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ドイツ現地レポ

更新2017.04.13

Hナンバーは技術者たちへの尊敬の念。ドイツのクルマづくりにも根付いている「マイスター制度」とは?

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NAO

ドイツ語の「マイスター」という言葉を耳にしたことも多いのではないでしょうか?特定の分野に長けたプロフェッショナル(親方)として、日本でも使われている単語だと思います。ドイツの「マイスター(Meister)」とは、あらゆる分野における国家資格のことであり、公的または法的に認められた資格で、最高位の職業学歴となります。


▲日本で「ドイツのマイスター資格」というと、ソーセージ製造などの肉屋が有名かもしれない

マイスター制度のしくみ


ドイツには、現在約130の職業にマイスター制度が設けられており、大きく分類すると以下のジャンルとなります。

・手工業マイスター(Handwerksmeister)
・工業マイスター(Industriemeister)
・専門マイスター(Fachmeister)
・農業マイスター(Landwirtschaftsmeister)
・家事マイスター(Hauswirtschaftsmeister)

最も職種が多いのが「手工業マイスター(Handwerksmeister)」です。以前まで、手工業で自営する人は必ずマイスター資格を取得しなければならなかったのですが、2004年の手工業法改正により、約90種あった職種のほぼ半数でマイスター免状の保有義務が解消されました。

これまでドイツでは、自営業・手工業創造の比率が低く、その原因がマイスター制度による高い市場参入規制によるものとされていました。改正後は規制が緩和され、手工業の分野で個人企業などの形での参入が増加していきました。


▲ドイツでは手工業者の代表格、パン・お菓子・ケーキ屋になるにも国家資格が必要

マイスターになるには、職業訓練校を修了したのち、1年以上の実務経験を積み、試験に合格すること。規定としては「1年以上の実務経験」となっていますが、多くの場合、まずは見習いとして就職しながら職業学校に通い、専門知識や技術を習得。見習いを卒業し、熟練工(職人)になった後も、専門学校にて3〜5年間は技術の研修を積んでからマイスター試験を受けるパターンが多く、取得するまで何年もかかる長く険しい道なのです。

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自動車業界におけるマイスター制度




自動車関連では「自動車・車両組み立て」、「自動車エンジニア」、「金属加工」などの業種は、従来通りマイスター資格が必要です。これらの資格も手工業法改正対象となりましたが、健康管理や危険物取り扱いなど安全維持に不可欠な分野&技術レベルの維持のため、資格を取得することが必須となっています。

すべての業界においてマイスター資格を取れば、就職時の保障待遇や給与も変わってくるものです。マイスターになると、専門知識や技術の高さは、何より人に技術を伝え、育て上げる指導センスも問われてきます。自動車業界では、職業訓練校を修了したのち、研修生として入社すると同時に、企業が専門学校に通う資金(=マイスターまでの昇進)を出してくれるパターンも少なくありません。

最近のドイツは自動車業界のみならず、あらゆる手工業分野で後継者や職人止まりで、マイスター(親方)まで目指す人が減っているのが現実です。国も奨学金を出すなどの対策をしていますが、数は伸び悩んだまま。2004年の規制緩和が裏目に出たか、マイスター制度の崩落とも言われています。

マイスター文化とHナンバーの関係




自動車などの工業マイスターは、自営するより企業に属して従業員として働く場合が多いので、職業訓練校卒で終わらせてしまう場合も多いのです。ほとんどが大型工場でロボットによる組立に代わり、人の手が加えられることも少なくなってきました。最近では若手の技術士を中心に、旧車の取扱いや修理ができないという問題にも見舞われており、ドイツの自動車技術継承に危機が迫っています。しかし自動車業界において、いまだマイスター制度が残っているのは、ドイツの自動車技術レベルを落としたくないという、国としての想いも強くあるのです。

この国の気持ちを背負っているのが、Hナンバー制度なのではないでしょうか。Hナンバーがなぜ「工業遺産」と言われるのかは、マイスター(職人)たちが造り上げた当時最高の技術が詰まったクルマが1つの工業作品として認識されているからです。

ドイツ人の生活に深く根付いている「古いものを大事に使う」という精神。過去があって今がある。昔の人が紡いできた伝統技術が今の技術に繋がっているのに、それを古くなったからと言って、ただの機械として終わらせるのはあまりにももったいないもの。造った人たちへの尊敬の念を込め、HナンバーはHistorisches Auto(ヒストリーカー)として称えられ、国単位で守り続けられています。マイスターたちの精神もきっと、クルマたちと共に寄り添っているのではないでしょうか。

[ライター・写真/NAO]

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