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ドイツ現地レポ

更新2018.03.29

日本未導入のスペイン産小型車「セアト・アローザ」!VWやスマートとの浅からぬ因縁とは?

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守屋 健

日本では桜が見頃を迎えていると聞きましたが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。筆者の住むベルリンでは、本格的な春はもう少し先かな…といった寒さが続いているものの、ドイツでは早くも2018年3月25日からサマータイムが始まりました。2018年10月27日まで、日本との時差は7時間となります。

サマータイムになった途端、人々が堰切ったように外出し始めるのがおもしろいところで、かなり寒い中でも日向ぼっこして楽しんでいます。そんな陽気な雰囲気の中、ドイツよりももっと暖かい国からやってきたクルマを見付けました。スペイン生まれの小型車、セアト・アローザです。

スペインのブランド「セアト」とは




セアトの正式名称はSEAT S.A.で、Sociedad Española de Automóviles de Turismo(スペイン乗用自動車会社)の頭文字を取ったもの。スペインのカタルーニャ地方に本拠地を置いていて、現在フォルクスワーゲン・グループの傘下に入っています。日本への正規輸入や販売は、2018年現在まで行われていません。

そんな日本では馴染みの薄いセアトのクルマですが、モータースポーツに詳しい方ならその社名を何度も耳にしたことがあるのではないでしょうか。1990年代後半には世界ラリー選手権(WRC)にワークスチームとしてイビサやコルドバで参戦。2000年に撤退した後はツーリングカー選手権に活躍の場を移し、2018年現在も今年から始まった新シリーズ・FIAワールドツーリングカーカップ(WTCR)にマシンを供給しています。



筆者自身、セアトにはそんなモータースポーツのイメージが強かったのですが、実際にドイツで生活してみると、セアトが元々得意としていた安価な小型車が数多く走っていることに気付きました。今回ご紹介するアローザもそんなクルマのひとつ。オーソドックスでシンプルなスタイリングの3ドアハッチバックですが、はて、どこかで見たことがあるような…?そう、アローザは日本にも輸入されていたフォルクスワーゲン・ルポの兄弟車なのです。ルポは当時のポロと同様の愛嬌ある丸目ヘッドライトでしたが、アローザの横長ヘッドライトもプレーンな魅力があってなかなかよいですね。

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アローザとVWルポ、そして初代スマート・クーぺ




セアト・アローザが発売されたのは1997年。同グループのフォルクスワーゲン・ルポよりも2年も早く販売され、市場の反応を確かめるパイロットモデルとしての役割を担っていました。1997年には革新的な2人乗りマイクロカー、初代スマート・クーペがデビューしていますが、実はスマートとフォルクスワーゲンには浅からぬ因縁があったのです。

2人乗りマイクロカーを生産・販売することを企画したスイスの時計会社・スウォッチは、当初パートナーとしてフォルクスワーゲンとの提携を進め、ポロをベースとしたマイクロカーの開発していましたが決裂。結局スウォッチはダイムラー・クライスラーとスマート社を立ち上げ、初代スマート・クーペの販売にこぎつけます。フォルクスワーゲン社内に残されたマイクロカーのアイディアは5シーターに変更され、セアト・アローザ、そしてフォルクスワーゲン・ルポとして結実。セアト・アローザは初代スマート・クーペと同じく、1997年に発売を開始します。「超小型ながら安全な、ヨーロッパのシティコミューター」として、世にその存在をアピールしていくことになるのです。

アローザが切り開いた超小型シティコミューターの未来




セアト・アローザは1997年から2004年まで、途中1回のフェイスリフトを挟み7年に渡って生産が続けられました。しかしフォルクスワーゲン・ルポと同様に、割高な価格が販売に響き、大成功を収めたとは言い難いモデルとなってしまいます。アローザの最終的な生産台数は18万台弱に留まりました。ガッチリとした高いボディ剛性が生み出すナチュラルなハンドリングや高速安定性、通常の小型車とは水準の異なる衝突安全性など利点は多かったのですが、ヨーロッパは小型車の激戦区。もう少し安い価格で販売できれば、一世を風靡するモデルになっていたかもしれません。

生産終了からもうすぐ15年が経とうとしているセアト・アローザ。数は年々少なくなってきているものの、フォルクスワーゲン・ルポ同様、まだまだ現役です。5シーターのアローザやルポ、2シーターのスマートが打ち立てた超小型シティコミューターのコンセプトも、環境問題が取り沙汰される昨今、より一層注目されていくことでしょう。

[ライター・カメラ/守屋健]

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