クルマを本当に知るには、ネットでスペックを調べただけでは分からない。情報収集の「無駄」について考える

公開日:Posted in ライフスタイル by

だが、ボクらは忙しい。
NSXのスペックを知りたいとき、そのスペックが記載されている「かもしれない(読んでみるまでわからない)」雑誌や書籍を、1ページ目から順に読んでゆくことはできない。
だからネットでさっと検索して欲しい情報”だけ”を仕入れることになるのだが、果たしてそれで良いのだろうか、というのが今日ぼくが投げかけようとしている問題だ。
物語(過程)を飛ばしてたどり着いた結末に意味はあるのか、ということだ。

もちろん商業的には「その意味はある」と考えている。
より短い時間で、より多くの記事を作成することができるからだ。

それでもボクは考える。
このまま効率を重視し、結末だけを求めていていいのだろうか。

ボクはいま、幸いにもライターという仕事をいただいているが、それはおそらくいままで蓄えた「無駄な知識」のおかげだと考えている。

NSXのスペック、そのわずか数行にわたる数字にたどり着くまでに読んだ「数十ページ(もしかすると数百ページか)」が今のボクを支えているのだろう。
そう考えると、「過程」というのは結末よりも重要な意味を持つのかもしれない。
誰もがまっさきに結末を求めるが、その過程はみな「飛ばしてしまいたい」と考えているから。
そして結末に至るまでの過程が、そのときは無駄に思えても、あとでこうやって何らかの役に立つからだ、とボクは考えている。

ボクが記事で伝えようとしているのは「ニュース」ではない。
つまり単なる事実や数字ではない、ということだ。
ニュースは効率よく情報を伝えるために無駄な情報は省かれているが、こういった記事では無駄こそがむしろ重要な情報ではないか、とも考えている。

情報収集の効率化

自動車にも無駄があっていい

「無駄」はクルマにおいても必要だ、とボクは考えている。
無駄のないクルマはシンプルで美しいかもしれないが、そこに物語を感じられない可能性があるからだ。

たとえば、ランボルギーニ・アヴェンタドールやウラカンのエンジンスターターボタンには「フラップ」が備わる。
このフラップは機能上は必要がない。
誤作動防止という意味合いはあるかもしれないが、このクルマのドライバーの性質を考えると、それも必要はないだろう。

情報収集の効率化

それでもランボルギーニはスターターボタンにフラップを装着した。
これは「レヴェントン」からに端を発するミリタリー調デザインを受け継いでいるのだと思われるが、その後ランボルギーニは「ヴェネーノ・ロードスター」の発表を空母の上で行ったり、イタリア空軍をモチーフにした「ウラカン・アヴィオ」をリリースしている。

ランボルギーニのエクストリームなデザインは「ミリタリー」と密接な関係にあるという視覚的表現であるとともに、まるで戦闘機のミサイル発射ボタンのように「フラップを開けてボタンを押す」という行為そのものに価値を見出しているのではないだろうか。

実際のところ、この「フラップを開けてボタンを押し、エンジンをスタートさせる」という行為はおおいに気分を盛り上げてくれる。

そのほかにもジャガーの採用する「心臓の鼓動とおなじペースで点滅するスタートボタンのイルミネーション」、レンジローバーの採用する「エンジンスタートともにせり上がってくるシフトノブ」「メルセデス・ベンツのアンビエントランプ」「マクラーレン720Sのウエルカム・シークエンス」「レクサスのエンジン始動/起動時に流れる音楽」「ロールスロイスの星空ルーフ」、そして今では一般的になった「始動時にいったん端まで振り切れるメーター指針」など、すべて無駄といえば無駄だ。

しかしボクらはそういった「無駄」に心奪われ、心酔する。
なぜなら、すでに自動車自体が無駄になりつつあるこの時代に、あえてその自動車を愛するクルマ人なのだから。

余談にはなるが、どこかへ行こうとするとき、まっすぐ目的地に向かわずにいつもと違う道にランダムに入ってみたりすると、良さげなレストランやカフェを見つけることがある。
寄り道は偶然だが、不思議なことに、そういったお店を見つけるのは必然ではないかと感じることもある。

情報収集の効率化

同様に、特定の情報を求めて書籍をむさぼり読む段階で得た、「本来求めていたものではない知識」もまた必然なのかもしれない。

なにかと効率化が求められ、時間という波に流されそうになる現代ではあるが、こういった世の中だからこそ、無駄を愛する余裕を身につけたい、と考える今日このごろだ。

[ライター・撮影/JUN MASUDA]

あわせて読みたい記事

この記事が気に入ったらCLに「いいね!」しよう

最新情報はFacebookページでチェック

この記事の筆者:JUN MASUDA

新しいモノ、テクノロジー好き。「クルマ好き」に分類されるはずだが、一般にはそれを隠して生きている...