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更新2017.06.13

石原さとみさんの「趣味は試乗!のCM」を観て思うこと

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松村 透

最近、女優の石原さとみさんが、助手席から笑顔で「趣味は試乗!」とコメントしているCMを見掛けます。



石原さとみさんの笑顔にとろけそうになったのはさておき、初見の率直な印象として「(あくまでも筆者の感覚ですが)よくあの企画を通したなあ」と思ったことも事実です。メーカーと広告代理店が、意図的に現場との距離感を取ったのか、それとも・・・?

現場としては「お客様があのCMを真に受けるのは・・・」が本音?


石原さとみさんの「趣味は試乗!のCM」を観て思うこと

筆者の後輩の1人があるディーラーで仕事をしているのですが、彼曰く「あのCMを真に受けるのは正直いって勘弁して欲しいです・・・」とのことでした。

そうなんです。例えば、デパ地下でいつも試食だけして、まったく現物を買わない人がいるとしたら・・・。自然と要注意人物として関係者にマークされてしまいます(とはいえ、よほどのことがない限り、出禁になることはないでしょうけれど・・・)。オイ、江上よ、食品とクルマはさすがに違うだろうといわれそうですが、「いつまで経っても何も買わないで消費者側の都合で利用する」という点では同じだと思うのです。

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仮に「趣味は試乗!」という方が実在するとしたら?


石原さとみさんの「趣味は試乗!のCM」を観て思うこと

仮に「趣味は試乗!」という方が実在するとします。仕事の休みは土日です。多くのディーラーがフェアを開催していて、終日さまざまなお客様が来店します。これに加えてサービス入庫(いわゆる点検整備)の来場者もいます。DMやインターネット経由で告知した週末はてんやわんやですし、またそうでなければディーラーも困ってしまいます。限られた予算のなかで、チラシやDMを作成したり、ネットに広告を打ったり、来場記念品を揃えたり・・・。毎回、馬鹿にならないコストが掛かっています。

そこに、試乗が目的の一見さんである「趣味は試乗!のあなた」が来店したとします。ディーラーとしては、よほど特殊なモデルやブランドでない限り「買う気がないなら試乗はできませんよ」的なオーラは発しませんし、ましてや口にはしないはずです。そして、上顧客でない以上、試乗する際には、ディーラーのスタッフ(新人のセールスが同行するケースが多いようです)が助手席に座ります。予め、試乗コースを何パターンか決めているディーラーが多く、たいていは短めのバージョンが選ばれます。それでもコースは短いなりに練られており、加速感やハンドリングを味えるように考えられているケースが多く、そのクルマの片鱗が感じられるはずです。ショートバージョンの試乗とはいえ、何だかんだでコースを一回りするのに15〜20分くらいは掛かるでしょう。

石原さとみさんの「趣味は試乗!のCM」を観て思うこと

無事に試乗が終わりました。あなたは上機嫌でクルマから降ります。クルマの印象が非常に良かったからです。ショールームの空いている席に案内され、あなたは試乗した感想を若いセールスに向かって熱く語ります。心優しい新人セールスは笑顔で相づちしてくれますし、それに気をよくしたあなたはさらにインプレッションの感想を話しつづけます。そのうち、美しいショールームレディがコーヒーのおかわりを持ってきてくれます。ここまでで、1時間くらいの時間があっという間に過ぎています。

新人セールスとしては、可能性の有無に関係なく1人でも見込み客を増やしたいところです。頃合いを見て、乗ってきたクルマの査定と見積もり、(顧客リストを得るための)簡単なアンケートをあなたにお願いをします。そこであなたはいいます「いや、試乗しに来ただけなんで。カタログだけもらえますか?」。それでも新人セールスはイヤな顔ひとつせずに、棚から封筒に収めたカタログ一式を持ってきて、それをあなたに渡し、見送りの準備をしてくれます。大通りに面したディーラーは交通量が多く、新人セールスがクルマの流れを止めて、あなたが出やすいようにしてくれます。あなたは一礼してディーラーを去ります。ここまでで1時間半。あなたが帰ったあと、新人セールスは先輩セールスやマネージャーなどに「もっと早く切り上げて見込み客になりそうな方を相手しろ!」と怒られているかもしれません。あくまで一例ですが、概ねこんな感じです。

かくゆう筆者も、かつては気になるニューモデルの発売日にはディーラーに駆け込んでいたクチです。試乗できるまで2時間待ちであっても、粘り強くディーラーのテーブルを占拠していました。買う気なんてゼロなのに・・・。恥を忍んで告白しますが、前述の「あなた」とは、かつての筆者そのものなんです。「趣味は試乗!」というほど頻繁ではなかったにせよ、いまにして思えば似たようなものでした。

試乗が先か?商談が先か?


石原さとみさんの「趣味は試乗!のCM」を観て思うこと

いまでも本当に申し訳ないなと思ったことがあります。もう20年くらい前でしょうか。ローバー ミニが生産終了になるということで、筆者としてもかなり本気モードでディーラーへ試乗に行きました。狙うはMT車。ディーラーに到着してMT車を試乗したい旨を伝えると、ショールームに展示してあったミニをわざわざ用意してくれたんです。同行してくれた親友を待たせては申し訳ないと2人で試乗に行かせてくれたのでした。試乗してみて、筆者の心は決まっていました。最後のミニを買おう、と。

試乗後、あとは希望のクルマがあるかどうか、予算的にどうにかなりそうか・・・という商談に入ったとき、こちらの希望を伝えました。「ミニ クーパー ヘリテイジ、色はサーフブルー、MT車」と。セールス氏が調べてくれた結果、アーモンドグリーンなら日本のどこかのディーラーにあるとのことでしたが、筆者が希望するサーフブルーのMT車はもう在庫がないというのです。いま思えば、事前に希望を伝えて、在庫が確認できてから試乗するべきだったと思います。結局、商談は流れました。

こうして筆者は、ローバー ミニの最後の新車を手に入れる機会を逸したのです。いや、それだけではありません。ディーラーのスタッフさんが、展示車だったミニを試乗車として一生懸命に用意してくれたことを何とも感じなかったんですね・・・。そのディーラーはいつしか、他のブランドのものになってしまい、当時のセールスさんとはもう会う機会がありませんでした。

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試乗したクルマをこきおろすのは愚の骨頂だ!


石原さとみさんの「趣味は試乗!のCM」を観て思うこと

以前、仕事である輸入車ディーラーに打ち合わせに行く機会がありました。こちらは仕事で来店しているので、打ち合わせは会議室です。会議室が建物の奥だったため、ショールーム内を歩いて移動していました。時間帯は平日の午後。1人の男性(50代くらい?)の方が、セールスの方に向かって「先ほどまで試乗していた(と思われる)このメーカーのクルマより、いかに自分がいま所有しているクルマが優れているかを熱弁している」会話が聞こえてきてしまったんですね。

セールスの方もプロですから、黙って笑顔で話しを聞いていましたが、内心では「コノヤロー」と思っていたに違いありません。後で伺ったら、事実、何人かは自分のクルマがいかに凄いかを自慢するため「だけに」試乗しに来る方もいるそうです。このときお邪魔した輸入車ディーラーではありませんが、「ウチでは男芸者に徹するくらいの気持ちがないと、セールスとして務まらないと思いますよ」といわれたこともあり、自分には到底ムリだと痛感したことを思い出します。

石原さとみさんの「趣味は試乗!のCM」を観て思うこと

ディーラーからすれば、買うかどうか分からない相手でも、気持ちよく試乗車を提供してくれているわけですし、オトナの対応を心掛けたいものですね。仮に印象が良くなかったとしたら、その印象はせいぜい飲み屋の会話とか、ごく身内のSNSくらいに留めておくのがいいのかもしれません。自分の大事な愛車を友人にクルマを貸して「何これ、ひどくない?」といわれたら、誰だって腹が立ちます。

ちなみに、街の自動車販売店はどうでしょうか?基本的に試乗車はありません。在庫車は売り物であり「商品車」です。相当に本気モードでないと試乗するのはハードルが高いと思われます。突然来店しても、ストックリストのクルマがショールームから離れた場所で埃を被っている・・・なんてこともあるかもしれませんし。

仮に「趣味は試乗!」だとしたら、できればほどほどに・・・。

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