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更新2016.10.06

メルセデス・マイバッハ S 600 プルマン日本導入記念!歴代プルマンの歴史と各種装備をミニカーと秘蔵資料で振り返る

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北沢 剛司

メルセデス・マイバッハ・プルマン

ついに日本導入されたメルセデス・マイバッハ謹製リムジン



2015年3月のジュネーブ・モーターショーでデビューしたメルセデス・マイバッハ S 600 プルマン。メルセデス・マイバッハ・ブランドの頂点に位置するモデルとして設定されたこのリムジンは、2016年9月15日から日本でも完全受注生産の形で注文受付を開始。価格は8,800万円と発表されました。

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日本市場にステートリムジンの『プルマン』が正式導入されるのは、実にW100のメルセデス・ベンツ 600 プルマン以来のこと。1963年から1981年にかけてラインアップされた600 プルマンは、長大なロングホイールベースと重厚な佇まいでいまだに別格の威厳を放っているモデル。今回導入されたメルセデス・マイバッハ S 600 プルマンは、まさに往年のプルマンリムジンの再来と呼べるモデルです。

そこで今回はメルセデス・マイバッハ S 600 プルマンの日本導入を記念して、メルセデス・ベンツ・プルマンリムジンの歴史と、そのユニークな装備類をご紹介します。

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そもそも『プルマン』とは何の名前?



メルセデス・ベンツが自ら製造するリムジンモデルには『プルマン』の名が付けられています。そもそも『プルマン』とは、19世紀から20世紀にかけてアメリカのプルマン社が製造した豪華な寝台型鉄道車両に由来するもの。それから間もなく、『プルマン』という名前は、長大なホイールベースと広大なリアの客室スペースを備えたメルセデス・ベンツ車を示すようになります。その特長は、運転席とリアの客室がパーティションで仕切られ、客室部分に対面式の4座シートを備えること。このフォーマットは、最新のメルセデス・マイバッハ S 600 プルマンにも受け継がれています。

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戦前の『プルマン』といえば『グロッサー・メルセデス』



第二次大戦前のメルセデス・ベンツを代表する名車のひとつが、『グロッサー・メルセデス』の愛称で知られるメルセデス・ベンツ 770です。特に1938年から1943年にかけて88台が生産された後期型のW150には、重厚なボディを架装したプルマンリムジーネが設定されていました。

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▲Rio 1/43 Mercedes-Benz 770 PULLMAN-LIMOUSINE 1938(品番 4085)
イタリアのリオは、Made in Italyにこだわる老舗メーカー。昔からW150のメルセデス・ベンツ770 Kをラインアップしていているほか、オープンボディの770 K カブリオレも発売しています。

一説には18台が生産されたといわれるメルセデス・ベンツ 770の『プルマン』は、全長6,000 mm、全幅2,070mm、ホイールベースは3,880 mmという堂々たるボディサイズが特長。エンジンは排気量7.6リッターの直列8気筒で、自然吸気エンジンの770で155ps、コンプレッサー付きの770 Kで230psを発揮。最高速度はコンプレッサー付きで170km/hに達する一方、防弾車両では80km/hにとどまりました。

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唯我独尊の長大なボディが印象的だった600 プルマン



『アデナウアー・メルセデス』の愛称で知られるW186のメルセデス・ベンツ300と、その後継となるW189の300 dは、第二次大戦後、メルセデス・ベンツが大型高級車の製造を復活させるきっかけとなったモデルです。特に300 dにはロングホイールベース化のうえランドレーボディを架装した特別車両がローマ法王専用車などに使用されるなど、世界を代表する超高級車の1台として認識されるようになりました。

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▲Rio 1/43 MERCEDES 300D 1963 - Papa Giovanni XXIII 1963/2013 50° Anniversario(品番 4406-P)
リオは、大統領などの政治家やローマ法王などのフィギュア付き製品を多数製作しているのが特長。ソフトトップを閉じているので分かりにくいのですが、運転手に加えて後席にはローマ法王が着座しています。

1963年には、300 dに代わる新たなフラッグシップとして、W100のメルセデス・ベンツ 600が発表されます。全長5,450 mm、全幅1,950 mmの堂々たるボディサイズとは対照的に全高は1,500 mmに抑えられ、300 dとは対照的に低くワイドな印象を強調したスタイリングが特長でした。強力な6.3リッターV8エンジンとエアサスペンションの組み合わせにより、スポーツカー顔負けの動力性能とトップレベルの快適性を兼ね備えていました。

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▲TSM MODEL 1/43 1963 Mercedes-Benz 600 Pullman State Limousine(品番 TSM124353)
現在、1/43スケールでメルセデス・ベンツ 600 プルマンのバリエーションを積極的に展開しているメーカーがTSM。写真のステートリムジンのほか、ヨルダン国王やエルビス・プレスリーの所有車両なども発売しています。

標準ボディとともに設定された600 プルマンは、ホイールベースを700 mm延長し、全長は6,240 mmに達していました。メルセデス・ベンツ 600 プルマンは完全なショーファードリブンモデルであり、その後席には国家元首や世界のミリオネアなど、ごく限られた人のみ座ることができました。

大柄なボディに自然に溶け込んだW140のプルマン



メルセデス・ベンツ 600は1981年に生産終了となり、メルセデス・ベンツ自製のリムジンはカタログモデルから姿を消しました。量産モデルとして『プルマン』の名が復活したのは、SクラスがW140になった後の1995年9月。S 600のロングモデルからホイールベースを1m延長し、6,213 mmの全長を持つS 600 Pullman Guardが発表されたのです。大柄なW140のボディはリムジンには最適で、ショートボディよりもむしろ自然なスタイリングでした。このモデルはまた、『プルマン』としては初のV12エンジン搭載モデルでもありました。

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▲NEO 1/43 Mercedes-Benz W140 S600L Pullman 1998(品番 NEO45360)

レジン製のマニアックなミニカーを製品化しているネオから発売された1/43のメルセデス・ベンツ S 600 プルマン。コンチネンタル製の特殊なランフラットタイヤにセットされる専用ホイールを履いていることから、S 600 Pullman Guardを製品化したものと思われます。

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▲VITESSE 1/43 Mercedes-Benz S600 L PULLMAN Light Metalic Grey 1999(品番 VMC99025)

今から10数年前にヴィテスが発売したS 600 L プルマン。W140のプルマンはこのヴィテス製品しかなく、長年プレミア価格で取り引きされていました。こちらの製品も専用ホイールと拡大した前後フェンダーを備えているため、S 600 Pullman Guardを製品化したものと判断できます。

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▲Dip Models 1/43 Mercedes-Benz S500 PULLMAN GUARD (W140)(品番 GON140)

DIP Modelsではロシアのエリツィン大統領専用車を製品化。この車両のエンジンは6リッターV12ではなく、5リッターV8を搭載していました。そのため、フロントグリルもS 600専用グリルではなく、通常のフロントグリルになっています。

このように防弾車両のS 600 Pullman Guardとして登場したW140のプルマンは、特別装甲のない通常のリムジンとしても発売されました。

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カタログの表紙にS 500 L / S 600 L PULLMANとあるように、 W140のプルマンには5リッターV8と6リッターV12の2種類のエンジンが設定されていました。外観上の特長は、タイヤ/ホイールが通常のS 500 L / S 600 Lと同じものになり、前後フェンダーもノーマルタイプになること。写真の車両はBピラーとCピラーの間のガラスに追加ピラーが入っていませんが、筆者はこれまでピラー付きの個体しか見たことがありません。

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ヘッドルームを拡大するために高くなったルーフと、対面式4座の客室部分はプルマンの伝統。写真の車両はS 600 L Pullmanのため、C140のCL 600と同じ18インチホイールおよびツートーンレザー内装になっています。また、防弾車両ではないため、リアにスライディングルーフを装備しています。

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スリムダウンにより細長さが強調されたW220プルマン



SクラスがW140からW220に代わったため、プルマンもW220ベースに変更されます。

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▲Dip Models 1/43 Mercedes-Benz S600 PULLMAN GUARD (W220)(品番 GON220)

W220プルマンのミニカーは、現在Dip Modelsのプーチン大統領専用車のみ製品化されています。

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W140プルマンのカタログはリング止めするような特殊な仕様だったのに対して、W220プルマンのカタログは通常モデルと同じ判型に変わり、より一般的なモデルになったことが伺えます。

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この写真は、2002年5月18〜19日に横浜の赤レンガ倉庫で行われたイベント「ダイムラークライスラーエクスペリエンス」で撮影したもの。なんとW220のS 600 プルマンが参考出品されていたのです。ホイールベース4,085 mm、全長6,158 mmという巨大なボディで来場者の注目を浴びていました。

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内装はアンスラサイトのエクスクルーシブナッパレザーにチェストナット・ウッドの組み合わせ。リアの格納式テーブルを展開した状態で展示していました。

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ルーフには、後ろ向き座席用のバニティミラーとリアシート用のスポットランプを装備。さらにグリップハンドルを含めた各部にチェストナット・ウッドが贅沢に奢られていることが分かります。

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パーティションの直前にはパークトロニックインジケーターを装備。これはパーティションおよびパーティションカーテンが閉じられたとき、後席上部のパークトロニックインジケーターの代わりに確認するためのものです。

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結局、W220プルマンは日本に導入されなかったため、幻のモデルとなりました。その代わり、並行輸入でそれなりの台数が日本に持ち込まれたため、歴代プルマンのなかでは日本でもっともタマ数が多いモデルといえるでしょう。

再び巨大化したW221プルマン



2008年に登場したW221のS 600 Pullman Guardは、すっきりとしたデザインのW220プルマンとは対照的に堂々たる佇まいに一変しました。ホイールベースはSクラスのロングモデルより115 mm長い4,315 mmで、全長はW220プルマンより198 mm長い6,356 mmとなりました。リアウィンドウの傾斜角を変更して後席のヘッドルームを拡大。ルーフの高さは60mmも高くなっています。

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▲Dip Models 1/43 Mercedes-Benz S600 PULLMAN GUARD (W221)(品番 GON221)

W221プルマンのミニカーは、ロシアのメドヴェージェフ大統領専用車が製品化されています。ルーフラインの違いなども的確に再現しているため、Sクラスの通常モデルとの比較も楽しめます。

W221プルマンでは後席のセンターコンソールに当時のマイバッハと同じ部品を使用。さらに19インチ高精細リアモニター、従来の電動カーテンに代わって採用された液晶調光・電動ガラスパーティションなど、装備品にはマイバッハとの近似性が感じられました。

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ちょっと変わったプルマンのコードネーム



ところで、メルセデスではコードネームで車種を示すことがよくあります。例えば現行Sクラスの場合、標準ボディがW222、ロングボディがV222となり、メルセデス・マイバッハSクラスの場合はX222となります。

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ではプルマンの場合は何かというと、VVが使われています。例えばW140のプルマンはVV140、W220プルマンはVV220となり、メルセデス・マイバッハS 600 プルマンではVV222となります。エクストラロングホイールベースということで、Vの二乗=VVなのでしょうか。

VV222の8,800万円は高いか?



そして最新のメルセデス・マイバッハS 600 プルマンの価格は8,800万円。メルセデス・マイバッハS 600の価格が2,626万円なので、単純に3台分強の値段になります。Sクラスの延長線として考えると高く思えますが、以前のマイバッハ62(V240)の場合、最終型の左ハンドル車で5,500万円。これにオプションの液晶調光パノラミックフルガラスルーフ、液晶調光・電動ガラスパーティション、19インチ高精細リアモニターを追加しただけで軽く1,000万円オーバー。さらにVV222で標準の装備などを追加していくと結局7,000万円くらいになります。

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また、VV222には例えば電動格納式対面シートなど、マイバッハ62にはない装備も多く含まれます。そう考えていくと、8,800万円は案外妥当な線なのかもしれません。ただ、マイバッハの場合はPLM(パーソナル・リエゾン・マネージャー)という顧客専任のセールスが購入後もコンシェルジュのように担当してくれたので、その分を差し引くとそれなりの値段でしょうか。

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W126が現役の頃には、日本ではさまざまなコーチビルダーが製作したストレッチリムジンが輸入され、覇を競っていました。もし、その頃にプルマンが存在していたら、まさに本家本元。最強の存在となっていたことでしょう。

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いずれにしても私には縁遠い話なので、eBayで落札したVV222のカタログでも見て満足しようと思います。

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