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車悦

更新2023.11.22

コードネームW126「2代目ベンツSクラス」こそクルマの中のクルマ

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中込 健太郎

メルセデスベンツの中心的な乗用車モデルが「Sクラス」と名乗るようになって2代目のクルマが、社内コードネームW126と呼ばれるモデルです。1979年~1991年まで10年以上の長きにわたって生産され、ロングホイールベースはV126、クーペはC126と、独立したコードネームが与えられていました。

それまでの長い歴史も背負いつつ登場したこのクルマは、世界中の富裕層からの信頼も厚く、トータルで90万台弱の生産台数を誇ったメルセデスベンツの大型乗用車です。高価なクルマですが、豪華絢爛というよりは質実剛健、信頼性と高い品質をその旗印に掲げた「最高の道具」として一目置かれる存在となったのです。

( ※編集部追記:当記事は過去にメルマガ配信した記事です)

コードネームW126、クルマの中のクルマ「2代目ベンツSクラス」

そして、この2代目のSクラス、私の好きなメルセデスの一台でもあるのです。一見全く華がないようでありながら、そのプレーンなフォルムは、むしろ圧倒的な存在感を誇り、それでいて気負わず乗れる実用車の域を逸脱せず、むしろ現在のクルマたちと比べると「コンパクト」ですらある大きさ。実際、最近よく見かけるマツダアテンザとも、いくらもサイズは変わりません。(ショートホイールベースのW126)そしてさらに、歳月がなせることか、Sクラス特有の「ある種の見栄」が希薄になり、その剛健な実用車の面だけが突出するように感じられてきているように思うのです。今からたどると、かれこれ四半世紀近く昔のクルマになりますが、今これに乗るのはアリではないだろうか。そんな気がしています。

そもそも1980年代から90年代を駆け抜けたこのW126ですが、今思えば世の中の車の頂点は、この時代にあったのではないか。そんな風に感じるのです。Sクラスに関しても、ベースの300SEは直列6気筒3000ccエンジンでしたし、車重も1580kg。極めてコンパクトにまとまっています。全長約5メートルを切り、4隅がしっかり見渡せるボディは運転支援装置要らず。すべてがコンパクトでありながら、これで足りる、というかかなり早いペースにも追従する。最近は、多くのクルマがダウンサイジングエンジンを搭載し、高性能ながら「コンパクト」という考え方を大事にし始めている。あれを見るとこの頃のクルマに帰っているような感じさえするほどです。

コードネームW126、クルマの中のクルマ「2代目ベンツSクラス」

コードネームW126、クルマの中のクルマ「2代目ベンツSクラス」

でも、W126ほどすっきりとしたフォルムで上質感を表現できているクルマ、今お見かけすることはないですね。一番好きなポイントがこのデザイン。子供たちに「クルマの絵を描いてみましょう」といったら、こんな凸の字型のクルマを描く子供も多いのでは。そんなかたちがこれだけ褪せないクルマも珍しいのではないでしょうか。まさにクルマのカタチをしたクルマ。クルマの中のクルマ。そういうことができるのではないでしょうか。

日本もバブルを経て今に至るわけですが、最盛期とこのクルマのモデルサイクルは符合します。あのころ猫も杓子も乗っていたかのようなSクラス。V126(ロングホイールベース)の560SELなど、どこへ行ってしまったのでしょうか?また全体の印象は非常にシリーズ車種であることを色濃く表現しているものの、よく見てみると、共通部品は皆無。そんなぜいたく極まりないクーペもたまりません。

ピニンファリーナにも負けない流麗さを清潔感のある線でつないだデザイン。最小限のリソースで、これ見よがしなデザインは掃いて捨てるほどありますが、あれこれ散々やりつくした挙句、ひけらかさない。どこか奥ゆかしい風情すらある。些末なこと、と言ってのけるかのようなクーペ。故宮博物館に収蔵されている、極めて貴重な玉の類を用いて作られた、日常の食材・料理などをリアルにかたどった工芸品がありますが、ああいうものに通じる、真の贅沢を内包しているように感じないではいられません。

かなり程度のいい個体は少なくなってきました。しかし、普段のアシに少し古いクルマを。しっかりお役にたってくれる、今やもてあますこともない2代目のSクラス。たまに出物が出てくると、そのたびに穏やかな気持ちではいられなくなるクルマだったりするのです。

(なかなかスッキリしないお天気が続きますが皆様どうか健やかに、晴れ晴れとしたお気持ちでお過ごしくださいますように。)

[ライター/中込健太郎]

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