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よもやま話

更新2023.11.22

「1930年製だけど」シトロエンC6を乗せていただきました

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中込 健太郎

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よもやま話、しばらくお休みしてしまいました。いろいろ立て込んでいたのもあるのですが、単なる、「こんなことやこんなことがありました」のブログ的なものではなく、内容的には今までのような流れながら、もう少し項目ごとに扱っていこうということになり、少し紹介の仕方を変えようか、と編集部と話したりしておりまして。しかしやめるということではないので、これからもあちこち出かけては、見たもの、口にしたもの、聞いたことなど、ご紹介していこうと思います。

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ガレージには暖炉もあり、いい木の香りに囲まれている。もちろん貴重なクルマにフィットするサイズだが、蓄音機、冷たい飲み物など、ものすごく居心地のいい空間だ。

さて今回はちょっと珍しい車に乗せていただいた話。取り上げたいと思います。シトロエンC6に乗せていただいた、という話です。「え、試乗記?」「最近のそんなクルマ、乗ったことあるよ。」という声も聞かれそうですね。最近まで作っていたシトロエンフラッグシップカーC6、かなり大きくクラスが上がりすぎてしまった印象もあり、台数的には世界的にもあまり売れないクルマだったようですね。私の周りでも何名か乗っておられる方がいらっしゃいます。ハイドロシトロエンの集大成。そう言ってもいいのかもしれませんね。

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我がマセラティ430と記念に一枚。マセラティ乗りに取ってシトロエンは常に気になる存在だ。SMとカムシンなど両社が生んだ名車も忘れることはできない。

でも私が乗せていただいたのは実はハイドラクティブサスペンションは付いていません。なぜならば今回乗せていただいたのは最近作っていたそのC6ではなく、「1930年製のC6」だからです。今回大田区の自動車販売店「アウトレーヴ」が、文化芸術など、クルマ以外の新しいムーヴメントを創造していく新会社「ポン・ド・レーヴ」を設立。そのお披露目を兼ねた「ツーリング・コンサート」が開かれたのが軽井沢のアンシェントホテル浅間軽井沢で、このクルマを収めるガレージが敷地内に建ち、ここを訪れた人は誰でも見ることができるという。

実はこのガレージも、ガレージがあってそこにに収めるクルマを買い入れたのではなく、このC6を収めるためにガレージのスペシャリスト「カクイチ」が設計施工した特別なガレージなのです。このC6を納車したばかりではなく、ガレージの空間演出なども手がけたことが、アウトレーヴが「ポン・ド・レーヴ」を発足させた大きな足がかりになっている、ということもあり、新会社お披露目のイベント会場にこの場所が選ばれました。その意味では、このクルマも、今回の主役の一人のような存在だと言えるかもしれません。

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シトロエンC6「ハイドッラクティブサス、壊れない?」と言われたら、「うちのはそういうんじゃないんだ」と言ってみたいものだ。

現在アンシェントホテル浅間軽井沢が所有するこのクルマは、長く日本にあった個体のようですが、現在一度ナンバーが切ってあります。この夏から車検取得、ナンバーの取得のために入庫するそうですが、その前に、敷地の中を一回り運転させていただく機会をいただいたのです。

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この佇まい、眺めているだけで、時が経つのも忘れられるようだ。

とても大きく感じられるが、先頃まで日本で販売されていたC5くらいの大きさ、長さと幅はそんなものです。エンジンルームを開けると、全くこの大きさが無意味なんじゃないかと思うほどにびっくりするほど低い位置にコンパクトにエンジンが搭載されています。ここまでがFRモデル。以降、シトロエンはFFで乗用車を作るようになります。こんなに古いのに、その意味では、私たちの知るシトロエンの「すぐその前、直前のタイプ」でもあるわけで、そんなことに思いを馳せると、またシトロエンの先進性、高い志を逆に思い知ることにもなるのです。

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エンジンの搭載位置の低さに、一瞬エンジンがないのかと思うほど。FRはしっかりホイールベースの間にエンジンを搭載するなど、クルマとしての完成度は高い。この時代にある種の完成を迎えているのだと感じさせる。自動車史的にも、シトロエンの技術水準としても。

排気量2400cc、OHVエンジンをフロントに搭載、3速のマニュアルトランスミッションをと組み合わされ、最高速度は105キロだそうです。そして、今回ちょっと伺ったところによると、このクルマ、なんでもシトロエンの創設者「アンドレ・シトロエン」が乗っていた個体なのだそうです。このままいけば秋の軽井沢をこのクルマで走ることも可能だというので、その時にはまた改めて、とお願いをしたことは言うまでもありませんが、今回この木漏れ日の溢れるアンシェントホテルの敷地内で、一回りさせていただくことになった、というわけです。

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まずエンジンの始動です。基本的にはクランク棒は使いません。まずエンジンルームを開け、ガソリンタンクのコックを開きます。そしてキャブレターに手で数回ポンピングして燃料を送り込んであげたら、あとは運転席に座り、電源のキルスイッチをオンにし、イグニッションスイッチを引っ張ると「事も無げに一発始動」して見せました。この時期であれば軽井沢でも別にチョークを引いてあげるまでもありません。

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エンジン始動の儀式、と言っても簡単だ。この真鍮のコックを開く。

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エンジンの越下にあるつまみをポンピング。キャブレターにガスを送り込む。

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キルスイッチをオンにした後、お隣を引くとあっという間にエンジンは始動する。

私のマセラティ430、ややレーシーな番手のプラグが付いている事もあり、走行環境が変化すると、少しかぶり気味になることがあります。そんな時ですと、時に一発でかからない事だってあるのに。危なげなくかかるこの古いシトロエン。恐るべきコンディションです。

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アイポイントは高く、思いの外取り回しは楽。ハンドルの重さは、しかし、クルマのペースと呼吸を合わせてやる必要がある。

そしてあとは左手前が1速、右奥が2速、そんなには使えませんが、そのまま手前に引いて3速。リバースギヤは1速の前に配置されているHパターンのギヤ。サイドブレーキを大きく押してリリースし、ゆっくりクラッチを上げながらアクセルを踏み込むと、「エンジンの回転が上がる前にトルクがまず湧き出した」かのように、走り出します。実に扱いやすい。現代のクルマだってもっと乗りにくいクルマは沢山あるもの。ガリバーにいた時に引き取りに行って運転した、強化クラッチの入ったランエボⅧはもっと往生しました(笑)納車の後は「オートバックスかイエローハットにでも行って、ETCつけてもらって、ナビはどこにつけようかしら、バックカメラもいるな・・・」というような今時のクルマで出かける支度でもしたくなるようなそんなクルマでした。

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シックな紺色にはある種の伝統を感じる。軽井沢でこのクルマに出会えた幸運をまず感謝したい。

この車庫から出て森の下の道を通って、裏手からここにクルマを戻す。さすがにステアリングは重い。実に重いが、見た目から想像する程度の力を入れてあげれば、重くて乗れないということは全くありません。それどころか、そのくらい、前時代的な要素がないと、うっかり普通のクルマかと思うくらいに普通に乗れる。正直そんなことをぐるぐると2周ばかりして、降りてもまだ、1930年のクルマに乗れたことが信じられないくらい。今の常識で、今の感覚で乗れたことにびっくりした。1930年製のアンドレシトロエンの乗った、由緒正しいC6に乗った以上にその衝撃は大きいものでした。

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品のいい佇まいはシトロエンの流儀。

これから車検。そして秋口にはナンバーがつくとのこと。こんなクルマで軽井沢散策に出たらそれは楽しかろう。サンドウィッチと熱い紅茶でもホテルで魔法瓶に詰めてもらい、ドライブに出るなんておつではないか。もちろん貴重なクルマゆえ、一般に貸し出す予定はないものの、何らかの形で、宿泊した方を軽井沢散策にお連れするようなことは、田中社長、考えておられるようでした。

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2周目には切返さずにここに入れることができるようになった。ここでも感じるのはトルクがあることの正義。実にコントローラブル。貴重で不慣れなクルマでもトルクこそが強い味方だ。

こんな妄想をしていてひとつ気づいたのは、今も昔も、前にたたずむだけで、夢が見れる。今も昔もシトロエンとはそういうクルマなのですね。

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前の白樺を避けるのも造作ない。車両感覚もつかみやすい。

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この時代からもう既にロゴは今風だ。トラクシオンもアヴァンなら、センスも技術も「総じてアヴァン」。前へ前へなシトロエンを痛感する。

アンシェントホテル浅間軽井沢はこちらをご覧ください

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