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コラム

更新2020.08.24

ネコ科のクルマ。プジョーとジャガーの「猫足」について考察する

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まつばらあつし

みなさまご存知、プジョーのエンブレムは「ライオン」である。ジャガーはもちろん「ジャガー」。この2社がつくりだすのはネコ科のクルマ。ネコ科といえばしなやかなボディと俊敏な動き。もちろんプジョーもジャガーもクルマである以上、ネコ科の彼らのような三次元の移動は不可能ではあるが、二次元空間の地面においては、彼らのようなしなやかな足回りで、路面を柔らかく、かつ忠実にトレースしてゆくというイメージがある。当たりが柔らかいが腰が安定しているのでタイヤが路面から離れない。ボディはガッシリと水平を保つのではなく、路面に合わせてゆっくりと上下してゆく。すなわちそれが「猫足」。



この「猫足」という言葉は、おそらく数十年前のCG誌あたりで使われだしたのではないかと推測される。いや、その辺はどうもあやふやで申し訳ないが、しなやかな足回りの形容詞として、主にフランスのクルマを評するときに使われ始めたのだと思う。そのフランスのクルマの中でも、シトロエンやルノーと異なり、どちらかと言えばスポーティなイメージのプジョー車は、そのエンブレムも含めて確かに「猫足」にふさわしい足回りを持っていた。特に205はまさにネコ科のような俊敏さを持つエンジンと、当時の国産車ではあまり経験できなかった、しなやか、なおかつしっかりしたサスペンションで、プジョー=猫足のイメージを定着させ、日本でもかなりの数が出回ったヒット作だ。当時の東京都内では、皇居周りの広い道路や首都高をきびきび走り回るカラフルな205をよく見かけたものだ。

さて、きびきび走り回るプジョーの「猫足」に対して、ジャガーは、同じ「猫足」でも少々ニュアンスが異なるようだ。それはクルマのサイズの違いからあきらかなのだが、プジョーが街の中や家に棲む「ネコ」サイズとすれば、ジャガーはもっと大きな「トラ」や「ライオン」サイズの「猫足」と言えばいいのかもしれない。

普段よく見かけることができる「ネコ」と違い、「トラ」や「ライオン」はそう身近な存在ではないので、あくまでも想像なのだが、ジャガーにおける「猫足」は、街の中や高速道路などではゆっくり地面をトレースするようなしなやかな動きだが、いざ峠道などをいいペースで駆け抜けても、腰砕けにならずしなやかさを保ったまま、というイメージ。もちろんエンジンも同様のキャラクターを持ち、ラグジャリーカーだけど走れば実は速いぜ、という存在。すなわち大きなサイズのネコ科の動き。普段はゆっくり遊弋するように草原を流し、いざ獲物を見つけたら素早いダッシュで接近してゆく。テレビの動物ドキュメンタリなどでよく観るシーンを思い出していただければいいかと思う。

こうしてみると、同じ「猫足」であっても、フランスの人と英国の人の「猫足」に対する考え方の違いが見てとれるような気がする。なによりも、サイズの大きい方の「ライオン」をエンブレムとしているプジョーは小さなネコ科的な動きを、サイズがちょっと小さい方の「ジャガー」をエンブレムとしているジャガーは大きなネコ科的な動きを、それぞれキャラクターとして持っているのが何とも興味深い。

[ライター/まつばらあつし]

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