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ライフスタイル

更新2017.11.01

クルマと自転車の6輪生活で見えた、クルマに負けないエンスージアスティックな世界

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鈴木 修一郎

CL読者の皆様の中には、4輪車の他に2輪車の6輪生活を堪能されている方もいらっしゃるのでないでしょうか?筆者もできることなら自動二輪免許の取得もしたいのですが、セリカの購入時に家族から「原付も含めてモーターサイクルはダメだがスポーツカーなら大目に見よう」という暗黙の了解のようなものがあったので、今なお自動二輪免許取得は口にする間もなく反対され続けています。個人的には陸王RQ750が大好きなのですが…


▲あえて「ハーレー」ではなく「陸王」のほうがいいんです…

思わぬ形で始まった6輪生活


数年前から思わぬ形で筆者も「6輪生活」(正確には4輪・セリカ+4輪・スバル360+2輪の10輪生活かもしれませんが)をすることになりました。何も6輪生活といっても必ずしも自動二輪免許が無ければ出来ないというわけではありません。免許が無くても乗れる2輪車…そう自転車です。自転車といってもママチャリがすべてではありません。コンパクトな折り畳み自転車やミニベロ、果てはクロスバイクやロードバイクといったスポーツタイプまで、さまざまなタイプがあり、最近の節約・エコ志向や健康志向から自転車がちょっとしたブームになっています。

10代の若い人の間でもマンガやアニメの影響でロードバイクに興味をもつ人も多いと聞きます。徳大寺有恒氏の生前の名著「間違いだらけのクルマ選び」の中でも「今は、むしろクルマより自転車のほうが魅力的で個性的」という旨でミニバンやエコカーばかりの国産車市場を嘆いている一文を見た記憶があります。

筆者は一時期、放置自転車回収とリサイクルの関連の仕事をしていたことがあり、ほとんどはママチャリと呼ばれる一般的な自転車ですが、ごくまれにミニベロや折り畳み自転車、時にはマウンテンバイク、クロスバイクやロードバイクといった趣味性の高い自転車のリサイクルが回っている事もありました。実は筆者、クルマだけでなく自転車用の工具も一通りそろえてあり、自転車の調整・整備もできます。



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自転車はその人の趣味が反映される?


自転車というのは不思議なもので、その職場はとくに自転車に興味の無かった人が入っても、数か月もするとクロスバイクやロードバイクのようなスポーツタイプの自転車に興味をもつようになり、中にはママチャリしか乗った事の無かった若い女性が、いつの間にかアルミフレームのロードバイクで通勤をするようになった事もありました。やはり、自転車もその人の趣味が反映されるようで、従業員同士がロードバイクの話をしていた時に「鈴木さん、ロードにするなら何がいい?」と聞かれて何気なく「僕はやっぱり細身のクロモリフレームのロードかなぁ」と言ったところ「意固地な鈴木さんらしいや」と笑われた事があります。

クラシックカー好きとしてはやっぱりカーボンファイバーやジュラルミンよりも、往年の鋼管フレームのスポーツカーやレーシングカーと同じクロモリ鋼の方が自分の好みかなぁくらいに考えていたのですが、実はクロームモリブデン鋼、いわゆるクロモリ鋼はロードバイクののマテリアルとしては古典的で、軽さが全てのロードバイクでは自動車、モーターサイクル同様ドライカーボンやチタンがハイエンドのマテリアルに位置し、ジュラルミン・アルミが一般的で、重量面ではエントリーモデルのアルミにも一歩譲るのですが、薄くて丈夫なクロモリ鋼のフレームは独特のしなりがあり、長距離走行でも疲れが少ない、強靭で衝撃に強く生涯の愛車にもなりうる等、根強い人気があるそうです。

今はカリカリのチューンドマシンに乗っている人にも「いつかはクロモリで落ち着きたい」という存在だそうで、クルマやモーターサイクルでいうところの、インジェクションや電スロがどれだけ進化しても、キャブレターの音とレスポンスの魅力には捨てがたい物がある、みたいなことなのかもしれません。どうやら筆者は自転車でも無意識にクラシックカーの趣味が反映されていたようです。

役得のようなもので、気に入ったリサイクルベースがあれば、格安の給料天引きで自分でリサイクルして買い取る事も可能なのですが、筆者の好みのようなマニアックなリサイクルベースがそうそう入ってくる訳もありません。自動車で言えば中古車屋で働いていていたら格安でハコスカが入荷して自分で整備して格安で買える、そんな虫のいい話がそうそうあるでしょうか…

クロモリフレームのロードバイクとの出会い


ところが諸事情でその事業所を辞める事になったときの1週間ほど前でした。いつも通り回収した放置自転車のリサイクルのベース車が入荷した時の事でした。

「鈴木さんこのビアンキ、クロモリフレームのロードですよ…」

サンバートラックの荷台に山のように積まれた放置自転車の中にあったのです、くすんだクロモリフレームの古いビアンキが…いくらロードでもこんな古いのじゃ売り物になるかどうか分らないし、鈴木さん格安で買わない?と言われたのですが、一方で筆者も筆者でいつもの悪い病気で「古い車両」を見ると素性を探りたくなり、ついてるパーツと打刻を見ると…



MADE IN ITALYの刻印に使用しているコンポーネントはカンパニョーロ。ご存知の通り今多くの工業製品が中国製、当然ながら自転車もブランドは日本や欧州でも、生産国は中国や台湾というのがほとんどで国内生産はハイエンドモデルのみ。もっとも組み立ては国内生産でも使っているパーツが中国製というのも珍しくないのですが、このビアンキはその海外生産に移管する前の個体、使われているブレーキやディレイラー(変速機)もオールイタリアンメイドのヴィンテージ車ではないか?だとすれば、もう自分はそういう星の下に生まれたものと腹を括り、退職金代わりにと自分の最後の仕事にこのビアンキをなおすことにしました。

どうやら筆者の愛車は、良くも悪しくも不動車のヴィンテージをレストアして起こすところから始まる運命にあるようです。きっと夢のオールドメルセデスも不動車を起こすところから始まるものと覚悟を決めています。ちなみに後で、タイヤ交換でロードバイク専門店にホイールを外して持ち込んだら、少なくとも20~30年は前の(!)正真正銘ヴィンテージ車ということが判明しました。

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「ビアンキ」と「カンパニョーロ」


自転車に詳しくないCL読者の方でも「ビアンキ」と「カンパニョーロ」と聞いてピンと来る方もおられるのではないでしょうか?そうです、かつてイタリアに存在した自動車ブランド「アウトビアンキ(AUTOBIANCHI)」その名の通り自転車メーカーのビアンキ社が自動車(AUTO)生産に進出した際に設立された自動車生産部門で、その後分社独立するものの、フィアットに買収され最終的にはブランドそのものが消滅していまいますが、本家の自転車のビアンキ社は現在も健在でしかも現存する自転車ブランドでは世界最古だそうで、ある意味自転車のメルセデスベンツのような物かもしれません。余談ですが、メルセデスベンツ創始者のひとりカーツ・ベンツは元々自転車愛好家で自転車に自身が研究開発している小型内燃機関を付けたら原動機で自走する車両が出来るのでは?という着想からガソリン自動車の発明に至ったそうです。

「カンパニョーロ」もCL読者ならアルファロメオ等のイタリアのホイールメーカーとしてご存知の方も多い事でしょう。実は自転車の世界でもブレーキやディレイラー、スプロケット等の駆動系のコンポーネントパーツのメーカーでも有名です。日本で言えばタイヤメーカーの一方で自転車メーカーでもある「ブリヂストン」のような感じかもしれません。他にもフランスのプジョーも元は自転車メーカーで現在もプジョーブランドの自転車が存在します。実は自動車メーカーと自転車とは多かれ少なかれ何かと縁があるのです。



ところで、このビアンキのこの独特のグリーンがかった水色は、チェレステカラー(Celeste=イタリア語で空色)はビアンキのコーポレートカラーであり、フェラーリでいう所の赤に相当する色のようなものでしょうか。ちなみに「ランサーセレステ」の「Celeste」もラテン語で「青い空」を意味し、チェレステはこれに由来するものと思われます。ちなみに「セリカ」の「Celica」もスペイン語で「天空、天上」を意味するので同じ語源に由来するのかもしれません。(このあたりの語源に詳しい方がいらしたらご一報いただけると幸いです。)このチェレステカラーですが、何故ビアンキ社のコーポレートカラーになったのかは諸説あり

・ビアンキの職人が毎年、ミラノの空のを色を見て決める。(実際にイヤーモデルごとに色味が変わる)
・第一次大戦終結後、イタリア軍の余ったオリーブグリーンの塗料が大量に放出され薄めて使った。

しかし、その中でも一際ドラマチックなエピソードがあり

・1895年、時の王妃マルゲリータ王妃が自転車に乗ることを所望し、従者達が王妃が乗るに相応しい自転車の工房を国中探し回ったところ、イタリア国内で最高の腕をもつ工房としてビアンキが候補にあがり、エドアルド・ビアンキは王妃との謁見を許されます。自転車に乗りたいという王妃のため、ビアンキ工房の持てる技術をすべて投入し、王妃専用に仕立てた自転車を献上し、王妃に自転車の乗り方も懇切丁寧にレクチャーし、王妃はビアンキの自転車をいたく気に入り、ビアンキは王室御用達の工房となります。またマルゲリータ王妃は歴史上はじめて自転車に乗った女性とも言われています。そしてマルゲリータ王妃はビアンキにある進言をします。「こんな素晴らしい自転車を作るビアンキが他の工房と同じネロ(Nero=黒)であってはならない、一目見てビアンキとわかる色であるべき」エドアルド・ビアンキはその帰り道、王妃の言葉にどんな色にすべきか考えていたところ、ふと思い出したのがマルゲリータ王妃のエメラルドグリーンの美しい瞳…工房に戻ったエドアルド・ビアンキはすぐにすべての自転車を王妃の瞳と同じエメラルドグリーンに塗り替えさせ、やがてこれがビアンキのコーポレートカラーとなった。

この3つの説が有力とされているのですが、実際はビアンキ社も公式にはどの説が真実かは不明とのことだそうです。(ただしマルゲリータ王妃に自転車を献上したのは史実だそうです。)

自転車にもまたエンスージアスティックな世界がある?


実は、自転車にもまた自動車やモーターサイクルと同様、エンスージアスティックな世界があるようです。実際、ロードバイク専門店に行くと一方で駐車場にはマニアックなクルマやモーターサイクルが並んでいたなんてことも有ります。





先日、タイヤ交換をお願いに行ったら、ナナマルランクルとカワサキニンジャに乗ってるお客さんが来ていました。他にもサーブ96Sのオーナーの方もいるそうです。



セリカに合わせて自転車のタイヤも「ヴェレデステイン」にしました。名古屋の自転車部品商社が総輸入元なのですが、「ヴェレデステインのタイヤを指名するお客さんはめったにいない」とのことで、ここのロードバイク専門店の方もヴェレデステインが自動車用のタイヤを作っているのを初めて知ったとのことです。

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自転車はクルマに比べると「安く」楽しめる?


自転車が好きな方は軽快な走りと爽快感に自転車の魅力を感じると思うのですが、クルマ好き観点から見ると自分自身がエンジンになることで、自動車以上にセッティングやパーツのグレードの違いを体感できるということが最大の魅力ではないでしょうか。タイヤ一本、ベアリングひとつ、転がり抵抗や、フリクションロスが減れば即、体力的負担が減ることを体感できます。

ただ…ひとつ困った事に、ロードバイクの部品の値段は自転車として考えたら桁違いに高価なのですが、自動車を基準に考えたら非常に安く感じるということでしょうか。例えばロードバイク用のタイヤは一本5000~6000円、ディレイラーと呼ばれる変速機はハイエンドになれば数万円ですが、自動車でアドバンやポテンザが一本5万円以上、クロスミッションを組むのに数十万円かかることを思えば、自動車の1/10以下の予算でモディファイができてしまう。

ドライカーボンのフレームというだけで自転車に20~30万円というと普通なら常軌を逸した話かもしれませんが、自動車でドライカーボンのモノコックのクルマといえばフェラーリクラスになる事を思えば、数十万円のドライカーボンフレームも安い買い物と感じる方もいるのではないでしょうか。(ちなみに前述のサーブ96Sのオーナーの方も、クルマならクロスミッション組んだら100万円くらいかかること考えればロードバイクのディレイラーに3~4万円くらい安い買い物と言っていたそうです)

さらに100万円くらい予算を見たら、自分の体格に合わせたワンオフフレームに自分の好みのコンポーネントパーツを組み合わせたオリジナルマシンを作り上げるというのも見えてきます。自動車でワンオフマシン製作を依頼したら一桁億円では済まないでしょう。それが100~200万円できるとなると…中には金銭感覚が麻痺してしまう人が出てくるのも納得がいきます。なにしろ自分がエンジンになるだけに、弄れば弄るほど、マシンのグレードが上がれば上がるほど違いが体感できるわけですから。その気になれば片道10kmくらいの通勤に使う事も可能だそうです。しかも「燃料代はお腹の脂肪」という人もいます。クルマやモーターサイクルに負けないエンスージアスティックな魅力を持つ自転車の世界、一度覗かれてみてはいかがでしょうか?

[ライター・カメラ/鈴木修一郎]

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