幻のエンジンを甦らせるほどクルマが好きで仕方がない、トミタクさんの究極カーライフ

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今回の主人公は、富松拓也(とみまつ・たくや)さん。ニックネームは『トミタクさん』。自動車関連会社で、チーフエンジニアとして活躍しています。

インタビューは日曜の早朝からご自宅にお邪魔して行なうことに。奥さま、二人の幼い娘さんが迎えてくださいました。トミタクさんは筆者が勝手に描いていた気難しい職人イメージとは裏腹に、とてもさわやかで親しみやすく、兄貴的な雰囲気を持っていらっしゃる方でした。

幻のエンジン、TC24-B1はトミタクさんの代名詞


▲1980年に製作された“幻のエンジン”オーエス技研TC24-B1[写真提供:富松拓也さん]

トミタクさんは、クルマ業界では知る人ぞ知る達人。幻のエンジンと呼ばれる『オーエス技研TC24-B1』を甦らせた人物として知られています。いまや代名詞となったTC24-B1は1980年に登場。当時のフェアレディZやローレルなどに搭載されていたL28型をベースにし、独自の技術でツインカム4バルブ(クロスフロー方式)にしたエンジンです。レストア時に存在しなかった部品は、トミタクさん自身がイチから製作したそうです。

TC24-B1の復活をきっかけに、製造元のオーエス技研で再生産(TC24-B1Zとして)もはじまりました。このエンジンの話題になると、人懐っこいトミタクさんの表情が凜とし、言葉が熱を帯びます。

TC24-B1の原型となったTC16-MA1型について


▲TC16-MA1型は1972年(開発は1970)に登場。現代ではあたりまえとなっている『燃焼室形状』を、当時いち早く気づいて取り入れた4気筒ツインカムエンジン。[写真提供:富松拓也さん]

TC24-B1には、原型となったエンジン『オーエス技研TC16-MA1型』が存在します。「このエンジンを語らずしてTC24-B1を語ったことにはならない」とトミタクさん。

「TC16は50年近く前、当時は誰も理解できなかった燃焼スピードを上げるための『燃焼室形状』を採用したエンジンです。この燃焼室形状がTC24にも受け継がれています。現代ではあたりまえとなった『いかにガソリンをキレイに燃やすか』を1970年初頭に、地方の小さな会社が、国内自動車メーカーのどこよりも早く気づいて開発していたコトは本当にスゴイのです。TC16とTC24は、日本の自動車史に入るほどの歴史的なエンジン、工業遺産といってもいいでしょう。これからも守っていきたいです」


▲1970年代のバルブ挟み角が平均40〜60度だったなか、TC16-MA1型は20度と浅いものでした(現代の自動車で約20度が平均)。この燃焼室がTC24-B1に継承されています。写真は現存1基となった実物の燃焼室[写真提供:富松拓也さん]


▲TC16、TC24ともシリンダーヘッドは砂型重力鋳造で作られています。当時は金型加圧鋳造の工場が県内になかったため、かなりの試行錯誤を重ねたそう[写真提供:富松拓也さん]

「TC24-B1 を復活させなかったら、ごく少数の関係者が知るだけで忘れ去られていったでしょう。ですから『必ず復活させないと』という熱意がありました。加えて、当時スタートしたばかりのYouTube や、個人のホームページで広く発信できたのも反響を呼べて良かったと思っています。本家オーエス技研も改良型を再生産していますし、復活できて本当にうれしいですね」

大企業ばかりが高性能なモノを作るとは限りません。それを証明してくれるエンジンTC24-B1は、復活させた個体を含む“元祖”9基のうち4基が現役。その4基ともトミタクさんがメンテナンスを行なっています。

今回はトミタクさんの人柄やカーライフに注目


▲10年以上も探して手に入れた幻のエンジンTC24-B1は、2005年に復活を遂げました[写真提供:富松拓也さん]

これまで、トミタクさんの仕事や手掛けた車輌がメディアで紹介される機会は多かったのですが、カーライフを取り上げた内容は意外と少なかったのです。そこでカレントライフでは、トミタクさんのカーライフを中心に、クルマ好きの原点や秘めた想いを2部構成でお届けいたします。

「好きで仕方がない」が伝わってきます

トミタクさんの自宅敷地には、ガレージが2棟あります。新居を購入した際に併設していた元建築事務所をファクトリー付きのガレージに改造。その後、もう1棟を仲間と一緒に増築。ファクトリーには、数々の工作機械が並びます。(ガレージのくわしいエピソードは後編にて)

仕事を終えて帰宅後、仲間から預かったエンジンやミッションの改造・修理を進めるのが日課です(仕事として請け負ってはいません)。『夜の研究室』と称し、向学のためのクルマ弄りに没頭するのです。

夕食をとって家族との時間を過ごしたあと、22時から夜中の2・3時まで作業。朝7時には起床して出勤します。とにかくアクティブな日々を過ごされていました。

「時間を作らないとできないですからね。1日30時間ぐらいあればいいのにと思っちゃいます。寝たら損をしたような気がして落ち着かないんですよ。寝るのはもっと歳をとってからでいいかな…というか棺桶に入ってからでいいかな、みたいな(笑)」

努力を努力と感じない人を稀に見ます。例えばゴルフが楽しくて、つい猛練習をしてしまうプロゴルファー。仕事でもないのに、四六時中写真を撮っているフォトグラファー。“好きで仕方がない”人びと。トミタクさんもその一人ではないでしょうか。


▲手動送りの旋盤を動かしながら。「使い手の意思を聞いて動いてくれる忠犬みたいな道具。製作はワンオフばかりなので、これで十分です」

修理中のエンジンを拝見


▲休日には自然とクルマ仲間が集まります。取材当日もこちらのお二人が

取材当日のガレージには3基のエンジンがありました。すべてご友人のエンジンで、普段はなかなか見ることがない貴重なものばかり。さっそく見せていただきました。

フェラーリ 308GTB クアトロバルボーレ


▲1982〜1985年にかけて生産されたモデル。クアトロバルボーレとは4バルブ化したエンジンヘッドの意味

名づけて『フェラーリ308クアトロバルブをキャブで回そう計画』。もとはインジェクションだったのですが、調子が悪くなりやすいということで、エンジン内部も圧縮比を上げるなどの改良を加えつつ、キャブレター仕様に変更したエンジンだそうです。

308GTBの2バルブ※のキャブレターが使えるように、インテークマニホールドを自作。加えてフェラーリ純正の弱点だというタイミングベルトは耐久性のある日本製に取り替え、プーリーも自作しています。ディストリビューターはレンジローバーのものが用いられています。

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この記事の筆者:野鶴 美和

ゴルフ雑誌の編集を経て、2014年よりフリーランスに。旅行関連、スポーツ関連のライティングを中心に活...