機能、道具としての「究極」を具現化させたクルマ。高級SUVのススメ＠車悦

都内を走っているとよく見かけるのがレンジローヴァ―やメルセデスベンツのGクラスなど最高級SUVをよく見かけます。まわりにああいうのが来ると「でかいなあ」と思いますし、「都内でこれ乗るか？」と思ったこともあります。シロガネといっても、年がら年中「白銀の世界」なわけではないでしょうし、アオヤマといっても険しい山というわけじゃないのですから（笑）。しかし、実際もしお金に余裕もあったとするとあれを選択する人の気持ちもわからないではないという面もあるものです。今回はそんな高級SUVがアシグルマに選ばれる理由についてのお話をしたいと思います。



まず高級SUVは究極の道具として生まれた、というのがそもそもお話の発端なのです。高級車というと、高貴なお方も乗るクルマだったり、その道の権威、選ばれた人が乗ることを想定し、手間のかかる作り込み、豪華な内装という印象ですが、どんなクルマよりも「険しい道を進む性能」「過酷な環境を生き抜く包容力」のようなことに重点が置かれているというのが特徴です。メルセデスベンツGクラスなどはもともとゲレンデヴァ―ゲンと呼ばれ、NATO軍からの要請で生産されたという経緯もありますが、クルマを選ばないと生きて帰ってこれない可能性もある、という場所に行くための性能を満たしているクルマなのです。それだけ万能であり、どんな悪条件でも走ることができ、あくまでも立ち往生しない乗用車であるということなのです。そういう意味で、車種そのものにクルマとして「陸の王者」を示すオーラを持っているということも富裕層のこころを動かしているのかもしれません。

そのうえで実際に乗ってみてどうかということですが、結論から申し上げると、青山通りを走るのに一番楽なのはこのクルマだと思うほど運転が楽ということです。都内の大通りは、飛脚や猫の絵のついた集配のトラックやタクシーが頻繁に停車しているものです。そんなところを走るのにこういった見切りの良いボディで、運転席から見晴らしのいいクルマは、たとえ小柄な女性であっても車線変更、追い越し、あるいはすり抜けなどがきわめてしやすいのです。大きいと言いますが、今のレンジローヴァ―、ポルシェカイエンなどは絶対的にも大きいですが、もとがゲレンデヴァ―ゲンのGクラスは、ボディ自体そんなに大きくありません。昔は排気量によって5ナンバー車が存在したほどです。張り出したフェンダーで幅が大きくなっているだけなのです。また1900mmあるからだめで、これが1700mmだったらいいのに、という環境は実はそんなにないでしょ。カタログの数値に圧倒される前に、都内を試乗する機会でもあればたちどころに実感できると思います。こういうクルマに乗る人は比較対象にはしないでしょうが、クルマとしてみると、もっとコンパクトなクルマでも四隅の見えないクルマは実に多いもの、それが見えることのアドヴァンテージ。この一点をもってしても、大都市で高級SUVに乗りたくなる理由、理解できてしまうかもしれません。



あとは、窓の大きさも関係するかもしれません。友人やビジネスでお客様をお乗せする事情がある方ですと、今時のセダンでも穴蔵のように小さい窓のクルマも多いものです。過酷な条件を要求される足回りであるため、アスファルトでの乗り心地も考慮されている、とはいえ、乗り心地でしたらもっといいクルマはたくさんあるかもしれません。しかし、そんな何時間も、ということでなければ、それよりも空間として心地いい方が大事だと判断できる場合もあるのではないでしょうか。そんな場合を考えると、なるほど高級SUVがどうして選ばれるのか、納得できるというものです。

なにも、「高級SUV。これしかない！」と申し上げるつもりもありません。重量も重いですし、燃費もそれなり。タイヤなど交換を要するパーツもいちいち重厚で高価なものだったりします。しかし、他のクルマでは得られない良さや、所有した時の満足感、何より、機能、道具としての「究極」を具現化させたクルマだということを考えると、クルマ好きなら、複数ある一台、また様々なクルマを乗り継いできた中での車歴の一台に、このクラスの高級SUVを加えてみる価値は大いにあるように思えてならならないのです。高級SUVには「クルマと共に暮らしているのだ」という充実したカーライフをアピールするような一面があると思うのです。皆さんも一度、乗られてみてはいかがですか？

［ライター/中込健太郎］