種の遮音材、ステアリングから伝わる剛性感、そして6気筒エンジンを積むことを前提に設計の中値を設定しているのでしょう。各ディメンションから少しづつ生じる余裕が強く伝わってくるのです。

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真夜中に箱根を越えて三島へ降りる途中、この鼻先の軽いハンドリングは適度に小気味よいもの。しかし、軽く滑らかながら、ばたついたり、ふらついたりすることはもちろんありません。感覚より少しだけ早く、十分な蛇角を得られます。車速との連携も絶妙。どんな状況でも切りすぎることが無い。リニアに曲がっていく感じは鋭さは無いが明確にシャープ。刺激やスリルは無いがはっきりとドライバーズカーだと感じさせてくれるのです。

すべて、このエンジンの発生出力に加えて、重量物としての主張として、このクルマに実にあった内容で、絶妙なマッチングの妙を見せてくれる。6気筒よりは確実に大きめなノイズながら、絶対的には静かで滑らか。もともとシルキーで「ビロードの触り心地」の感覚を見せてくれるタイプではないはずです。秀逸な躾のされた上等な道具としての自動車こそ「メルセデスベンツの中型車(ミディアムクラス)〜Eクラス」なのです。「メルセデスの世界」はこのクルマにはしっかり宿っているのです。

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「4気筒」がもつアイコンとは。

昔は6気筒があって4気筒のグレードがあると、4気筒は自然と廉価版という位置づけでした。最近はダウンサイジングターボもはやっていますし、このクルマに搭載されている4気筒ディーゼルエンジンは今やSクラスのディーゼルハイブリッドエンジンにとしても活躍するユニット。エンジン自体のつくりも昔の「6気筒もあるけど4気筒エンジンの方」という位置づけとは大きく異なっているようです。さらにエンジンマウントもいい仕事をしているのでしょう。そして何より、クルマの躯体のお金のかかり方、手間の掛け方がやはり同じくらいの大きさのクルマの中では群を抜いている印象があるのです。感覚的にはもっと粗野なモノでもいいと考えていました。昔のミディアムクラスの4気筒などでもそういう面はあったと思いますので。しかし、4発ディーゼル、ヨーロッパ製の実用高級ワゴンというものに人々が抱くいいことばかりを享受できて、振動や騒音のような「多少我慢すべきこと」がかなり低減され表に出てこないようにできていることに、「随分得したな」と思ってしまうほどです。

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リッターあたり15キロを割らない燃費。

豊橋を往復して650キロを超えたあたり、まだ燃料タンクは3分の1以上は残っている状況で、軽油を42リッター飲み込みました。今の価格で4000円でおつりの来る金額です。高速クルージングだけを取ってみると昨年関西まで行った時に乗った3リッターの6気筒の方が燃費がいいような局面もあるようです。しかし日本の道路事情で使用する場合はこのエンジンの方がいいかもしれません。ストップアンドゴーと少し急加速を必要とするような流れでも2000回転以下ですべて片付く話なのです。拝借した広報車、確かに安いクルマでは無く、見せグレードではない実質的エントリーグレードに相当するものでありながら、おそらく多くの人が選択するであろう最小限のオプションが20万円弱ついて700万円を越えるクルマです。しかし、私もそうなのですが、この燃費とこのコスト、今のガソリン代との差額でこのクルマのローンが組めるのではないか?まじめにそう思うほどであります。もっとも自転車操業・火の車のフリーランスライターが目算を立てたところで予審が通らない可能性が高いが、理論上はそんな勢いの経済性だということができるのではないでしょうか。

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願わくばEがいい。

しょうもないダジャレではない。最近立派になったCクラス、かなり歴代Eクラスからの乗り換えも少なくない模様です。ただ個人的には「願わくばE」というチョイスをしたいなと思った次第です。Cクラスは著しく外板を軽量化しているので、それが如実にハンドリングに現れます。新時代のアッパークラスの乗用車、申し分ないと思います。しかし、先頃発表になった今回試乗したクルマと同じエンジンを積んだグレードはそんなに安くはないというのも理由の一つではありますが、コンベンショナルなクルマとして造りがいいこのEクラスはとても買いだと感じるのです。メルセデスベンツにありがちな「あの頃は良かったのに」的な発想でもこのクルマならその面影、片鱗が見え隠れしているのでいいでしょう。そしてモデル末期にさしかかったEクラスは借金をしてでも買うべきクルマ、というのは四半世紀前のカーグラ少年だった私が当時のカーグラフィックの誌面でもみたフレーズだとは思うのですが、全く今も同じことが言えるような気がするのです。あの手この手、攻めの展開が目覚ましい今のメルセデスベンツのラインナップの中では、びっくりするほどオーセンティックなキャラクターだと思います。Eクラスの中でもそうかもしれません。でも、だからこそこのクルマには選ぶ理由がある、そう感じました。

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例によって返却するのがいやでした。でも正直言うとそれほど寂寥感が無かったのも事実なのです。なぜなら700万円オーバーの高級車であるにも関わらず、乗った瞬間から「ずっと前から僕の愛車のような」手になじむ感じ、定番感、愛おしさが一気に私を押し寄せて借り物だという感覚すらちらほら希薄になるほどのクルマだったからです。とにかく「at home!」、こういうメルセデスとの暮らしに私はついつい憧れてしまうのです。

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(カレントライフ)Eクラスのエントリーグレードに、待望の「4発ディーゼル」上陸!

メルセデスベンツは決して高級車かといえばそうではないと思うのです。しかし、この何でも無い奇をてらわないクルマの隅々までしっかりと思想が宿る。これは昔から一貫してメルセデスがもつ世界のような気がするのです。しかしこれに触れるとき、とても清々しい気持ちになります。評価先行のいわゆる名曲に触れるより、思いを込めた名演奏に出会った時のあの喜びのような。ひっそりと輝いて見えるメルセデスの輝きはこういう者なのではないでしょうか。

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