コラム
更新2020.08.19
「旧き良き時代」を思い出す、クルマのネーミングルールとシトロエンのリアタイヤ
まつばらあつし
オールドファンであれば、60年代後半から70年代にかけてクルマメーカーは自社のクルマのネーミングに「凝っていた」時期があったのを覚えているかもしれない。
たとえばトヨタであれば、必ず「C」で始まる車名⇒「クラウン(CROWN)」「コロナ(CORONA)」「セリカ(CERICA)」「カリーナ(CRINA)」「カローラ(COROLLA)」という感じ。すなわち「車名」を観れば(あるいは読めば)ドコのクルマだかスグ判るといった案配。
このネーミングの「オレルール(笑)」は探ってみると結構面白いものがある。トヨタが頭文字で攻めるなら、というワケではあるまいが、ドイツのオペルは「コルサ(CORSA)」と日本名の「ヴィータ(VITA)」、「アストラ(ASTRA)」「オメガ(OMEGA)」といったように、車名の最後が必ず「A」で終わる「オレルール」が存在した(現在進行形かな?)。
同じドイツでもフォルクスワーゲンは「ゴルフ(GOLF)」「ジェッタ(JETTA)」「サンタナ(SANTANA)」「シロッコ(SIROCOCO)」「パサート(PASSAT)」と言うネーミング。さて、これはいったいナンだ?といえば「風」の名前を取り入れているのであった。「ゴルフ=メキシコ湾流(貿易風によって起る海流)」「ジェッタ=ジェット気流」「サンタナ=メキシコに吹く季節風」「シロッコ=地中海に吹く熱風」「パサート=貿易風」という感じ。ちょっとエキゾチックなイメージがする。
BMWやメルセデスは味気のない「数字」で車名を付けているので今回はお呼びでない。といわけで我らがイタリア&フランス車といえば!
と、言えば!・・・・・・・・・うむ・・・・。なんだ、あまり特長がないじゃないか(笑)
プジョーは車名を数字で済ませているし(怒!だけど、それはそれで伝統があってヨロシイと思う)、アルファロメオは「アルファスッド」や「アルフェッタ」「ジュリエッタ」という素敵な名前のクルマを輩出しているが、どうも一貫性がないというか直進性に欠けるきらいがある。
とは言え、日本ではマイナーながらもランチアは「ラムダ(LAMDA)」「ベータ(BETA)」「ガンマ(GAMMA)」「デルタ(DELTA)」と、ギリシア文字のネーミングで整えていたのは有名な話だ。最新車種はもちろんギリシア文字で「Y」読みは「イプシロン(ε)」。
同じくイタリアのフィアットは、一時期主力車種に音楽用語を使っていたことがある。「リトモ(Ritmo)」「テムプラ(Tempra)」「クロマ(Croma)」など。発音すると音が中々素敵ではあるけれど、長続きしないッちゅうか、どうも一貫性に欠けるのはイタ・フラ系のいいところ・・・いや、欠点なのかもしれない。飽きっぽいのかもね。
というわけで我らがシトロエンはどうなのか、というと最近の車は「C1」「C3」とか、数字で表記されてて、ナンかドイツっぽくて実に味気ない。じゃ、以前はヨカったのか、といえば「AX」「BX」「CX」「XM」「SM」「ZX」と寸法表みたいな感じ(笑)。大同小異か。
とは言え、その後に発売されたシトロエンのネーミングのついてたヤツも車名に必ず「X」が入る「オレルール」があった。「サクソ(SAXO)」「エグザンティア(XANTIA)」「クサラ(XSARA)」とか。これはこれで何かかっこいい感じはする。
で、実はシトロエンにはもうひとつ、ネーミングではない物理的な特長があったのだ。それがリアタイヤ。1948年に発表されたブリキの実用品2CV以来、シトロエンの乗用車はほとんどの車種で「リアタイヤが半分隠れるリアフェンダー」がついていたのだ。2CV・アミ・ディアーヌ・AX・ヴィザ・GS・CX・BXと、リアタイヤが半分隠れる後ろ半分はシトロエンのアイデンティティだった、と言えるだろう。
しかし、残念ながらエグザンティアでその伝統はフェードアウトしてしまう。大ヒットしたシトロエンBXの後釜として誕生したエグサンティアは、その初期モデルだけは「申し訳程度」にリアフェンダーのリップが「円形」ではなく、ちょっとだけリアタイヤを隠すようなデザインになっていたが、マイナーチェンジ後にはリアフェンダーもフロント同様に円形に整形され、長いあいだシトロエンの乗用車を象徴していた「リアタイヤ半分隠し」は、いつの間にかフツーのモノになってしまったのである。
まあ、それが残念とか言うわけではないけれど、現在の自動車工業の流れを見れば、部品の共用化やグループの統合など、合理的なモノづくりが主流となっているこの時代、30年〜40年前の「旧き良き時代」を思い返すのも悪くないと思っているのだ。
だってさ「旧き良き時代」なんて言えるのは、歳を重ねたオッサンやオバサン達の特権でしょ?。カーペンターズ的に言うと「Now and Then」であります。
[ライター/まつばらあつし]
たとえばトヨタであれば、必ず「C」で始まる車名⇒「クラウン(CROWN)」「コロナ(CORONA)」「セリカ(CERICA)」「カリーナ(CRINA)」「カローラ(COROLLA)」という感じ。すなわち「車名」を観れば(あるいは読めば)ドコのクルマだかスグ判るといった案配。
このネーミングの「オレルール(笑)」は探ってみると結構面白いものがある。トヨタが頭文字で攻めるなら、というワケではあるまいが、ドイツのオペルは「コルサ(CORSA)」と日本名の「ヴィータ(VITA)」、「アストラ(ASTRA)」「オメガ(OMEGA)」といったように、車名の最後が必ず「A」で終わる「オレルール」が存在した(現在進行形かな?)。
同じドイツでもフォルクスワーゲンは「ゴルフ(GOLF)」「ジェッタ(JETTA)」「サンタナ(SANTANA)」「シロッコ(SIROCOCO)」「パサート(PASSAT)」と言うネーミング。さて、これはいったいナンだ?といえば「風」の名前を取り入れているのであった。「ゴルフ=メキシコ湾流(貿易風によって起る海流)」「ジェッタ=ジェット気流」「サンタナ=メキシコに吹く季節風」「シロッコ=地中海に吹く熱風」「パサート=貿易風」という感じ。ちょっとエキゾチックなイメージがする。
BMWやメルセデスは味気のない「数字」で車名を付けているので今回はお呼びでない。といわけで我らがイタリア&フランス車といえば!
と、言えば!・・・・・・・・・うむ・・・・。なんだ、あまり特長がないじゃないか(笑)
プジョーは車名を数字で済ませているし(怒!だけど、それはそれで伝統があってヨロシイと思う)、アルファロメオは「アルファスッド」や「アルフェッタ」「ジュリエッタ」という素敵な名前のクルマを輩出しているが、どうも一貫性がないというか直進性に欠けるきらいがある。
とは言え、日本ではマイナーながらもランチアは「ラムダ(LAMDA)」「ベータ(BETA)」「ガンマ(GAMMA)」「デルタ(DELTA)」と、ギリシア文字のネーミングで整えていたのは有名な話だ。最新車種はもちろんギリシア文字で「Y」読みは「イプシロン(ε)」。
同じくイタリアのフィアットは、一時期主力車種に音楽用語を使っていたことがある。「リトモ(Ritmo)」「テムプラ(Tempra)」「クロマ(Croma)」など。発音すると音が中々素敵ではあるけれど、長続きしないッちゅうか、どうも一貫性に欠けるのはイタ・フラ系のいいところ・・・いや、欠点なのかもしれない。飽きっぽいのかもね。
というわけで我らがシトロエンはどうなのか、というと最近の車は「C1」「C3」とか、数字で表記されてて、ナンかドイツっぽくて実に味気ない。じゃ、以前はヨカったのか、といえば「AX」「BX」「CX」「XM」「SM」「ZX」と寸法表みたいな感じ(笑)。大同小異か。
とは言え、その後に発売されたシトロエンのネーミングのついてたヤツも車名に必ず「X」が入る「オレルール」があった。「サクソ(SAXO)」「エグザンティア(XANTIA)」「クサラ(XSARA)」とか。これはこれで何かかっこいい感じはする。
で、実はシトロエンにはもうひとつ、ネーミングではない物理的な特長があったのだ。それがリアタイヤ。1948年に発表されたブリキの実用品2CV以来、シトロエンの乗用車はほとんどの車種で「リアタイヤが半分隠れるリアフェンダー」がついていたのだ。2CV・アミ・ディアーヌ・AX・ヴィザ・GS・CX・BXと、リアタイヤが半分隠れる後ろ半分はシトロエンのアイデンティティだった、と言えるだろう。
しかし、残念ながらエグザンティアでその伝統はフェードアウトしてしまう。大ヒットしたシトロエンBXの後釜として誕生したエグサンティアは、その初期モデルだけは「申し訳程度」にリアフェンダーのリップが「円形」ではなく、ちょっとだけリアタイヤを隠すようなデザインになっていたが、マイナーチェンジ後にはリアフェンダーもフロント同様に円形に整形され、長いあいだシトロエンの乗用車を象徴していた「リアタイヤ半分隠し」は、いつの間にかフツーのモノになってしまったのである。
まあ、それが残念とか言うわけではないけれど、現在の自動車工業の流れを見れば、部品の共用化やグループの統合など、合理的なモノづくりが主流となっているこの時代、30年〜40年前の「旧き良き時代」を思い返すのも悪くないと思っているのだ。
だってさ「旧き良き時代」なんて言えるのは、歳を重ねたオッサンやオバサン達の特権でしょ?。カーペンターズ的に言うと「Now and Then」であります。
[ライター/まつばらあつし]