武骨なのにかわいい。歴史をたどると旧共産圏のクルマも実に面白い

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かつて東西冷戦真っ只中だった1990年以前、欧州で「西側」と「東側」を隔てていた「鉄のカーテン」と呼ばれた国家の境界線の向こうには、「西側」と呼ばれた資本主義経済圏の属する西欧とは違った共産主義圏独特のクルマ文化が存在しました。戦後しばらくは西側も東側も自動車開発ではほぼ互角で、1960年代初頭までは国際モータースポーツでも西側と東側の車両が競い合っていた時代もあったようです。

「共産主義の象徴」から「東西ドイツ統一の象徴」になったクルマ

日本でも2輪レースのオールドファンであれば、鈴鹿サーキットのデグナーカーブの由来になった旧東ドイツの2輪レーサー「エルンスト・デグナー」の名をご記憶の方もおられるのではないでしょうか?デグナーはMZ製2ストローク125cc・250ccのマシンで活躍しますが1961年ベルリンの壁ができると西側に亡命します。その後、MZのマシンでの出場は不可能となりますが、その後日本のスズキと契約し50ccクラスでタイトルを獲得します。

2ストロークといえば、排気管の途中でパイプを膨張させ、出口付近で再び収縮させる独特の構造の排気系統の「チャンバー」が有名ですが、これはMZの技術者「ウォルター・カーデン」が発案したシステムで、デグナーが亡命時に西側にこの技術をもたらしたことで、西側においても「チャンバー」による2ストロークエンジンのパワーアップを促したという歴史的経緯があるそうです。この通りある時期までは、西側も東側も自動車の技術競争ではいい勝負だった時代があったのです。


▲MZ ES 250-1 その源流はDKW(アウトウニオン)で実はアウディと生き別れの兄弟という事になります

日本でも知名度の高い旧共産圏のクルマというと、以前スバル360とVWは何故似ているかで触れたトラバントP601でしょう。

実はトラバントもまたアウトウニオンを源流とする、西側のアウディの生き別れ兄弟のような存在です。実はレイアウト自体は2ストロークエンジンで横置きFFを使用するという、多くの小型車がまだ等速ジョイントの技術的な問題からリアエンジンレイアウトを採用していた1960年代初頭では先進的なレイアウトで、600cc23馬力とまずますの性能でしたが、共産主義国の物資不足からボディは鋼板ではなく綿繊維を樹脂で固めたFRPで、綿繊維の調達も難しくなった末期モデルは、よく知られた紙パルプを繊維に混ぜたFRPと次第に品質が落ちていきます。

「市場での競合が無い」という計画経済では、市場原理による品質や性能の向上、それに伴うモデルチェンジを要さないため、1970年代に入ると各自動車メーカー同士の開発競争が激化していた西側に取り残されるかのように、既にトラバントは性能的にもデザイン的にも旧態依然としたものになり、所謂「紙のボディ」は物資に乏しい共産圏の象徴となります。そればかりか、市場の需要よりも計画経済の都合を優先する生産システムでは需要に合わせて増産体制を取ることもせず、オーダーから納車まで10年以上かかるというのが恒常化していたそうです。


▲とはいえ「パランパランパランパパパパパパーン」という2ストサウンドは筆者のような国産360cc軽自動車好きには国を超えて訴えかけてくる魅力があります

しかし1989年の「ベルリンの壁崩壊」により長らく壁で隔てられていた東ベルリンから西側に大量になだれ込んだトラバントは、一夜にして「共産主義の象徴」から「東西ドイツ統一の象徴」となります。

アフトワズ・ラーダって何かに似てない?

東欧製の自動車が旧態化していくなか比較的近代的な設計で好評だったといわれているのがロシア(旧ソ連)のアフトワズ・ラーダです。

でも中にはラーダを見て目ざとく「他のメーカーで同じようなセダンを見た事がある」という方もおられるのではないでしょうか。

実はラーダはイタリアのフィアット124のライセンス生産車です。

ちなみにフィアット124は他にもインド、スペイン、トルコ、韓国、エジプトでもライセンス生産された、今でいうグローバルカーのようなクルマといってもいいかもしれません。もっとも発売当初の1970年頃は先進的だったとはいってもそこは共産圏の常で、1980年代に入る頃には旧態依然とした存在になってしてしまいます。

ところでこのラーダ、今となっては日本人にとってもハコスカや510型ブルーバードといった往年の国産4ドアセダンを彷彿とさせる外見なのですが、この世界的に日本製クラシックカーの人気が高まる中、やはりそこに目ざとく気付いたロシア人もいるようで……

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この記事の筆者:鈴木 修一郎

愛知県名古屋市在住。幼少期より自動車が好きで、物心着く前から関心の対象はニューモデルよりもクラシ...