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メンテナンス

更新2017.12.27

クラシックカーオーナーの憂鬱?長年連れそった愛車「セリカLB」をボディレストアしてもらってきた

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鈴木 修一郎

CL読者の皆様、不肖筆者、鈴木の記事は今回が今年最後となるわけですが、今年は筆者にとって人生でも大きな節目となった1年でした。

少し話が前後しますが一昨年、長年連れそった愛車「セリカLB」の外装・内装のヤレが酷くなり、意を決し懇意にしている東海自動車にモノコック状態からのボディレストアをお願いします。


▲東海自動車に入庫した当初の筆者のセリカLB

▲アンダーコートは全て剥がします。







▲腐食部分は鋼鈑で切り出し、溶接で継ぎ足していきます
フロアの腐食部分の切り継ぎ等、先日の牡蠣ツーリングの若手メカニック君の鈑金修復の良い教科書になってくれた事でしょう。そのセリカLBがレストアを終え筆者の手元に戻ってきたのが昨年の末でした。ところが納車3日目まずはトヨタ博物館に行こうと思いたち、名二環(名古屋第二環状自動車道)を走行中、突然5速に入らなくなるというトラブルが発生、スーっと汗が退く・・・そんな形用が相応しい心境でした。

年相応のヘタリの範囲であってほしいという願いもむなしくやがて4速、3速とギアが入らなくなりついには辛うじて入った4速でそのまま名二環を走り、名二環を降りてからは、どうにか入った3速だけでトヨタ博物館まで走りましたが、トヨタ博物館に着いたときには、1速にもリバースにも入らない状態でした。

中にはそんな状態で、なんで無理してトヨタ博物館に行ったんだ?と思われるかもしれませんが、とにかく3速に入ってあとはクラッチ操作で自走できるなら、トヨタ博物館の敷地で不動状態になってロードサービスを待つにしても事情を理解して貰えて、あわよくばスタッフから直すために何か助言がもらえたら・・・という判断からでした。

トヨタ博物館の駐車場から思い当たる業者に手当たり次第に電話し、幸い過去に筆者が倉庫にセリカLB2000GTに使われているP51型トランスミッションを見かけた事があるクラシックカー専門店から、「倉庫の中に何のトランスミッションがあるかはもう、社長含め誰も把握していないが、少なくとも10年くらいはこの倉庫のトランスミッションが売れた記憶は無いから、あなたの記憶が正しければまだ倉庫にP51があるはず」という返答をもらい、再び東海自動車に入庫、西社長の見立ててではインプットシャフトの破損で、ニュートラルでアイドリングしていても異音が出る状態でした。

数日後、自分の記憶にあったとおりとあるクラシックカー専門店でP51型ミッションを確保、どうにかミッショントラブルは事なきを得たのですが、筆者の新生セリカLBとのカーライフは先行き不安な波乱の幕開けとなりました。


▲納車直前の筆者のセリカLB、しかし納車直後にミッションブローという事態に

しかし、これで終わりというわけにはいきません。数週間後にはフロントガラスのシールドが不十分であることが判明、本来はガラスの四隅にシール剤を打てばいいらしいのですが10年以上前に購入したウェザーゴムでは硬化していたらしくボディの窓枠とウェザーの密着が不十分だったようで、雨漏りするという症状が発生してしまいました。(本来は雨の日は乗らずに屋内保管するのが正しいクルマなのでしょうが・・・)

実は、ウェザー等のゴム部品というのは、クラシックカーの部品の中でもかなりの曲者で補修部品の保有期限(製造終了後8年)を過ぎるとすぐ入手困難になる部品の一つなのですが、ゴムは性質上長期間の保管に向かず変質や硬化を起こしやすくそれ故に、メーカーも長期保管を嫌う傾向があります。運よく入手困難なゴム部品をネットオークションやスワップミートで出品されている「当時物純正新品」で見つけてもちゃんと使える保証はなく、中にはウェザーゴムが収縮して長さが足りず使用不可能だったケースもあると聞きます。


▲プロがメーカーの整備マニュアルの指示通り取り付け方をしても「想定外」の不具合が出ないという保証ができないのがクラシックカーです

筆者が使ったウェザーゴムも先々のレストアを見据えて製廃になる前に部品共販で購入した物だったのですが、結果として長期保管品となってしまった以上、ゴムの硬化は避けられなかったようです。また長年走行していればボディには常にさまざまな「たわみ」が発生し、無事故の修復歴無しのクルマでも「ボディの歪み」は発生します。個体によっては状態の良いウェザーでも上手くつかない、戸当たりゴムに隙間ができるということもあります。

結局、一度取り付けたガラスを取り外しで窓枠全体にシールを打ち直すハメになってしまいました。(当然追加料金の発生です・・・)何十年も前のクラシックカーをいくら、最新の補修技術やリペア剤と手に入る限りの新品部品を使って直したところで、そう簡単にジャスト・イン・タイムで各部品サプライヤーから届いた出来たばかりの部品を使い、最新鋭の工場からロールアウトした新車のようにはなりません。

友人を乗せたり、荷物を積んだりしたときに、ホーシングとワンオフで作ったマフラーが干渉することが発覚した時はさすがに閉口してしまいました。(これは一応東海自動車のクレーム対応ということになりました)東海自動車が以前現車から採寸して作った冶具を使って製作したセリカLB2000GT用ワンオフマフラーなのですが、どうやら筆者のセリカLBと採寸したセリカLBとで個体差があったようで、修復箇所の不具合の連続にまるで「手作り自動車の不具合の洗い出し」をしているような気分にすらなります。余談ですがこのときの代車が「ニイナナレビン」でした。

また、今回エンジン本体には手を入れてなかったのですが、悪天候時のミスファイアが日に日にひどくなり、点火系は一通り消耗品を替えておいたので思い切ってソレックスを外してみると、インナーベンチュリーはバタフライバルブもガタガタ、インナースリーブに至っては一か所かけて欠損しているという始末。一度、ソレックスはオーバーホールしたのですが、ソレックスは定期的なオーバーホールが必須で、そのオーバーホール時期だったのと、1年間休眠させたキャブレターを叩き起こした事で、トドメを刺す形になってしまったようです。




▲ボディレストアとトランスミッションの次はソレックスをオーバーホールすることに

▲インナースリーブが割れていました、燃調が狂うわけです

もっともインナースリーブの破片が上手い事(?)シリンダーやバルブに噛みこまず、エキゾーストに排出されただけ儲けものだったかもしれません。独特のレスポンスや吸気音で今なお憧れる人も多く、時には神格化の対象にさえなりうるソレックスやウェーバーといったスポーツキャブですが、あの官能的なレスポンスと音を堪能するには相応の代償も覚悟しなければならないという現実を突きつけられました。

夏には窓ガラスが外れてガラスレールを直す羽目になったり、最近もシガーソケットが焼けてしまう等、フルレストアが終わったとはいっても今後も不具合が出ないという保証はありません。本当の事を言いますと実は今も燃料計も動作不良を起こしていてかろうじて動く針のおおよその動きとトリップメーターで給油時期を判断していて、ドアガラスのウェザーも数mmほど隙間があるのですが、そもそも40年以上も使い込まれたピラーレスハードトップボディにリプロの新品のウェザーを使ったところで完全に直るわけがないとのこと、仮にそれでも直すとしたらクオーターパネル全体とドアパネル全体をミリ単位で修正するという鈑金屋さんも採算度外視の作業が必要でしょう。

一説には、日本の自動車メーカーがクラシックカーへの対応が冷たいというのは、日本の自動車メーカーの顧客サービスや品質保証の基準で考えると、とてもではないが何十年も前に製造を終了したクルマでは、長期保管部品や現存車ごとのコンディションの個体差が大きく、更に部品の製造設備の老朽化で部品の品質を保つのが難しくなります。
また樹脂パーツなどは、原材料の環境基準の問題や製造メーカーの廃業などで当時と同じものが手に入らなくなり、代替えの原材料では質感が変わったり成形時の収縮率の違いで寸法が狂う等、メーカーとしてサフターサービスの品質を保証することが難しいといった問題もあるようです。それ故に一部の国産車メーカー旧型車の部品供給の再開やリフレッシュプランの提供を開始したというのはかなりの英断でもあるわけです。

でも、もちろん悪い事ばかりではありません。古いクルマに乗っていれば何処へ行っても注目の的ですし、新車のディーラーに乗りつけると時にはショールームのニューモデルを食ってしまうばかりか、ディーラーのセールスマンが仕事そっちのけで筆者のクルマを見に来るくらいです。

何よりクラシックカーの海外の環境を調べている内に、CL(当時はカレントライフ)というネットメディアを知りライター募集をしているのを知り、自分の愛車のレストアの顛末やその工程で得た情報やデータなどを基に執筆したいという旨を伝えたところ、こうしてまさかの自動車メディアのライターという思わぬ肩書を手にしてしまうことになりました。筆者がクラシックカーオーナーになって得た今年最大の・・・もしかしたら本厄の歳に得た人生最大の収穫だったのかもしれません。

数え上げればキリの無い代償には全く見合わないとはわかっていてもこういう事があるからやっぱりクラシックカーはやめられません。来年もまた膨大な苦労と、そして思いがけない悦びがまっている事でしょう。

では読者の皆様よいお年を。

[ライター・カメラ/鈴木修一郎]

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