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コラム

更新2020.08.24

パンダがスゴイのはフツウのクルマであること

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まつばらあつし

1980年に初代が登場したフィアット・パンダは、ジョルジェット・ジウジアーロがデザインしたシンプル極まりない、欧州では最小クラス、Aセグメントの実用車だ。ガラスを含めて直線と平面で構成されたデザインは、まるで1/1のペーパクラフトのよう。内装も超シンプルで、1箇のメーターに棚ひとつ。パイプフレームに布を貼っただけのようなハンモックシートにワイパーも一本でいいやと言う感じで、デザインを含めていかにも低コスト。とはいえ、さすがジウジアーロ先生。シンプルゆえに室内のスペースは広々しており、「素のクルマ」として4人のオトナが過不足なく乗れて移動できる80年代の2CVと呼ばれるゆえんでもある。



確かにパンダは安物だったが、決して貧乏臭くみえないのがデザインのチカラ。日本でもJAXが輸入しはじめた当時は、最も安く買える「外車」として、それなりの人気を集めた記憶がある。というか、実は自分買っちゃったんですが(笑)、パンダ。ショウルームにパンダを見に行ったら、パイプに布貼っただけのシートやスカスカのエンジンルーム、内装には細かなスキマがあり、走らせるとガシャガシャにぎやかな室内。当時乗ってたトヨタとはえらい違いに衝撃を受けて即決。イタリアの安物としばらくともに過ごしたものである。

発売当時は1000ccにも満たないちいさなエンジンだったが、83年にシュタイア・プフとの共同制作による四輪駆動モデル4×4を追加。86年には近代化されたFIREエンジンを搭載。三角窓を廃止したり、ちょっとだけ内装を豪華にするなどのマイナーチェンジを受けたが、パンダらしい「素のクルマ」という本質はまったく変わらず、基本的にこのまま1999年まで、足掛け19年も生産され続けていた。90年代には富士重工製のECVT(これはスバル・ジャスティと同じ変速機だったらしい)を積んだ「セレクタ」なども追加されつつ、その後も2000年代初頭まで、ポーランドの工場では細々と生産されていたらしく、ポーランド生まれの初代パンダが、少数が日本にも入ってきていたようだ。

この初期型パンダが19年も作られ続けてきた理由は、先にも書いたようにこれが徹底した「素のクルマ」だからだと思う。必要最小限の装備のクルマ。パンケーキやトーストで言えば焼いた直後、ごはんで言えば炊き立てのを茶わんに盛った状態。味付けも何もないけれど、とても幸せな気分に浸れる。味付けはお好みなので、何に使おうがそれは自由だし、実際何に使ってもちゃんと答えてくれる。パンダが多くの人に愛されたのは、そんなところにあるのだろう。

2代目となるパンダは、2003年に登場したちょっとトールボディの5ドアハッチバック。だいぶ立派になってしまったが、それでも元気で使いやすい小型車という部分では変わらず、こちらは8年間作られた。初代に比べて半分の寿命だが、デザインコンセプトがほとんど変わらない3代目が2011年に登場しているので、まだまだ息の長いデザインとなりそうな気配がする。いやしかし「普通」であることはスゴイことなんだろうな。何を持ってして「普通」と言うのかは悩み所ではあるのだが、パンダが「誰もが思う本当に普通のクルマ」である、ということが、他にはない「個性」なのが、いやスゴイ。

[ライター/まつばらあつし]

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