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ドイツ現地レポ

更新2023.11.22

旧東ドイツの「ヴァルトブルグ」は、日本人からはもっとも遠い存在のクルマ

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中込 健太郎

べつにマルクス主義者でもありませんが、東側への憧れ。なんなのでしょうか。我ながら、時々不思議な気持ちになります。文化や芸術、工業製品から人々の暮らしの様式に至るまで。私が育ってきて暮らしているこの世の中とはだいぶ勝手が違いますから、別世界のように感じているのかもしれません。デザインや色彩も素朴で、どこか懐かしいようなものが少なくない。訪れなかった未来ではなく、振り返りようもないあの頃とでも申しましょうか。そんな世界がどこか愛おしいものです。

東ドイツ時代のクルマが現役で走っている




でも、決して昔から取り残されていたわけではありません。むしろ、かつては進歩的だったこともあるほど。そうした時代のギャップのようなものがまた面白いのかもしれません。

ドイツからの便りの中に、そんな東側の時代のクルマがありました。とはいえ、なかなか見かけるのことの少ないクルマ。実は私もこの辺になるとどうも疎くて、少し調べてみることに。このクルマは東ドイツの「ヴァルトブルグ」。チューリンゲン州アイゼナハにあるヴァルトブルグ城に由来するのだそうです。

ドイツの自動車の流れを汲み生産していた工場で、自社ブランドのクルマを製造するようになった・・・という起こりのようです。古くはDKWのエンジンを載せたクルマを製造。この写真の353、あるいは1988年に最後のマイナーチェンジを受けた最終モデル「1.3」に至るまで、基本的にはそのメカニズムに大きな進歩がないまま生産され続けました。最後のモデルにあたる「1.3」では、それまでトラバント同様に2ストロークエンジンを用い、東ドイツの大気汚染の発生に少なからずの貢献度を発揮してきたことから、飛躍的に進化を遂げ(汗)、フォルクスワーゲンの4ストロークエンジンを採用するに至った模様です。

ボディのデザインは、何とも無機質ななもの。こうしてみると、東欧的なものの存在とは「進化しない」、「無機質」そんなところにあるのかもしれません。共産主義は分業制で目の前に流れている仕事をこなす・・・。仕事をこなしさえすればいいのでしょう。そうなると、さらにいいものを!という概念は生まれようがありません。自動車全体がそんな状況で生産されていたとしたら、趣味そのものがなかったかもしれません。多くは趣向を凝らし、他にない独自の個性を込めたクルマ同志の競争で進化してきたのが自動車。その中に、少しだけこんな境遇で作られたクルマがあると、逆に自動車趣味を帯びてくるから不思議ですね。

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日本では目にすることができないかもしれない




他のメーカーであれば(西側のクルマと言ってもいいでしょう)、古いクルマはシンプルで、長年の実績を評価して継続生産したというモノがほとんどです。ある意味、新しい技術以上の価値、意義があるものが多いですね。だからこそファンは敬意を払い、そのシンプルなメカニズムをブラッシュアップして継続生産することへの安心感、信頼のようなものがあります。しかし東側の場合、そういうものも別にあるわけではなさそう。

ただ、あらゆるクルマが肥大化した現代から見ると、軽量でシンプルなのは、やはりこうしたクルマたちでも注目を浴びるポイントのようです。今でもヨーロッパには、少なからず走っているクルマがあり、こうした素朴で旧弊なクルマは趣味車のベースになっているのだとか。

果たして、どんな乗り味なのでしょうか?おそらくこうしたクルマ、個人で輸入しても日本で登録できない可能性もあります。特にこの写真の最後の頃のモデルではガス検査が求められます。そのためのコストを払うに値すると評価する人がどの程度いるか?また、ガス検査を通すのにどの程度の改造を要するか、考えると国内で乗るのは現実的ではない。ある意味、私たちからすると、もっとも遠い存在のクルマ、そういえるかもしれませんね。

遠いからこそ憧れ、愛おしく思う。こんなクルマを眺めていると、人間とは因果だし、だから面白いなあと思うのです。

[ライター/中込健太郎 画像/ドイツ駐在員]

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