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ドイツ現地レポ

更新2018.01.11

ドイツではなぜいまだにステーションワゴンが人気なのか?アウディ100アヴァントをきっかけに考えてみる

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守屋 健

早いもので1月も第2週に入り、ようやくお正月気分も抜けてきた頃ではないでしょうか。筆者の住むベルリンの年越しは、ひっそりと静かに過ごす日本とは対照的に、音の大きな花火を数多く打ち上げて派手に新年の到来を祝います。ドイツにおいても、年末年始は地元に帰る人や旅行に出かける人々で列車や高速道路が混み合うのですが、今週に入ってからその喧騒も落ち着いてきました。

列車網が発達しているドイツとはいえ、駅がない小さな町はたくさんあります。そうした町の交通手段の主力は、やはりクルマです。制限速度が日本よりもはるかに速いドイツで、根強い人気を誇るのがステーションワゴン。今回は、年末年始で遠出してきたと思われるアウディ100アヴァントをご紹介しつつ、なぜドイツではステーションワゴンの人気が衰えないのかを考えてみたいと思います。

シンプルでクリーンなデザインが魅力!3代目アウディ100アヴァント




写真のアウディ100アヴァントは、「C3」と呼ばれる3代目モデルです。全長4.8m、全幅1.8m強のゆったりとしたサイズに、大きく傾斜したリアハッチゲートが目をひきます。1982年から1992年にかけて生産された3代目アウディ100は、小排気量で高速巡行を実現するために、徹底的に空力をリファイン。空気抵抗をCd値0.30まで引き下げ、高速走行時の静粛性・快適性を高めました。この個体のグレードは、2.3Eと呼ばれる水冷直列5気筒SOHC2309ccエンジン搭載モデルで、最高出力136hp/5500rpm、最大トルク19.4kg・m/4000rpmというスペックとなっています。

ラリー競技でのアウディ・クワトロの成功を受けて、アウディ100にもクワトロシステム(四輪駆動)搭載車が登場しましたが、この個体は通常のFFモデルですね。全体的に黒でドレスアップされた外観とフロントスポイラー、リアから覗く大径マフラーが、どことなく悪役なイメージを感じさせます。かなり走り込んでいるようで、ボディの傷やヤレ感は年式相応といったところでしょうか。

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ステーションワゴンのメリットとは?




ステーションワゴンのメリットを一言で言うと、積載能力と運動性能が高次元でバランスしている、ということになると思います。セダンの快適性、静粛性は捨てがたいけれども、もう少し荷物を積みたい。ミニバンの積載能力の高さは魅力だけど、高速道路での横風に弱いのが気になるし、燃費ももう少し改善してほしい。そうした不満を持つ人々に取って、ステーションワゴンはまさに「いいとこ取り」の車種だったのです。

日本においても1990年代、スバル・レガシィ・ツーリングワゴンの大ヒットをきっかけに、多くのステーションワゴンが登場しました。しかし、ミニバンの台頭により2000年代には早くも人気が下火になってしまいます。トヨタ・クラウン・エステートやニッサン・ステージア、ついにはスバル・レガシィ・ツーリングワゴンまで販売終了し、現在ではトヨタ・カローラ系とスバル・インプレッサ系、マツダ・アテンザワゴン等、数えるほどしか生き残っていません。



一方、ドイツに目を向けると、現在でもたくさんのステーションワゴンがラインナップされています。メルセデス・ベンツではCLAシューティングブレーク、CLSシューティングブレーク、CクラスとEクラスのステーションワゴン。BMWでは3シリーズと5シリーズのツーリングモデル。アウディではA4とA6のアバントモデル。フォルクスワーゲンではゴルフとパサートのヴァリアントモデル。AMGやアルピナ、アウディのRS6のようなプレミアムモデルまで含めると、日本とは比べ物にならない数のステーションワゴンが今でも新車で購入することができるのです。

ドイツと日本の高速道路事情の違い





おそらく、ドイツのユーザーにとって、積載能力よりも走行性能の方が重要なのでしょう。仕事で日常的にアウトバーンを数百km走行するようなドライバーはもちろん、夏のバカンスの時期に荷物を満載にして家族旅行で1日1千km走破することが珍しくないドイツでは、快適性や燃費、アウトバーンでの運転のしやすさを無視することはできません。目的地に疲れ果てて到着、ということになれば、仕事や遊びどころではありませんよね。長距離をいかに楽に速く走れるか、ということは、クルマの重要な性能のひとつです。また、道路が事故や工事で渋滞することはあっても、日本のように何十kmと渋滞が伸びることはありません。



日本は国土が狭いため、そこまで日常的に長距離を走るユーザーは多くないですし、ゴールデンウィークやお盆の時期の高速道路は渋滞だらけで、長距離を快適にスイスイと移動、というわけにはいきません。そうした道路事情から、日本においては走行性能よりもユーティリティ性や積載能力が優先されるようになるのは自然な流れだったのでしょう。結果として、ステーションワゴンが衰退し、ミニバンが台頭するようになったのです。

ドイツのアウトバーンは、日本の高速道路のような防音壁がある区間はなく、横風の影響をかなり受けます。明るい照明はほとんどなく、夜ともなれば真っ暗の中をヘッドライトだけを頼りに走らなければなりません。日本に比べると厳しい高速道路事情の中で、荷物をたくさん載せつつ、少しでも楽に高速巡行できるステーションワゴンは、ドイツをはじめとしたヨーロッパではこれからも重宝され、生き残っていくことでしょう。

[ライター・カメラ/守屋健]

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