The Beetle(ザ・ビートル)試乗レポート!キャラや格好だけのクルマではない

最終更新日: 公開日:2016-03-26 | Posted in 試乗レポート by

「マセラティばっかじゃなくてワーゲンも乗ってよ!」

最近はネット上での交流がメイン、しかしそんな中でも時々会うと、フォルクスワーゲン広報の池畑さんから、よくこんなお誘いをいただいていました。新車のインプレッションを担当させていただくようなメディアやコンテンツを担当しているわけではありませんが、それでも、何か遠出する機会を見つけては新車にも乗せていただくことにしていて、その時の発見は貴重なものです。そんな中でこんなお誘いをいただくのはとても光栄なこと。フォルクスワーゲン、確かにスポットで少しずつの試乗はイベントや、ディーラーでも時々させていただいてきたものの、あまり自分のペースで、自分の予定に合わせて乗ってみる機会はありませんでした。

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急遽遠出の予定が入り、急だから難しいかも、と思いつつ、一応ご連絡だけと思いメールしたところ、おろしたての広報車を貸してくださいました。それがこの「The Beetle」です。モデルとしては決して最新の話題のモデルというわけではないけれど、むしろそういうクルマこそ、少し長めに一緒にいると、思いがけず見えてくることもあったりするものです。このクルマでツインリンク茂木の往復など、すこし向き合ってみることにしました。

単なるキャッチーなキャラ勝負なだけのクルマではない。

昔の名車のリバイバルのようなスタイルのクルマ、最近ではフォード・マスタング、フィアット500など比較的珍しい存在ではなくなってきました。フォルクスワーゲンのNew Beetleはその走りだったと言えるでしょう。オリジナルはRRレイアウトながら、ゴルフなど最近のフォルクスワーゲンの主力モデルをベースにした、ごくごく普通のレイアウトを持った乗用車。しかし、元々のビートルは、もはやそのアピアランスだけで「可愛らしい」という評価を獲得できるだけの知名度と、存在感が確立していました。それまでのワーゲンとは異なるユーザー層が多数あのクルマに乗っていました。一輪挿しまで備わる凝りよう。

今回借りたThe Beetleは、その後継モデルと言って良いでしょう。しかし乗り込むと、ボディ同色のパネルが内装にも使われていたり、目にも楽しいデザインは採用されているものの、より自動車として地に足のついた、というか、その形状・形態以上に普通のクルマの感覚に近い第一印象を、乗るとすぐに感じました。シンプルな装備、簡素にして簡潔な操作系スイッチの配置などはベーシックカーのそれに通じるものです。

しかし、少しだけゴルフやポロではない価値があって、それをうまくデザインに織り込んでクルマを形成しているなと感じました。走り出すとまっとうなFFの乗用車。このクルマですと、ゴルフで言えば現行型の一つ前「ゴルフ6」と呼ばれる先代モデルに共通する部分が多いのでしょうか。先代でさえ、懐の深さを感じる。そんなちょっと前のゴルフの片鱗を感じるクルマです。強烈に新鮮な衝撃はないけれど、ビートルの格好へのオマージュ。そんな「カタチから入るフォルクスワーゲン」でありながら、キャラだけ、格好だけ。そういうクルマではないことは、走り出してすぐにわかりました。形から入っても「その先のクルマ」と向き合えるそんなクルマではないでしょうか。

ビートルのオリジナルがRRだったように・・・

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原理主義・原典至上主義の方はオリジナルはRRで、ビートルとはRR(リアエンジン・リアドライブ)でなければならない、そんな風に言うかもしれません。しかし、このクルマ、当時の必然でRRを採用したように、FFになったのは、やはり「今時の必然」だったのではないか。そんな風に思ったのです。シルエットこそ初代のビートル的なフォルムになっていますが、大きさも、重さもパワーも、そしてそのクルマに求められる動力性能も安全基準も当時とは全く違います。ノウハウを使えるという意味でも、最適なレイアウトとしてはやっぱりFFなんだな。と運転していて感じたものです。

パワフルな1.2リットルTSIエンジンは、かなり軽量でコンパクトなパワープラント。そのエンジンをかなりエンジンルームの前方に搭載し、常に適度なフロント荷重がかかっています。これによりステアリングのマナーがぐっと大人びた印象になっているように感じました。通常の速度域ではむしろハンドリングに落ち着きを与え好感触になる。不釣り合いなほど小さなエンジンを積むフランス車、例えばシトロエンのGS/GSAなどもこんな風にエンジンが搭載されていました。ハンドルを切ると、そちらに鼻先が向く。カーブに切り込んでいくとき少なくともこれが良い影響を与えているのではないか、いつもそう思うのですが、そんなクルマのように「まっとうなFF車」としての歓迎すべき工夫はこのクルマでも採用されていたのです。

派生車種ではなく、このクルマを中心にクルマを考える。

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フォルクスワーゲンのラインナップの中では、やはりこのクルマ、どちらかというと今や看板車種というよりは、一部の、このクルマを見て足を止めてくれる人のためのクルマになっています。そうなると、自動車趣味人のためのクルマではありません。今は他にもクラスを代表するようないいクルマをたくさん作っているフォルクスワーゲンですが、世界的に「クルマ離れ」が深刻だという昨今、印象に残る存在感、それだけで、実は立派な存在価値なのかも。そんな風に感じたものです。

民衆のクルマ、フォルクスワーゲン。ゴルフの出来などを見ていると「クラスで最高水準のクルマ」であるべき、が至上命題になっているようにも感じますが、実は、そうではなく「オーナーになる参入障壁の低いまっとうなクルマ」という点で、このクルマにもまだ主力機種としてのアイデンティティを感じたのです。しかも乗ってみて失望しないこと。このクルマに限らず、フォルクスワーゲンではよく感じるそんな印象。これは実は「圧倒的に楽しい、期待を裏切らない走り」以上に大事なことだと思うのです。

愛車のある暮らしの楽しみ、つい遠出してしまう感じを体感してほしい。

よく聞く話で「クルマって何を選べばいいのかわからない」と言われます。機能、性能、デザイン、使い勝手、まちまちで確かにそうなのかもしれません。しかし、このThe Beetleはデザインが気に入った、だけで立派な選択理由になりうるクルマでしょう。絶対的には安価なクルマではありません。しかし、真面目に勉強してしっかりと職に就き、ある時クルマがあってもいいのかも、といった人が貯金を使うか、クレジットを利用するかはわかりませんが、このクルマなら手が出ないことはない、そんな人も少なくないかもしれません。その人が手に入れて大きな失望を感じず、クルマのある暮らしの楽しさを体感できるのに十分なクルマとしての条件を持っているのではないでしょうか。

休みの前の日、夜な夜なドライブに出かけたら月が綺麗でした。なんだか見つけて入ったラーメン屋さんが美味しかった。深夜ラジオで懐かしい大好きなあの声が聞こえた。クルマがある暮らしとはそんなことの積み重ねなのではないでしょうか。そう考えると、極めてこだわりのチューニングが施されていることも、コンマ幾つというスペックの争いは不要でしょう。

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この記事の筆者:中込 健太郎

大手自動車買取販売会社で、クルマの売買業務を経て、本社マーケティングチームに異動。WEB広告を担当し...