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コラム

更新2018.01.31

積極的な活用を広めたい!楽しみながらも本格的に学べる、愛知県の「交通公園」に行ってきた

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鈴木 修一郎

自転車の道交法の運用が厳格化し、走行帯や一旦停止の違反の取り締まりも厳しくなり早や2年半、筆者の地元名古屋では昨年の10月より自転車損害賠償保険の加入が義務付けとなりました。

正直なところ、かくいう筆者も道交法における自転車および軽車両の厳密な扱いというのがよくわからない現状で、時折ロードバイクに乗ることもあるのですが、本当に車道側を走っていて大丈夫なのか、また、近所に歩道上に自転車専用レーンを設けている区間があるのですが、本当に「自転車専用」として機能しているか信用していいのか不安に思う事すらあります。

「交通法規」を遵守しなければならないのは、何も自動車に限った事ではありません。公道上を通行する以上、自転車はもちろん歩行者もその限りではないはずなのですが、道路交通法を体系的に学ぶ機会というのは、思ったより少ないのではないでしょうか。

筆者の記憶では小学生の頃、視聴覚室に集められて交通安全のビデオを見たことや、地元の警察署のお巡りさんの談話を聞いたことくらいしか記憶がありません。(ちなみにビデオで見た内容は「死角」や「内輪差」などは自分からすればとっくに子供向けの自動車書籍で知っている内容でしたが)子供のころから道路標識に興味を示す未来のクルマオタクの男の子は別として、大半の方が自動車学校に入ってからようやく道交法を体系的に学び、免許取得後もクルマを運転しているとき以外、道交法はまったくと言っていいほど意識していない…そんな感じの方も多いと思います。

全国に点在する子供のうちから交通ルールを学べる施設



子供でも早ければ未就学児でも、補助輪無しの自転車に乗れるようになるケースもありますが、自転車も軽車両であり、道路上では自動車、自動二輪車と同様「車両」準拠で扱われます。後述の職員方からも聞いたのですが「子供によっては交通法規を覚えるより先に自転車に乗れるようになってしまう」という問題もあるようです。そこで、子供に交通法規を教育するための施設は無いだろうかと思ったときに、ふと思い出したのが、今回の記事のテーマとなった「交通公園」という存在でした。

「交通公園」がいつごろから日本にできたのか詳しい時期はわかりませんが、「交通戦争」と呼ばれた、交通事故死亡者数がピークを迎えた1970年前後に都市部を中心に設置され、そのうちの大半が現在も運営されているようです。ちなみに筆者の住んでいる愛知県だけでも、さすが自動車の街だけあって10箇所以上の交通公園が確認されました。ちなみに首都圏には35箇所、関西でも7箇所確認できました。もしかしたらCL読者の皆さまのお近くにもあるかもしれません。

そこで早速、自宅から一番近い「春日井市交通児童遊園」にいってみました。



最近は少子化や子育てサポートの需要から、子育て支援センターとしての機能が強いようですが、定期的に交通安全教室が開催され、園内で貸し出される自転車(持ち込み不可)を親子で借り、実際の道路を模した園内のコースで交通ルールを学ぶ姿を目にしました。


▲園内の信号機は実際に動作します


▲踏切も実際に警報機が鳴ります。踏み切りでは自転車も「一旦停止」厳守です


▲時間帯によってはコース内をゴーカートで走行することも可能です



市営、公営の交通公園は消防車や蒸気機関車の保存車両が置いてある事が多いようで春日井交通児童遊園にも平成4年~平成20年まで春日井消防署で使われていたキャンターの消防車の退役車両が子供たちの遊具(?)として余生を送っていました。



それだけでなく、「デゴイチ」の愛称で知られるD51の静態保存車両もありました。有志により今も大切に手入れされ、来園者が「今にも走り出しそう」と口にするほどのコンディションを保っています。





よく、こういった公園に展示されている鉄道車両には悪戯や部品盗難が問題になるのですが、間近で眺めることが出来るにも関わらずそういったものとは無縁のようで、「もしかしたら走行可能な状態にレストアできるのでは?」という考えが脳裏を過りました。

ほかにも名古屋市内で大高緑地公園にも交通公園があり、同様に道路を模したコースの中で遊びながら交通ルールを学ぶという施設が、愛知県内だけでも10箇所以上あります。その中でも一際充実した施設が愛知県の自動車産業の中枢とでもいうべき豊田市にありました。「豊田市交通安全学習センター」という施設です。

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東洋のモータウン豊田市にはまるで教習所のような学習センターが




「豊田市」とはなっていますが運営を委託されているのは「豊田交通教育株式会社」という豊田市内でトヨタ中央自動車学校という自動車学校の関連企業でした。トヨタ自動車との資本的関係がどの程度あるのか手元の資料ではわかりませんが、自動車産業が市の財政を支えている街だけに「交通安全の教育的指導」というのはこの街の社会的責任なのかもしれません。



ところで皆さん、この写真を見てこの3台どう並んでると思いますか?



一見3台横一列に並んでいるように見えて、スクーター、プロボックス、バスが7mおきに並んでいます。よく目測を誤って右折時に直進してきた2輪車と衝突するという事故の話を聞きますが、子供の目線から見るとなおの事、この距離の差の認識は難しい事でしょう。

豊田市民には忘れえぬ交通事故




その他に筆者の目を引いたボードに「猿投ダンプ事故」がありました。愛知県の年配ドライバーの中にはご存知の方もまだおられるかもしれません。筆者も亡父から「昔、信号停車中に追突されて、ちょうど同時期に同じような事故があって、追突した運転手が警官にこっぴどく叱られていた」という話を聞いた事があるのですが、おそらくこの事故の事なのでしょう。

時は高度経済成長期、建設ラッシュのなか、今でいう過労運転のダンプが通園中の保育園児の列に突っ込むという痛ましい事故がきっかけで、交通違反の厳罰化や大型自動車免許の取得年齢の引き上げなどが講じられますが、生憎今もなお過労や過積載による事故が絶えないのが現状です。豊田市近辺の方には今もなお忘れえぬ事故なのでしょう。

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センター内には「日常の町」を模した練習コース




大抵「交通公園」というと児童が自転車の乗り方や交通マナーを訓練するためのミニチュアサイズの道路なのですが、豊田市交通安全センターの練習用コースは、実際に自動車が走る事ができるサイズで作られています。







コンビニ(休憩スペースになっています)や住宅街、見通しの悪い路地裏等がリアルに再現され、実際に街中で起こる事故の危険予知の訓練までできます。まるで自動車運転教習所のようなコースで、「自動車の安全講習やペーパードライバーの講習はしていないのですか?」と尋ねた所、「一般では自動車の講習は受け付けていないですが、企業が貸切って職務中に違反をしたドライバー向けに自動車を使った講習に使う事はあります」との事でした。

実際に自動車を使った訓練も








もちろん、場内での訓練では実物のトラックや乗用車を使用し、メインストリート(?)で飛び出し実験や大型車の巻き込み実験、死角特性の訓練もするそうです。これらの講習は学校や企業、最近では高齢者といった団体を対象に予約制で受け付けているのですが、一般の個人でも10人以上で申し込めば講習の対象になるとのことなので、ご興味のある団体、読者の方は一度問い合わせてみてください。

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親子で楽しみながら学ぶ交通安全






こちらの交通安全センターの遊園エリアにはミニSLとゴーカート(共に一人50円)がありました。ちなみに、ゴーカートは最近「新車」に入れ替えたとのことですが、この峰のあるフェンダーラインにビス留オーバーフェンダーとNACAダクトにキックルーバーという時代錯誤なデザイン、一時期は「場末の遊園地」の象徴のようでしたが、スポーツカー、セダン問わず旧型車の市場価格が天井知らずという空前のクラシックカーブームの今となっては、むしろエンスーの心をくすぐるレトロデザインとして確立してしまった感があります。

このゴーカートを作っている遊具メーカーには、ぜひこのデザインのままモデルチェンジしないで製造を続けてほしいものです。



どこの交通公園でも、基本自転車は持ち込み禁止で、園内貸し出しの自転車(無料)のみの走行が許されているのですが、「せっかく来たので何か貸し出されている自転車を乗ってみよう。」と思ったら、まさしく筆者のおあつらえ向き(?)の自転車が「のんびり自転車」というエリアにありました。フォードT型を思わせる佇まいクラシックカーに目が無い筆者なら乗らないわけにはいきません。



(注:許可のもと停車中に撮影しています)
自転車でも、なかなか侮れません。ステアリングリンケージがレーシングカートと同じ形式なので思ったより初期反応がクイックで重いです。横幅がスバル360くらいの大きさがあるのと運転席は後部座席のため(何気に「左ハンドル車」です)車両感覚をつかむのに多少慣れを要します。あと車体が重いので、漕ぐのが何気にシンドイ自転車でした。(苦笑)

こちらの自転車は、小学生以上で一定の身長を満たしていれば一人で運転することも可能です。また、このコース内での車両区分は「自動車」として扱われるため、走行帯も信号も優先順位も「自動車準拠」となります。右折は二段階ではなく、青信号で交差点に進入、対向車がいないことを確認して右折します。横断歩道に歩行者がいたら必ず一旦停止しなければいけません。

前述の「成長の早い子なら、交通ルールを覚える前に自転車で道路を走ってしまう」と言っていたのはここの職員で、最近は自転車だけでなく自動車ですらTVゲームで子供でもオートマチック車くらいなら動かし方を覚えてしまうことが出来るご時勢です。子供のうちからこういう施設を積極的に活用し、親子で交通ルールを学ぶというのは思っている以上に重要かもしれません。

小学生でもあと10年もすれば2輪車なり自動車なりの運転免許を取得するのはわかりきっています。のんびり自転車もいずれ自動車を運転する時を見越して、子供のうちから何がよくて、何がいけないのか、何が危険なのかを学び、また自動車からは自転車、歩行者はどう見えるのかを学ぶのにも良いかもしれません。職員の方は「あくまで、ここは遊ぶ場所ではなく交通ルールを学ぶ場所です」と強調していました。





屋内施設の「交通安全学習館」には、本格的な学習機材が常設してあり、ミニカーで危険行為を再現したジオラマや対向車のヘッドライトと自車のヘッドライトの光が重なると、その間の歩行者が視認できなくなる、いわゆる「蒸発現象」もミニカーを使ったジオラマで体験できます。
 




他にも障害者や高齢者などの負担を体験できる設備もありました。もちろんスタッフに言えば無料で体験できます。



この機会に、お父さんお母さんも、改めてご自身の交通安全意識を見直すことも




各種体感シミュレーション機器も充実していました、道路横断歩道シミュレーションはなかなか止まってもらえず苛立ってしまいそうになることも…これからは信号のない横断歩道で歩行者を見かけたら必ず停車を心がけます。(最近では警邏中のパトカーや白バイが、歩行者が待っているのに停止しない車両に遭遇すると検挙するということもあるそうです)



自動車の運転シミュレーターは、自動車学校に納入されているものと同じで、ホンダが開発した物らしく(自転車のシミュレーターもホンダでした)対向車に時折、オデッセイやレジェンド、S2000と思しきCGのクルマが出てくるのはご愛敬。(笑)

こちらの機器は運転免許を持っている人のみでしたが、ご自身の危険予測などを改めて確認するには最適かもしれません。筆者も挑戦しましたが、3Dシミュレーターゆえの違和感に苦労した物の、「あれは絶対突っ込んでくる」という前提での運転で、どうにか無事故でクリアできました。ちなみに「いかがでした」というスタッフの方への第一声は「路上でクルマを運転する時は腹の底では他人を絶対に信じてはいけないに尽きる」でした。



停止位置やウィンカーの出し忘れ等はありましたが、事故はなく「比較的慎重に運転されているようです」という結果が出たのでまずまずでしょう。ちなみに3D酔いする人も少なからずいるそうなのでご注意ください。

今回、実際に足を運んでみた交通公園は「春日井市交通児童遊園」と「豊田市交通安全学習センター」だけですが、これらの施設は自転車を除くゴーカートなどの遊具以外は基本無料で利用できるようです。定期的に交通安全講習も開催しているようですが、正直なところ、いまいち上手く活用されていないように感じる部分があります。自転車の事故が問題視されヘルメットの着用や賠償責任保険の加入が推奨されるなか、子供のうちから交通安全について学ぶための施設があるという周知徹底と、自治体単位での積極的な活用が広まる事を願います。

【取材協力】
春日井市交通児童遊園
所在地:愛知県春日井市弥生町2-70
代表TEL:0568-81-1301
開館時間9:00~18:00
休園日:月曜日(祝休日の場合はその翌日)年末年始(12月29日から1月3日)
ゴーカート利用日時 第2・第4土曜日、日祝日 午後1時30分から(午後1時より整理券配布)
公式サイト:http://www.city.kasugai.lg.jp/shisetsu/kosodate/kotsujido/index.html

豊田市交通安全学習センター
所在地:愛知県豊田市池田町小山田494番地24
代表TEL:0565-88-5055/0565-88-5058
利用時間:9:00~17:00
休館日:月曜日(国民の休日にあたるときは開館)年末年始
    ※天候・諸般の事情により休館する場合あり
公式サイト:http://www.kotsuanzen.jp/

[ライター・カメラ/鈴木修一郎]

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