亡き父と姉に導かれて再びオーナーに。「シトロエン2CV チャールストン」オーナー、小笠原 麻季さん&堀内 聡さんにインタビュー

公開日:Posted in オーナーインタビュー by

「昔、乗っていたクルマ、その後どうしてるかな・・・」

ふと、そんな想いが頭をよぎることはありませんか?これだけインターネットが普及しても、かつて所有していた個体を見つけ出すことは容易ではありません。まして、再び手に入れるとなれば・・・確率でいえば限りなくゼロに近い、仮に実現できたとしたら・・・それはもう奇跡です。

日産スカイライン2000GT 2ドアハードトップ 堀内 聡さん シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲左:堀内 聡さん 右:小笠原 麻季さん

今回のオーナーインタビューは、あえて「2人のオーナーと2台のクルマを1つの記事にすること」こだわりました。もちろん、それには理由があります。そうしなければ、今回の取材が1つの記事として成立しないのです。それくらい、このお2人は不思議な縁によってつながっています。

事実は小説よりも奇なり。

まるで誰かがシナリオを書き、そのストーリーに沿っているかのようなできことが、次々に、現実として起こり、現在に至っています。まさに一期一会。人もクルマも出会いを大切にしておきたい・・・と実感していただけると思います。

── オーナー紹介&どんな仕事をされているのですか?

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲フジテレビ系ドラマ「最後から二番目の恋」のロケ地としてもお馴染みの、江ノ電・極楽寺駅

かつて、ニューヨークに住み、ロシアや中央アジア諸国でオペラ歌手をしていました。現在は、鎌倉で陶磁器のお店とカフェを営んでいます。「スイート・ママ」という名前のお店です。

── 現在の愛車を手に入れるきっかけを教えてください

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲運命の導きで小笠原さんのところに帰ってきた、シトロエン2CV チャールストン

何といっても父の影響が大きいです。父はいわゆる「カーキチ」で、自宅にはさまざまなクルマがありました。若い頃に乗っていた色違いのMG-TDや、モーガンの写真を見せてもらったのも懐かしい思い出です。本屋さんから、発売日になるとカーグラフィックやNAVI、オールドタイマーなどの雑誌が届けられていました。私にとって、故小林章太郎さんは神様のような存在です。

── このシトロエン2CVとの出会いは憶えていますか?

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲シトロエン2CV チャールストン観ていると、道行く人たちが振り返っていきます

はい。あるとき、カーグラフィックの個人売買欄に、1台のシトロエン2CVが売りに出されているのを見つけました。当時、私は中学生でしたが、姉と相談して、親には内緒で「シトロエン2CVが憧れの存在であること」を、4枚の便せんにしたためた手紙を売り主に送ってみたんです。

すると、その手紙を読んだ売り主の方がいたく感動したそうで、私たちの住む鎌倉までシトロエン2CVでやってきてくださったのです。驚いたのは父です。何しろ突然、シトロエン2CVが家にやってきたのですから。そこで売り主の方が、それまでの経緯を父に説明してくださいました。事情を理解した父はその場で購入を決断。シトロエン2CVは我が家の一員となったのです。

── お姉様と相談したということは、もしや・・・?

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲何にも似ていないデザイン。いまだに熱狂的なファンが多いのも納得です

そうです。父にシトロエン2CVを買わせてしまおうと、姉と2人で考えました(笑)。クルマ好きの父のところにシトロエン2CVがやってくれば、興味を抱かないわけがありません。売り主の方は複数のシトロエンを所有するようなマニアで、大切に乗ってくれる方を探していたようなのです。クルマ好きの父なら適任ですし・・・。こうして、私たちの作戦は見事に成功しました。

── 売り主や、このシトロエン2CVにとってもいい嫁ぎ先が見つかりましたね!

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲アクセルペダルは、お父様が小笠原さんのために取り付けたアイテム。これも当時のまま。お父様が取り付けたというシフトノブは大切に保管され、堀内さんが現在のものに交換したそうです

そう思います。シトロエン2CVに魅せられた父は、発売されたばかりのシトロエン エグザンティアも購入。家にあったデイムラー ダブルシックスとともに、好きなクルマたちに囲まれた生活を送っていました。我が家に嫁いで来たシトロエン2CVも、オリジナルのグレーからピンク色に全塗装し、シートの生地も張り替えたり、小笠原家の一員となっていきました。私が運転免許を取得後は、姉と2人でキャーキャーいいながら箱根までドライブしたり、さまざまな思い出が詰まった1台でした。しかし・・・。

── 何があったのですか?

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲ダブルシェブロンのロゴ、グリルもお父様によるモディファイ。アイブローの取付けは堀内さんによるもの

姉は10年ほど前に、また父も病に倒れ、6年ほど前にこの世を去りました。父がクルマのメンテナンスを一手に引き受けてくれていたので、私だけでは維持することが難しくなり・・・シトロエン2CVも泣く泣く手放しました。同時に、父が所有していたクルマや雑誌など、そのほとんどを処分しましたが、唯一残したものが、このシトロエン2CVの純正グリルだったんです。

── そんな悲しいできごとがあったんですね・・・

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲天井にはすだれ。フランス車であるシトロエン2CVにも似合っています

その後も、別れたシトロエン2CVのことが気になって仕方ありませんでした。ピンク色ではリセールバリューも良くないはずですし、スクラップか部品取り車になっているのかも・・・と半ば諦め掛けていました。そんなとき、ふとした出会いが訪れたんです。

── それが堀内さんと出会ったきっかけですか?

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲小笠原さんのシトロエン2CVに対する愛情が伝わってくるステッカー。「エレファントモータース」は、堀内さんと、その仲間たち(全員が日産の直6エンジン車所有!)が所有するガレージの屋号であり、集いの場なんだとか。小笠原さんも堀内さんと一緒にエレファントモータースに遊びに行くのだとか。屋号の由来は、かつての日産純正オイルだった「エレファントオイル」からとったネーミングなんだとか

はい。コーヒーが飲みたくなり、コンビニに行ったときのことです。駐車場に1台のクルマが滑り込んできました。いわゆる「ハコスカ」です。思わず私はオーナーさんに声を掛けていました。

「こんにちは!それ、スカイラインですよね?」

彼(堀内さん)はハコスカから降りて来て、
「こんにちは。うん、そう。ハコスカってやつ。クルマ詳しいね」と返してくれたんです。

私がクルマ好きであること、かつてシトロエン2CVに乗っていたことを話しました。

[堀内さんによる補足]
彼女は「Two・CV」と、英語表記で2CVに乗っていたことを話してきたのですが、私は『あぁ、ドゥ・シェ・ヴォね!』と、フランス語表記で答えたその反応が彼女にとって決め手となったようなのです。この一言で彼女のすべてが変わったそうです。

お互いが鎌倉市内在住、しかも同い年、どこかでニアミスしていてもおかしくないはずなのに、このときが初対面でした。それが彼との出会いです。

そして、いつしか彼とお付き合いするようになり、そして、ある出会いが訪れます。

── それってもしや・・・?

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲小笠原さんが以前所有していた時代の痕跡を残すピンクのペイント

はい。あるとき、彼に「またシトロエン2CVに乗りたい」と話したのです。すると彼が「ネットで相場を調べてみよう」とクルマを探しはじめました。そのうち、1台のシトロエン2CVに目が留まりました。

「これ、程度良さそうだし、観に行ってみない?」

奇しくもその日は、父の七回忌にあたる命日でした。

お互いのスケジュールを合わせて、1週間後に観に行ってみました。そのクルマこそ、家族の一員であったシトロエン2CVそのものだったんです。ボディカラーこそイエロー/チャコールグレーのツートンカラーに塗り替えられていましたが、張り替えたシートや、シフトノブ、アクセルペダル、西武自動車の工具袋と折りたたみ傘、スピーカーの下に敷いていた生地など・・・父の痕跡があちこちに残っていたんです。塗り替えられる前のピンクのペイントも確認できました。

── そんなこと、本当にあるんですね・・・


▲お父様が貼り替えを依頼したシートの生地も当時のまま

私もそう思いました。このクルマの歴代オーナーを記した書類があるとのことで、探してもらおうとしたら・・・、偶然にも束の一番上にあり、すぐに確認できました。これで間違いなく、私の家のシトロエン2CVであると判明したんです。彼とも相談しましたが、「これはもう、買えってことなんじゃないの?」という結論に至り、購入を決めました。気付けば、シトロエン2CV手放してから6年の歳月が流れていました。

── 手放してから6年経って、同じクルマが買えるのは奇跡です!

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲排気量602ccのエンジンを収めるシトロエン2CVのエンジンルーム

今回、シトロエン2CVを買い戻すにあたり、彼の存在が非常に大きかったんです。クルマのメンテナンスは父親任せでしたから、私1人では購入を決断できなかったと思います。しかし、彼は自分のハコスカをメンテナンスしてしまいますし、シトロエン2CVが壊れても対処してくれます。彼が分からないことがあっても、仲間で所有するガレージにいる仲間たち(プロの整備士もいるそうです)が助けてくれます。身近ところに主治医がたくさんいることも購入の後押しになったことは間違いありません。

── 何だか、お父様とお姉様が導いているみたいです

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲こちらは、小笠原さんが以前所有していた時代のシトロエン2CVを、堀内さんがプラモデルで見事に再現したもの。このあと、実車と運命的な再会を果たすことになろうとは・・・

あのときコンビニで彼と出会っていなかったら、シトロエン2CVを見つけてくれなかったら、メンテナンスができなかったら・・・。いろいろな偶然が重なり、こうして思い出のシトロエン2CVに再び乗ることができているのが、いまでも不思議でなりません。

── まさに「事実は小説よりも奇なり」ですね

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲車体をロールさせてコーナーを掛け抜けるシトロエン2CV。それはまるで、ルパン三世カリオストロの城のワンシーンのよう

このシトロエン2CVは、私1人で運転しているときはぜったいに壊れないんです。彼と一緒にいるときに限って壊れます。天国で父が、娘を守るに相応しい相手かどうか試しているのかしら?と思うことが何度もあります(堀内さんも隣で苦笑い)。

── 手に入れて良かった点、苦労している点を教えてください

シトロエン2CV チャールストン 小笠原 麻季さん
▲小笠原さんと堀内さんの地元は鎌倉。自転車で海を目指し、サーフィンを楽しむ人たちも・・・

●良かった点
・「おかえり!!!」もう、このひとことにつきます。地元の人たちも喜んでくれているのが嬉しいですね

●苦労している点
・しいていえば、暑いときの運転と、雨で窓ガラスで曇るときくらいくらいです

あわせて読みたい記事

この記事が気に入ったらCLに「いいね!」しよう

最新情報はFacebookページでチェック

この記事の筆者:江上 透

CL副編集長。輸入車関連のセールスプロモーション、ウェブサイト、紙媒体、ラジオ番組の企画/制作/運営...