アイキャッチ画像
ライフスタイル

更新2018.10.23

ポルシェ・ケイマンは、「718」に進化して何が変わったのか?

ライター画像

JUN MASUDA

ボクは最近、ポルシェ718ケイマンを買った。

ボクがこれまでに乗ってきたポルシェはボクスターS(986)、911カレラ(997)、ボクスター(981)の3台で、モデルこそ異なれど、水冷となってからはおよそ3世代すべてのスポーツモデルを乗り継いだことになる。そして今回ケイマンを購入したわけだが、ガレージに収めたのは「初」となる。

ポルシェ・ケイマンは、「718」に進化して何が変わったのか?

ケイマンが登場したのは2005年、「987」世代においてだ。その後2013年に981世代となり、2016年に「”718”ケイマン」として名称新たに再デビューしている。※モデル名は718だが、コードネームは981から982へと変更されている

718世代におけるケイマンの特徴は、大きく分けて2つある、と考えている。ひとつは「718」という名称が与えられたこと。そしてもう一つは「ターボ化」されたことだ。

今回は、それらについて考えてみたい。

”718”の持つ意味とは



今回、ポルシェはケイマンとボクスターに対し、「718」という呼称を与えた。それと同時に、ケイマンとボクスターとの間に設けられていたデザインやパフォーマンス的な差異を取り除いている。

それまではパフォーマンス的にケイマンのほうが「上」で、加えてアグレッシブなデザインが与えられていたのだが、718となってからは「718のクーペモデル」がケイマンで、「718のオープンモデル」がボクスターだという扱いに変化した。

なお、名称に用いられる「718」とは、もともとポルシェ550の後継モデルとして1957年に誕生したレーシングカーだ。水平対向4気筒エンジンを車体中央に搭載した(つまりミッドシップだ)クルマで、数々の勝利をポルシェにもたらした。

そしてポルシェは、そのレーシングカーの名称を今回ケイマンとボクスターに与えている。なぜか?ボクは、これには以下の理由があると考えている。

まず、今後ポルシェは「ピュアスポーツカーの中核」をミドシップに移行させるのかもしれない、ということだ。

ポルシェ・ケイマンは、「718」に進化して何が変わったのか?

ポルシェといえば911だろう。そして911はスポーツカーのメートル原器、と言われるほど素晴らしいクルマだ。リアエンジン特有のトラクションを活かした加速は、他のなにものにも代えがたい。

だが、運動性能を考えると、リアエンジンはミドシップには敵わない。

これは重量配分や制約の点から「どうしようもない」事実であり、ここにポルシェはジレンマを抱えている。ポルシェはニュルブルクリンクにおいて7分切りを達成したスーパースポーツの「918スパイダー」を発売しているが、このパフォーマンスはミドエンジンでしかなしえなかったことは明らかだ。

ポルシェは、長年リアエンジンを続けてきたからこそ、リアエンジンの利点も、そうでないところも知り尽くしている。そして、運動性能を考えると「ミドシップしかない」のはわかっているが(そしてミドシップの優位性も理解している)、911からリアエンジンレイアウトを取り除くことはブランドイメージ上「不可能」だ。

ポルシェ・ケイマンは、「718」に進化して何が変わったのか?

よってポルシェは、今後911をリアエンジンのまま「グランドツーリング」方向へと向かわせ、代わりに718を「ピュアスポーツ」へと転じさせるのではないかと考えている。

ちょっと無茶な話だと思うかもしれないが、ポルシェはボクスター、そしてケイマンについて、987世代までそれらを「プロムナードカー」つまり公道を走って楽しむクルマであり、サーキットを走るのは911の役目だとしてきた。※”プロムナード”とは、散歩という意味である

そして、意図的にケイマンのパフォーマンスを「911未満」に抑えるという、涙ぐましい努力もしてきたという事実もある。

だが、981世代からその風向きも変わってきた。
ケイマンSが911カレラよりもサーキットにおいて優れたタイムを出すことを公式に認めたのである。

そこへ来て、「プロムナードカー」とポルシェが定義してきたケイマンとボクスターに対し、ポルシェを代表するレーシングカーのひとつ、「718」の名を与えた。
これを下剋上と言わずしてなんと言おうか。

長い時間がかかったが、ボクスターとケイマンは「プロムナードカー」から「レーシングカーと並んで語られる存在」となったのだ。

こういった「流れ」を見る限り、ポルシェは718シリーズを、シンプルで軽量な「ピュアスポーツ」として認知させようと考えているのだと思えてならない。

そして、今後911を超える運動性能を与えるためのエクスキューズとして、往年のレーシングカー「718」の名称を選んだのだろう。

参考までに、ポルシェは「スポーツモデル」に対しては「911」「718」といった、3桁の数字を与え、5ドアモデルには「パナメーラ」「マカン」「カイエン」といった”名前”を与えるという方針を決定し、両者の間には一線を引くことにしている。

ポルシェ・ケイマンは、「718」に進化して何が変わったのか?

外車王バナー外車王バナー旧車王バナー旧車王バナー

ターボ化の理由とは?



そして718世代にとって、もうひとつの特徴は「ターボエンジン化」だ。

ポルシェのクルマは高い運動性能を誇るが、他のライバルたちがターボエンジンを採用する中、数字的に見劣りしてきたことは否めない。はっきりいうと、価格の割に馬力が低かったのだ。

現在ポルシェは多くの地域で販売され、新興国における顧客の中にはポルシェのヘリテージを理解しないまま、単なるブランド品として購入する顧客もいるだろう。そういった顧客がポルシェのスペックを見たとき、「割高」に感じるであろうことは容易に想像できる。

そこでポルシェは、911ともどもボクスター、ケイマンについても数字的に見劣りしないよう「ターボ化」に踏み切ったのだろう。

ただし、911のように「フラットシックス(水平対向6気筒)をターボ化」したのではない。2気筒削り、「フラット4(水平対向4気筒)」化したうえでターボ化したのだ。

これには様々な理由があると思われる。コストや燃費、エミッションの問題が頭に浮かぶが、ボクが考えるのは「重量」だ。

718世代は、自然吸気エンジンを積む981世代に比べ、50キロほど重量が重い。ターボチャージャーや、それの補機類の影響があると考えているが、これがもし「フラットシックスのままだったら」もっと重くなっているのは間違いない。

そうなると、軽量なレーシングカーであった「718」のイメージとは相反することになるし、そもそもの運動性能もスポイルされる。

加えて、911との差別化という観点からも「フラット4」の採用に踏み切ったのではないかと考えている。

そして、登場以降、ずっと水平対向6気筒エンジンを採用してきたボクスター/ケイマンのエンジンをフラット4へと変更すること、つまり「ダウンサイジング」を納得させるために用いたのが、「水平対向4気筒エンジンを搭載し、成功を収めた」718のネーミングなのではないかとも考えている。

ポルシェ・ケイマンは、「718」に進化して何が変わったのか?

つまり様々な要素が絡み合っての「718化」であると考えているが、ボクはこの変化については肯定的だ。

ちなみにこのターボ化によって、排気量は2982ccから1988ccへとダウンしているものの、エンジン出力は従来の265馬力から300馬力へと向上し、トルクは300Nmから380Nmへと増強された。さらにポルシェによると、燃料消費量は14%も低下しているという。

ポルシェは「燃費向上のないパワーアップは行わない」としているが、そのための手段が今回のターボ化であるとも考えられる。

718ケイマンを実際に運転した印象については、あらためて述べる機会を設けたい。

[ライター・撮影/JUN MASUDA]



外車王SOKENは輸入車買取20年以上の外車王が運営しています

外車王SOKENは輸入車買取20年以上の外車王が運営しています
輸入車に特化して20年以上のノウハウがあり、輸入車の年間査定申込数20,000件以上と実績も豊富で、多くの輸入車オーナーに選ばれています!最短当日、無料で専門スタッフが出張査定にお伺いします。ご契約後の買取額の減額や不当なキャンセル料を請求する二重査定は一切ありません。