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テクノロジー

更新2017.05.26

Uberが停止した「ライドシェア」はトラブルの元?それとも社会構造を変革する救世主か

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海老原 昭

今年3月、米Uber社が福岡市で2月に開始したライドシェア(相乗り)サービス「みんなのUber」が、国土交通省の指導により中止された。北米をはじめとして海外では人気を集めているライドシェアサービスだが、日本では何が問題とされ、どんな課題があるのだろうか?

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(Uber公式サイトより)

相乗りでコストを削減する「ライドシェア」


ライドシェアとは、会員どうしが自分のクルマを都合しあって乗り合い移動する仕組みのサービスだ。自動車そのものを共有する「カーシェア」をさらに押し進め、同じ目的地を目指す他人どうしが乗り合っていこうというわけだ。ライドシェアにより個人が自動車を持つ必要が少なくなるため、自動車が減り、資源消費は最適化され、交通全体がスムーズになる。

Uberが停止した「ライドシェア」は、社会構造を変革する救世主か、違法な白タク行為か?
▲ライドシェアサービスとして「Lyft」。Lyftに登録し、相乗りを提供するクルマはピンクのヒゲを付けている(Lyft公式サイトより)

自動車を提供する人は自分がどこからどこまで行くのかを提示して同乗者を募り、相乗りする側はサービスが規定する料金を支払って移動する。このとき料金の支払いが発生するため、いわゆる白タク行為にあたるという懸念があるが、社会通念上、高速道路の交通費やガソリン代、駐車場代は根拠のある額を提示できるため、それを頭割した額と大きく乖離していなければ問題ない、という解釈だ(海外では「寄付金」という扱いにしているサービスもある)。

海外ではタクシーの数が足りていないにも関わらずタクシー運転手の認可待ちが10年以上もあったり、もともとカープール(乗り合い)が推奨されているなど、タクシーに代わるサービスに対する需要も、ライドシェアを受け入れる素地もあった。そこにスマートフォンで乗り合いする側、される側を柔軟にマッチングする手段が提供され、一気にサービスとして開花した、というわけだ。

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Uberは何が問題だったのか


Uberはもともとハイヤーの配車サービスとしてスタートし、やがてタクシーの配車、そしてライドシェアにも参入してきた。日本では産学連携機構九州と共同で、2月より福岡市で「みんなのUber」としてライドシェアサービスの試験提供を開始した。このサービスでは、スマートフォンのアプリで希望の場所を指定すると、近くを走っている参加者がタクシーのように送迎してくれるというもので、利用料金は無料。クルマを提供するドライバーには、データ収集に協力した報酬として、Uberから報酬が支払われるという仕組みだった。

この「みんなのUber」に対しては、当初より国土交通省が道路運送法に抵触すると難色を示しており、3月にはUberが「実証実験のフェーズ1は終了した」としてサービスを終了した。

Uberが停止した「ライドシェア」は、社会構造を変革する救世主か、違法な白タク行為か?
▲Uberが公開した「みんなのUber」実験終了のお知らせ。あくまで当初計画通りの終了であることを強調している。(Uber公式サイトより)

国土交通省の見解によれば、利用者からであるにせよ、事業者からであるにせよ、報酬が支払われる場合は有償運送に分類される。また、その報酬も実費にとどまるのではなく、週に数万円に上ることもあるなど、無償実験の範囲を超えるものだった(実際、Uberは当初「稼げる」という表現でドライバーを募集していた)。さらに保険の確認や、トラブルがあった場合に海外の裁判所を使うしかないという契約内容など、国土交通省としては利用者の安全を保証できないと判断。Uberに納得のいく説明を求めたが応じられず、実験の中止を要請していた。

Uber側は実験がフェーズ2になるまでコメントしないとしているが、客観的に見てUber側の準備に不備があったことは否めない。日本の役所の閉鎖的な体質を批判する声もあるが、ユーザーの安全性や利便性という観点から、国土交通省の指導は妥当だったと考えていいだろう。

ライドシェアの未来は明るいか?


ライドシェアという仕組み自体は、環境問題や少子化、交通の最適化といった諸問題を考慮すると、合理的であり、一考の価値があるサービスだ。Uber以外にもライドシェアを提供しているサービスはいくつかあり、それらは法的な問題をクリアしてサービスを続けている。決してライドシェアという形態自体が問題になっているわけではない。もちろん、競合する既存のタクシー業界などからは反発もあるだろうが、タクシーが十分な数存在せず、バスなどの公共交通機関も不十分な地域では、ライドシェアが重要な足になることも予想される。

クルマ好きとしての観点では、ライドシェアに使用する車種はタクシーと違って制限がないため、(現実にあるかはさておき)場合によってはポルシェやフェラーリ、ロールスロイスに同乗することも可能なわけで、あえてそういった高級車・希少車を売りにするドライバーが現れることも考えられる。ライドシェアはクルマ好きにとっても面白い試みであるのは間違いない。

一方で、都市部ではそもそもタクシー会社が過剰なほどに整備されており、各社の配車システムも海外と比べるとはるかにしっかりしているため、ライドシェアのようなシステムに依存する必要性が少ない。また、万が一の事故などがあった場合の保険契約や、泥酔者を乗せて車内が汚された、強盗などの被害にあった等のトラブルがあった場合、前述したように海外資本のサービスの場合は海外の裁判所で争うことになりかねないなど、制度面での不安が残る。

また、ライドシェアがドライバーにとって営利目的なのか、あくまで社会インフラを補完するためのコストを共有するサービスのための実費負担なのか、という問題も残っている。前者であればタクシーやハイヤーといった既存事業とのバランスをとるための新しい枠組みが必要になるし、後者であればライドシェアサービス自体の運営会社は収益性が下がるため、事業全体としての旨みがなくなってしまう。

新たなサービスが登場したとき、旧態化した制度とサービスが摩擦を起こすのは珍しい話ではない。ただ、確実に変わりつつある技術・ニーズの双方を無視して、既存事業ばかりを保護していくこともできないだろう。ライドシェアに関しては行政、事業者、保険、競合事業者、利用者と、非常に多くの関係者が存在しているが、それぞれにおいて、バランスのとれた議論が必要になるだろう。

[ライター/海老原昭]

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