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コラム

更新2019.02.09

雪が降らなくとも、最低気温が5度以下になったらスタッドレスタイヤに!

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糸井 賢一

それは私が先代の愛車、日産シルビア(S14)に乗っていた頃の出来事です。

2月の終わり頃、所用で伊豆方面へと愛車で出かけていました。その時履いていたタイヤは、国内大手タイヤメーカーよりリリースされたばかりの新型ハイグリップラジアルタイヤ。走行距離は5,000キロほどだったと記憶しています。しかし、ハイグリップとはいえ雪の上ではローグリップ。FR&タイヤ幅が広いとあって、降雪時はまずグリップしないことをトラウマレベルで思い知らされた身です。出かける際は事前に天気予報を確認し、雪が降るようなら公共機関を利用するか、外出そのものをキャンセルしていました。


▲ハイグリップタイヤも決して万能タイヤではなく、他のラジアルタイヤと同様に低い気温や雪上、氷上に弱い

雪は降っていないのに、タイヤからグリップが失われた?



さて、事前の天気予報によれば外出予定日の伊豆方面は晴天。その前後日も概ねいい天気と予報されているので、愛車を利用しての移動に決定。当日は家を出た時こそいい天気だったものの、帰り道で急変。伊豆半島中程にある山間の地域で、みぞれ混じりの雨に降られます。ままっ、それでも雪じゃありませんし、みぞれもアスファルトに落ちるや溶けて水になる状況です。それほど気にすることなく、雨天時の感覚で運転を続けます。そしてその出来事は突然、起こりました。

Rの小さいカーブ。十分に減速し、予想しなかった水たまりがあっても問題のない速度で進入します。ゆっくりとステアリングを切ったのですが…ひどく心許ない手応えとゴロゴロと響く震動に、背筋が総毛立ちます。

「これ、前輪がグリップしていない!?」

クルマはわずかに方向を変えたものの、カーブの外側に向かって直進。反射的にブレーキを踏むもABSは作動せず、前後輪共にロックして状況が悪化する有様。ブレーキから足を離し、わずかに戻ったグリップでカーブを曲がりきろうとあがきますが、無情にもクルマはアスファルトから飛び出し、カーブ外側の土手に突っ込みました。この時、歩行者がいなくて本当によかったと、20年以上を経た今でも思います。


▲事故の後、降雪となり、レッカーに助けられてもらうことに…

速度が遅かったため、被害はフロントバンパーが変形した程度。その後、「路面が凍結でもしていたか?」と確認するも、ほとんどはただの濡れただけのアスファルト。降ったばかりのみぞれが数秒、残るものの、タイヤがグリップを失う要因はなさそうだったんですね。

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気温0度で夏タイヤはカッチカチ!



ここからは後日のお話になります。当時の事故について、なんだかモヤモヤした気持ちを長いこと抱えていたため、解消すべくタイヤについて調べます。そして大きな勘違いをしていたことに気付きました。スタッドレスタイヤは低い気温や低い路面温度でも柔軟性を失わないタイヤであること。雪や氷上に強いのは、タイヤの素材やサイプ(細い溝)で吸水性と排水性を高め、溶けた雪や氷の下にあるグリップ可能な雪や氷、アスファルトにゴムを接触させ、食いつかせることができるため。一方、夏タイヤは低い気温や低い路面温度にさらされると極端に柔軟性を失い、雪や氷上にできる水の層を排水できずグリップを失うタイヤだったんですね。

タイヤの主な材質はもちろんゴムで、ゴムの粘りでアスファルトに食いつかせ、摩耗することと引き替えにグリップを発生しています。ゴムには性能を発揮できる温度域があり、この域を外れて冷えると硬くなって食いつきが悪くなる。逆に高くなると食いつきすぎて摩耗が早くなり、転がり抵抗も増えて燃費も悪くなるそうです。

現在、日本の夏は気温が35度以上になる日も珍しくありません。炎天下にあるアスファルト上の温度は50度を越えます。一方、冬の夜は平野部でも気温が氷点下にまで下がり、山間部や北陸以北では氷点下10度以下にまで下がります。将来的にはこの幅広い気温差、あるいはアスファルトの温度差全域に対応できるゴムが開発されるかもしれません。しかし現状、そこまでの性能を持たせることはできていません。夏タイヤのゴムは気温20度を下回ると徐々にゴムが硬くなり、これに伴いグリップ力も低下。10~5度ほどでスタッドレスタイヤとほぼ同等のグリップ力となり、5度以下になるとスタッドレスタイヤを下回ります。

逆にスタッドレスタイヤは10度をこえてもグリップ力を失うことはありませんが、先も記したように摩耗が早くなり、走行時の抵抗が大きくなるなど経済性に関わる性能が著しく低下します。

ちなみにヨーロッパで主流のオールシーズンタイヤは、夏タイヤとスタッドレスタイヤの中間の性質を持っており、低い気温であっても夏タイヤほどグリップを失いませんが、スタッドレスタイヤほどの食いつきは発揮しないようです。


▲ぬかるみを走破し続けるオフロード用タイヤは、スタッドレスタイヤの吸水性と排水性、夏タイヤの温度域と耐久性の、両技術が盛り込まれている

先のタイヤがグリップを失った件は、走行していたのが山間部であり、気温と路面温度が低くなってゴムが著しく柔軟性を失っていた。くわえて路面が濡れて滑りやすかったため、起こってしまったのでしょう。

夏タイヤからスタッドレスタイヤへの切り替えは、「雪が降ったら替える」のではなく「最低気温が5度を下回る日がきたら替える」という認識でいた方がいいようです。

[ライター・画像/糸井賢一]

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