プジョー508SWに試乗。なぜ、ドライビングプレジャーなんかをわざわざ標榜するの?

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クルマが楽しいというのは時に考えものです。日限の切られた締め切りや、WEB時代の宿命で、ソースが発生したら遅滞なく書け!という締め切り無き締め切りに追われているのに、それでもなお星がきらめく夜空を仰いでみんなの道路を独り占めにしていつまでも走りたくなるのですから。

そして、クルマが楽しいと、それで行きたい場所とか言えば「指宿」などと安易に口走る。それは一番遠くのようですが、それはない世の是非ではなく「ただ遠くまでひたすらに走りたいだけだろう」と。クルマの楽しさはどうも人間の発想を陳腐にさせるらしい。実に由々しき問題であります。

ドライブインシアターなどという、ずいぶん前時代的な催しがあるというので、実はちゃんと動くラジオのついているクルマを至急用意せねばならなかった、というのが今回の試乗のきっかけであることは内緒ですよ。しかし、せっかく乗るのであれば、前から気になっているクルマ、乗ったことのないクルマに乗る。乗りたくなるではありませんか。「あと、プジョー508もございますが。」電話口の広報氏からその言葉を聞いたとき、正直「ヨッシャ!」と思ったのでした。なぜならガソリンの308GTIの印象が望外よかったことと、このディーゼルの508、乗った人すべてが「いいよ!ぜひ乗った方がいい!」というクルマだったからです。

プジョーの圧倒的な個性というか、存在意義というか、正直ピンと来なかったのだが…

日本では小さなクルマが主流だと言われますが、フランス車は大きなクラス。異国の香り、すなわちこの場合は日本ではなくフランスらしさとでも言いましょうか。それが一番丁寧に表現されてきたのが、大きなフランス車たちだと思うからです。そして、多くのフランス車ファンの方には申し訳ないけれど、デザインは好きだがクルマの良さとしては、さっぱり刺さることがないのがプジョーでした。日本の良くないところですが「猫アシ」。用語が先行しますよね。

しかし特に筆者が物心ついたころのプジョー、シトロエンと同じエンジンを搭載しているわけです。そうなると俄然、大いにしっくりと刺さるシトロエンに対し、プジョーの圧倒的な個性というか、存在意義というか、わたしはあまりピンと来なかったのです。同じエンジンでシトロエンがあるのにどうしてプジョーを買わねばならないのか!そこまで思ったほど、昔のプジョーは乗っても刺さらないクルマでした。

それが今ではどうでしょう?デザインは正直パッとしません。そしてそんなに猫アシでもありません。でもこんなにしっくりくるクルマも少ないと思うほど、自然で、軽やかで、固まり感がある乗り味は実に好感触。実に自然です。そしてことさらに演出は感じません。でも、その辺でドライバーズカーを標榜するクルマよりもよほど小気味いいし、いつまでも乗っていたいと思わせるクルマに仕上がっていました。


▲筆者の実家の320d。昨年末納車された最新型は、目覚ましく改善がなされ、口々に評された「やかましさ」もかなり改善。クルマの挙動もおろしたての状態で慣らし運転を終えたころの滑らかさしなやかさを身に身に付けていると感じた。こうなれば、エクストラを支払ってディーゼルを購入しない手はない。趣味性だけではなく日々のたのもしく経済的なアシにはおススメしたいモデルに進化ししていると思う。しかし、508SWはも見逃せない。並ぶとさらにだいぶ大きいが、フランス車らしい高めのアイポイントにシートを合わせたためか、この大きさの煩わしさはほとんど感じない。そしてほぼ何もつける必要のないこの状態で素の320dよりも安い。試乗し、見積もりを取られることをお勧めする。

まるで「いすゞフローリアン」と思わせるアイドリング時のエンジン音なのに?


▲フランス車らしいと言えばフランス車らしいエンジン。エンジン単体で艶やかさやエモーションを求めておらず、クルマ全体として大らかに、豊かに乗るものを包み込む感じ、そしてストレスなくどこまでも走りたくなるエンジンだ。

あまり過ぎるのもいかがなものかとは思うが、フランス車の「ぜんぜん気にしない」というあの感じは何だろうか。少しは気にしてほしいと思ってしまうくらい、エンジンがよそ行き仕様でなさすぎるのです。黒子に徹しているとは実に旨い表現でして、用は一切に「おめかし」がないということです。幼稚園児だって、髪の毛を梳かして「ひさしぶりのおいちゃん」に見られてもおかしくないようにするものです。フランス車はそういうめかしこみがない。そりゃ、男のランニングみたいなものを着ても、紙がぼさぼさでもソフィーマルソーなら見られるでしょうよ。それはソフィーマルソーだからでありましてですね…。

フランス車に乗ることはこういう日本人からすると突飛でならないようなことに振り回される。そんなのが楽しくて乗っているようなところもあるのでしょうから、まあ、いいのですがね。それにしても言いたいのはやかましい。20年前のトラック用のディーゼルエンジンでも、もしかしたらと思う音圧と音質。正直「へ?マジで?」と思ってしまった。お待たせいたしました「ガラガラ音」のディーゼルエンジンの登場ですよ!まさにそんな雰囲気なのであります。


▲フィガロジャポンのドライブインシアターにお邪魔するからフランスのプジョー、というのは偶然だった。しかし、人生を楽しむモータリング。暮らしを豊かにするライフスタイル。このクルマはぴったりだと感じる。ベレルっぽさ、この全長の割にホイールベースが短い大型車である点、にこやかなテールライト。そのテールライトの形状とライセンスプレートの取り付け位置の関係がそう思わせたのかなと自己分析。ベレルはかつていすゞが乗用車を作っていた時のフラッグシップモデル。それこそ真っ先にディーゼルも選べる先駆的なメッセージ性も持ったいすゞらしさのある意欲作だった。


▲原稿を明け方まで書いて気づいたら白々と。週末の明け方。ニュータウンを3つほど抜けて帰る我が家へのドライブ、正直最近乗ったクルマのなかで屈指の味わい深いものとなった。ボディの剛性感、サスペンションのセッティング。ステアリングの素直さ。すべてにおいてバランスの良さを体で感じることのできる一台だった。

がしかし!!車内にいると全く障らない。多少音がする。しかしガラガラ音の小ささでは、エンジン自体がもっと静かな最近の優秀なディーゼル乗用車たちと比べても静かなのではないか。そう感じるほど静かです。少なくとも障らない。これは改めて感心しました。そして社内にいたら聞こえないから、そのままエンジン自体の音のよそ行き演出を「失念したまま」発売してしまったに違いない!と勝手に決めつけたくなるほど、勝手に納得できてしまうくらい、メカニカルノイズのシャットダウンに成功しているのです。

そして間もなく3度目の驚きが待っていることをこの時の私は知りませんでした。それは、走り出したときのことであります。とにかく軽やか。そしてその音に関しても、ロードノイズの方が大きくてエンジン音が聞こえにくくなるような場面があるほど。それでもフラットな乗り心地の担保とあわせて、妙に居心地のいい空間で、走り始めてすぐに気に入ってしまいました。関東にお住まいの方でないとわかりにくい説明かもしれませんが、気に入るのに恵比寿駅のそばで借りたこのクルマを、天現寺の交差点まで走らせる必要はありませんでした。そのくらいすぐに、多くの人がおそらく気に入ってしまうに違いありません。


▲この窓のようなドアミラーとの間の隙間、ここがもたらしてくれる視界、精神的な隙間、ゆとり。運転していて効果絶大な気がする。

かなり大きいが、サイズを感じさせない妙


▲235 45R18というサイズはまさに今時というべきだろうか。このクルマのパフォーマンスであればこのくらいでもいいのかもしれない。しかし「猫アシ」ぶりはあまり期待しすぎないでほしい。それなりのロードノイズと、タウンスピードでの比較的大きなドシンバタンという入力のおお土産あり。まあ、お土産だからこちらから「いらない」とか「こっちがよかった」ということはできないのだが(笑)。それでも絶対的にはやかましくて耳障りということはなかったし、速度が乗ってきたときのしなやかさ、段差のいなし方、レーンチェンジや右左折時のマナーなどを見ると、依然プジョーがアシにもこだわりというより「誇り」を持っていることを感じる。

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この記事の筆者:中込 健太郎

大手自動車買取販売会社で、クルマの売買業務を経て、本社マーケティングチームに異動。WEB広告を担当し...