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更新2017.05.02

ガールフレンドとのドライブで使うため、オリジナルカセットテープを作ったあの頃

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ryoshr

アルバイトで貯めたお金で教習所へ通い、免許を取ったのは昭和の時代。シートベルト義務化前夜、ハイマウントストップランプや純正ドアミラーが出始めた頃だった。学生だった筆者は、免許取得でお金を使い果たし、クルマを買う余力も維持する余裕もなかった。結果として家にあったクルマに乗るしかなかった。

お父さんたちの試みの地平線。30年前のカーステレオ事情を振り返ってみた


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当時、家のクルマについていたラジオはAMのみ受信可能で、スピーカーはダッシュボードにメッシュ状の細かい穴が空いている部分があり、そこに埋まっていた。ステレオではなく、当然モノラルだ。AMラジオの中でFEN(現在のAFN)を聴くしかないわけだが、それにしてもショボい音だったし、選曲もイマイチ合わなかった。これではガールフレンドをドライブに誘えないと思った。そこで、北方謙三先生の「試みの地平線」でお馴染みのホットドックプレス誌に載っていたカーステレオ特集を眺め、ガールフレンドとのドライブで使うためのオリジナルカセットテープを作り、その日に備えたものだ。

翌年夏、アルバイトで貯めたお金でカセットテープとAM/FMが聴けるカーステレオを買った(CDデッキはまだ高かったので断念)。このときにスピーカーも購入したのだが、リアシートの後ろの置く箱型のスピーカーには手が出ず(carrozzeriaやkenwoodなどのロゴが点灯するタイプだ)、リアのボードに穴を明けて取り付けるタイプのものになった。

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Youtubeで取付け動画を観ながら作業するなんて、夢のまた夢の時代だった


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今となっては、配線の基本は常時、アクセサリ、イルミネーションの各電源、アース、スピーカー、アンテナを接続すればいいことはわかっているが、当時はそんな知識もなかった。地元の友人と作業を始めてみたのはいいものの、まずは既存のラジオを外すことに苦労する。経験を積んだ現在ならだいたいの勘所がわかるので、順番に外していって、外すべき部品に到達することは何でもないのだが、当時はそんな知識もなく、途方にくれて、いっそのことグローブボックスの中に設置してしまおうかと思ったほどだった。当然ながら、当時はインターネットなんて存在ないので、同型のクルマの部品の取り外し方の動画を検索するなんて夢物語だ。ペダルのあたりに頭を突っ込んでネジをさがしたり、シフト周りのパネルの隙間にマイナスドライバーを差し込んでみたりと、随分遠回りをしてパネルの分解をしたものだった。

ようやくAMラジオを外すネジが判明したところでラジオを外し、配線をニッパーで切ったとき、ちょっと大人になった気がした(違)。しかし、これでは終わらない。まだまだ苦難は続く。当時のラジオは後々交換することを想定していなかったため、汎用的なサイズになっていなかった。新しいステレオを取り付けようとしても、ベストポジションに固定できないのだ。そこで、自動車用品店で汎用のステーを入手し、どうにか固定したこともあった。

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さらに、この時代のカーステレオのカセットテープの取り出しは物理的の押し出す感じだったので、結構な力で「EJECTボタン」を押し出す感じだった。スイッチを押したら、滑らかな動きでスーッと出てくるなんて超高級モデルにしかない機能だった。そのため、カーステレオ本体は車体側にしっかりと固定しないと、使用中にだんだん本体が奥へずれていってしまうという悲劇につながった。そんなこと(悲劇)もあり、位置と固定方法が決まるまで数回修正した記憶がある。

そういえば、ボディアースも分からなかった。ラジオに接続されていたコードは、おそらくアクセサリとイルミネーションとモノラルスピーカーとアンテナだけだったように思う。新しいステレオでは、接続すべきコードの数が全然違っていて途方にくれた。さらに、新しいステレオには時計がついていたので、常時電源も必要だった(結果として、常時電源はハザードスイッチから拝借した)。だから、ハザードランプをつけると、本体の液晶表示もチカチカするということになったが、しばらくそのままだった。なかなか本体に電源が入らず、試行錯誤をしている間、アースの黒い線がボディに触ったときに火花は出たが、本体に電源が入ったことに気づき、ようやくボディアースというものを理解した。

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ようやく本体の取り付けのメドがたったら次はスピーカーだ。リアシートを外し、トレイの板を外して穴を開ける。中学の技術科の工具で買った糸ノコでスピーカーの形状に合わせてカットして、スピーカーを取り付ける。このときに力を入れすぎると、ドライバーがコーン紙に突き刺さることがある、というのは別のスピーカー製作時の悲劇から理解していたので、慎重に取り付ける。ボードを戻し、配線を隠して本体までつなぎ、リアシートを戻す。かくしてラジオからカーステレオへの交換が終わったわけだが、ここまでで丸3日は使った。エーモンの接続端子やカシメ工具の使い方も、この作業で会得したようなものだ。自力でクルマの部品(走りには関係ないのだが)を交換できた経験は、その後の人生に影響を与えたと言っても過言ではないほどの経験だった。だって、30年以上たってもこうして鮮明に覚えているわけだから。

iPhoneひとつあれば、何千曲も持ち歩ける時代になったけれど・・・


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お気に入りのアルバムをテープにダビングしてたくさんクルマに乗せた。特に夏場は車内に置きっぱなしにすると、熱でテープがヘロヘロになって、ひどいときにはカーステレオの中でぐちゃぐちゃになることもある。そこで、クルマを降りるときにはテープも一緒に持ち出す必要があった。真夜中に地元の友人とあちこち走ったり、当時のガールフレンドを乗せてドライブへ行くときにもこのステレオは大活躍した。

地元の友人と一緒のときはRCサクセション、ガールフレンドのとき時は山下達郎さんやユーミンの選曲が多かったように思う。家のクルマが変わるたびにこのステレオは移植され、結果として取付け技術もみるみる向上した。自動車用品店へ行けば、車種別の接続アダプターが売っているのは知っていたが、それを使ったことは一度もない。アンテナの端子の大きさが合わなかったときだけアダプターを使った記憶があるが、あれはニッサン車だったはずだ。

今の若い人達はきっとこんな作業に興味はないだろうし、純正でCDがかかったり手持ちのiPhoneに入っている音楽が聴けたりするわけだから、交換する必然もないだろう。おっさんたちはこうして自分とクルマの距離をつめて来たような気がする。自分で取り付けたステレオ、自分でダビングしたテープ、時には自分で編集したオリジナルテープを大切な人と一緒に聴くということは実は、人間同士の距離だけではなく、オーナーとクルマの距離もだいぶ詰めてくれると思う。エアバッグがついてステアリングの交換ができなくなったり、電動シートをスポーツシートへ交換するようなこともなくなった今、将来余裕ができたら、そういうアナログ車をもう一度いじって老後を過ごしたいと本気で思っている。

[ライター・カメラ/ryoshr 画像提供/江上透]

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