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試乗レポート

更新2017.11.03

夜の六本木で見かけるアレではなく、良家出身の(?)99年式メルセデス・ベンツGクラスに試乗する!

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伊達軍曹

新車業界には「広報車」という便利なモノがあるため、必要があれば(そしてメディア関係者であれば)直通電話ないしは専用サイトを通じてそれをお借りし、試乗することができる。しかし中古車業界ではあいにく「試乗車=商品」であるため、ホイホイ試乗するわけにはいかない。

「中古車の試乗記」がほとんど存在していない理由


わたしのような中古車専門ジャーナリストでも「あ、それ乗せてよ」とエラソーかつ気軽に言えるものではないし、お客の立場でも、商品車両に試乗できるのは、基本的には契約の最終局面に近いタイミングだ。一見客がお店に行ったそばから「え~と中古車の購入をなんとなく検討中なんで、とりあえずアレとコレとソレに試乗させてください」とか言っても、「おととい来やがれ」という意味の文言を丁寧に言われるだけだ。

以上の理由から、比較的身近な存在に感じられる「中古車」だが、その本当のコンディションというのは、実は軽度のブラックボックス化している。それを確かめる術があまりないのだ。しかしこのたびカレントライフ編集部の尽力により、不定期ながら「売り物の輸入中古車」に試乗し、その模様をレポートできる機会を得た。まず一発目は99年式のメルセデス・ベンツG500L。このレポートが、Gクラスや、それに近い何かの購入を検討している人のお役に少しでも立つならば幸いだ。

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で、この中古車試乗シリーズにおいて不肖筆者がお伝えしたい項目は大きく分けて2つある。一つは、「中古車として(機械として)今、どうなのか?」ということ。そしてもう一つが「あえて今、その(年式的に古い)モデルに乗る意味は何なのか?」ということだ。中古車というのは一般的に新車よりも安価なわけだが、その中古個体を選ぶべき理由は「安価」っつーことだけなのか? それともほかにもっと積極的な理由もあるのか? そのあたりをぜひとも探っていきたいと考えている。

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これほど上等な中期Gクラスがまだ残っていたとは……


では、最初の「中古車として(機械として)今、どうなのか?」という項目。

Gクラスというクルマ自体のヒストリー解説とかは、カレントライフ読者には不要だろう。NATO軍用車の民生版としてスタートし、現在販売中の超後期W463は、主にAMGのG63が「夜の六本木でしょっちゅう見かけるクルマ」と化しているアレである。

そして今回の試乗車は前述のとおり99年式のG500Lで、走行距離4.4万kmのフルノーマル物件。……年代的には「中期」とすればいいんでしょうか? 初期W463の頃のあまりにも無骨すぎるタイプではなく、かといって01年5月以降のチャラチャラした内装+コンピュータ満載になったアレとも違う、端境期的な年代のGクラスだ。

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試乗前にボディ外周をぐるり一周してみると、とにかく「かなりキレイな1台」であることにすぐ気づく。もちろん顕微鏡で見るようなマインドで各所を見れば、それなりの小キズとかもあるのだろう。しかしフツーに見る限りでは「こんな上等な中期Gクラス、まだ残ってたんだ!」という感じである。

金庫のような堅牢さというか高精度感が、ボディ全体にみなぎっているのがこの世代のメルセデス全般の特徴だ。しかしGクラスはドンガラがデカく、そしてボディの作り自体がセダンとかとは少々違うため、新車時からそれなりの「ユルさ」はある。まぁユルいといっても「W124とか126とかと比べればユルいです」というレベルだが。そしてこの99年式は、そういった意味において「ユルい」が、それ以上にユルくはない。つまり「……初度登録から17年もたってるのに、なんでそんなに堅牢なんだよ! おかしいだろ!」というニュアンスである。ここまで立て付けがしっかりしている中期Gクラスは久々に見た気がする。

やたら充実している整備履歴が「奇跡の1台」を生んだのか?


運転席に座り、キャビン内を観察する。中古車にありがちな異臭はなく、あくまでも「90年代ぐらいのメルセデス特有の匂い」だけがほのかに漂っている状態。レザーやウッド、樹脂パーツなどもかなり良好な状態に保たれており、初代オーナーおよび2代目オーナーの几帳面っぷりが目に浮かぶ。運転席および助手席のレザー表皮のみ少々のスレが気になったが、まぁそのままでも特に問題はなく、どうしても気になるなら専門業者に依頼して補修すればそれでOK。それなりの予算はかかるが、かなりキレイになるはずだ。

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では、エンジンをかけて出発いたします。……………………なんなんでしょうか、この発進後20mぐらいでわかってしまう「あまりにもしっかりしてる感」は! 実走わずか4.4万kmとはいえさすがに99年式、つまり17年落ちだぜ? なのになぜキミは、オレが輸入車専門誌の編集者だった10年以上前のG500Lとまったく同じような、超が付くほどの剛性感を伴って走るんだ? 意味わかんねえよ!!!

出発地点からわずか20mほど行ったところでそう絶叫した筆者だったが、その「意味」は、おそらくはこの個体のやたら充実しまくっている整備履歴にあるのだろう。

資料によれば初代オーナーは、大した距離も走ってないのに1年ごとのペースで律儀にヤナセに入庫させており(※途中1回だけ2年サイクルもあり)、2代目オーナーも、都内の某Gクラス専門店にこれまた1年ごとに入庫させている(※こちらも1回だけ2年サイクルあり)。……たまたまだろうが2代連続で几帳面系オーナーに愛された結果、この99年式G500Lは初度登録から17年がたった今もなお、ちょっと異常なまでの「いい中古車感」を放つに至ったのだ。「クルマはメンテナンスが重要です」というありがちな古典フレーズを、悔しいが、わたくしもつぶやかざるを得ない。

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99年式G500L、十分速いです!


今回の試乗で改めて確認したかったポイントの一つは「スピード」というか、加速の具合だ。Gクラスとはいえ現在のAMG G63とかは鬼のように速く、そして06年ぐらいまでのG320は正直死にたくなるほど遅い。で、AMGじゃないG500Lはどれぐらい速かったっけか、もしくは遅かったっけか……と思っていたのだが、結論としてG500Lは十分速いです。何の文句もありません。

や、もちろんいちばん新しいG63とかG65と比べれば全然遅いわけだが、「そもそもGクラスでそんなにぶっ飛ばしてどうするんだ?」という話である。

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夜の外苑東通りや六本木通りをオラオラと爆走したい人はG500Lでは物足りないのかもしれないが、筆者のような(?)良識ある大人にとっては十分な速さである。これ以上はいりません。そしてストッピングパワーも十分なので、減速時の不安もありません。もちろん、無茶な運転をすればどんなクルマだって物理の法則が働いてひっくり返ったり事故ったりしますので、ぜひ気をつけて運転しようではありませんか。

最新のキラキラ系Gクラスでは出せない「良家の子息感」


さて、以上が前段の「中古車として(機械として)今、どうなのか?」である。結論としては「素晴らしい中古車だった」と。ATを含め、不具合や不具合の予兆らしきものはいっさい確認できなかった。最高であった。

そして後段の「あえて今、その(年式的に古い)モデルに乗る意味は何なのか?」という部分に進みたいわけだが、前段で思いのほか長くなってしまった。筆者としてはまだまだいくらでも書けるが、これ以上長くなると読んでるほうがちょっと辛いかと思うので、グッとコンパクトに後段をまとめたい。

意味はある。というか筆者としてはむしろ最新のキラキラしたメルセデスAMG G63とかよりも、こちらの地味でシックな99年式G500Lのほうを積極的に選びたいぐらいだ。

なぜならば、この99年式は「異色」だからである。

仮に筆者が新車のAMG G63を買って乗ったとしても、それっていわば都心のスタバなどに行けば何十人も目にする「襟の高い上等な白シャツと黒ジャケットを着て細身のパンツを履いてるIT社長」みたいなもので、要するに「ありがち」なのだ。それはそれで悪いことではないのかもしれないが、筆者個人としては魅力を感じない世界である。

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しかしこの99年式G500Lは……何と言えばいのだろうか、少なくとも「やたら襟の高い白シャツ」は着ていない。ちょっと地味で、正直いって流行からは外れているデザインの、でもよく見るとかなり上質な素材のシャツを、それを誇るでもなく、スッと着ている良家の子息。そして淡々と、できるだけ世のため人のためにもなる何らかの経済活動を、静かに行っている。なんとなくだが、そんな擬人化ができる。

で、「ありがち」な何かよりも今やそういった存在のほうが断然希少であり、そして断然カッコいいのではないかと思うのである。

これはもちろん筆者の個人的な趣味嗜好に基づく選択でしかない。だが、もしもあなたも「あぁ、そうかもね」と思っていいただけるのであれば、この99年式メルセデス・ベンツG500Lは“絶対に”現車を一度見てみる価値がある。

冗談もヨイショもいっさい抜きで、わたくしはそう思う。

[ライター/伊達軍曹]

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