アイキャッチ画像
ライフスタイル

更新2018.06.26

10年前の3倍!自動車販売世界ナンバーワン、中国のクルマ事情とは?

ライター画像

JUN MASUDA

現在、中国は自動車販売においてアメリカ合衆国を抜いて世界一である。2017年には2887万台を販売したとされるが、10年前には879万台であったことを考えると、これはトンデモナイ成長だと言えるだろう。

中国ではどのようなクルマが好まれるのか?



そして中国の自動車に関する嗜好はちょっと変わっている。それは「セダンとSUVが好まれる」というもので、ミニバンやワゴンは大変な不人気車種だ。よって、街中を見渡すと、そのほとんどはセダンとSUV、という状況になる。

10年前の3倍!自動車販売世界ナンバーワン、中国のクルマ事情とは?
▲比率としてはSUVのほうが多いようだ

もうひとつ日本と異なるのは「クーペ」もほとんど見ない、ということだ。最近は日本でもクーペ人気は下火だが、中国では下火どころの話ではない。
「まったく」といってもいいほど見ないのだ(ただしポルシェ等の高級スポーツカーやスーパーカーを除いて、だが)。

これにはひとつ、明確な理由がある。単にクーペはセダンやSUVに比べ販売価格が「高い」のだ。

外車王バナー外車王バナー旧車王バナー旧車王バナー

中国ではクルマの輸入に関税がかかる



そして、これは「関税」に由来する。関税とは、主に自国産業を守るため、何らかの物品を輸入しようとする国が、その物品に税金をかけ、自国内に入ってくる輸入品の価格を「上げる」ために使われる。自動車に関して言えば、中国は自国の自動車産業を守るため、輸入するクルマに完全をかけ、その価格を上げることで、中国の自動車メーカーがつくる自動車の競争力を高めているわけだ。

2018年6月の時点で、中国の自動車に対する関税は25%だが、輸入するだけで100万円のクルマのコストが125万円になるということだ。そして輸入するには輸送費用や通関費用、現地の法規に適合させるための手間がかかる。こうやって輸入車は高くなってゆく。

10年前の3倍!自動車販売世界ナンバーワン、中国のクルマ事情とは?
▲警察車両もSUVだ

だから、中国でクルマを売りたい外国の自動車メーカーは中国で生産を行う。そうすれば関税はもちろん、海上輸送などの費用をカットできるからだ。

ただし現地で生産を行うにも様々なハードルがあり、「ラインナップすべてを」中国生産とするのは難しい。まずは「よく売れるモデルから」現地生産化するのが通常の考え方だ。

よってメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、BMWもまずは量販モデルとなるスモール/ミドルクラスのセダン、SUVから現地生産を行う。そして、もともと数があまり出ないであろうクーペは「後回し」だ。

この結果どうなるか?現地生産を行っているセダンやSUVは比較的安く販売されるが、輸入扱いのクーペは関税ほかのコストが乗せられて高価になる。

たとえば日本を例に考えてみよう。アウディの場合、すべてが「輸入」だ。日本で生産しているアウディのクルマは存在しない。

日本国内におけるアウディA4のベース価格は447万円で、そしてアウディTTのベース価格は471万円となっており、そう大きな差がないことがわかる。※参考までに、日本ではクルマの関税はゼロである。

だが、中国では現地生産されるA4(しかもロングホイールベースのA4L)の価格が290,000人民元、対して輸入扱いであるアウディTTの価格は496,800人民元。そこには206,800人民元、現在の為替だと邦貨換算にして約358万円の差があるということになるが、日本だと24万円しかないA4とTTとの価格差が、中国では358万円にも拡大している、ということがわかる。

これはメルセデス・ベンツやBMWのスポーツモデルにも該当する話で、この状況下では「モノも人も乗らないクルマ(クーペ)に、そんなにお金は払えない」となるのは当然かもしれない。

これが中国においてクーペが少ない理由の一つだとボクは考えている。

10年前の3倍!自動車販売世界ナンバーワン、中国のクルマ事情とは?
▲中国で生産されるとさしものBMWも漢字エンブレムだ

中国ではナンバープレートの取得が難しい



ほかに考えられる要素としては、「ナンバープレートの取得が難しい」ということだ。日本だと都道府県によって差はあるものの、1,440円から1,880円の「交付料」を支払えばナンバープレートを取得できる。

だが中国は違う。上で述べたとおり、ここ10年で自動車の登録台数が3倍以上となっている。急激に増加する自動車が引き起こす問題は「渋滞」と「環境汚染」だが、これは深刻だ。だから中国は地域にもよるが、ナンバープレートの取得を「入札制」としている場合があり、現在ではナンバープレートを取得するのに170万円ほどを要する例も珍しくない、と聞いている。

しかも中国の都市部における地価は高く、保管場所や駐車場代を考えると、一家庭あたり「複数台」の自動車を所有するのは難しいのだろう(ナンバープレートも2台分取得すれば340万円だ)。

1台しか所有できないとなると、当然利便性に劣る「クーペ」は購入対象としては外れることになると思われるが、逆に「クーペに乗っている」人はかなり余裕のある人だと言っていい。

外車王バナー外車王バナー旧車王バナー旧車王バナー

エコカーはナンバープレートの取得が容易だ



そして中国が打ち出している政策のひとつが「ローエミッション・ビークルの優遇」だ。輸入車であっても「環境負荷が低い」と中国が認めれば関税はゼロになる(テスラの各モデル、BMW i3は関税ゼロだと聞いている)。そして、その基準を満たせなくとも、輸入車/中国生産者問わずEVやPHEVといったクルマはナンバープレートの取得が容易だ。これらのオーナーはナンバープレート取得に際して、「抽選」「入札」を経なくても良いということになり、「170万円」といった高額なナンバープレート取得費用も払わなくて済む(ガソリン車に対してはナンバープレートを簡単に発給しないが、エコカーには積極的に発給しているわけだ)。

10年前の3倍!自動車販売世界ナンバーワン、中国のクルマ事情とは?
▲EVやPHEVのナンバープレートはグリーンのグラデーションを採用している

そうなると当然の帰結として人々はEVやPHEVを購入することになり、これが現在中国を「EV大国」へと押し上げているひとつのカラクリだ。

ホンダ、トヨタも現地の合弁相手とともにEVやPHEVを生産し、中国国内にて販売するとアナウンスしているが、各メーカーが対中戦略の中核として、日本では発売予定すらないような「EV」を掲げる理由もここにある。

[ライター・撮影/JUN MASUDA]

外車王SOKENは輸入車買取20年以上の外車王が運営しています

外車王SOKENは輸入車買取20年以上の外車王が運営しています
輸入車に特化して20年以上のノウハウがあり、輸入車の年間査定申込数20,000件以上と実績も豊富で、多くの輸入車オーナーに選ばれています!最短当日、無料で専門スタッフが出張査定にお伺いします。ご契約後の買取額の減額や不当なキャンセル料を請求する二重査定は一切ありません。