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コラム

更新2018.08.08

神話か実話か。メルセデスベンツは頑丈で長く乗れるというのは本当なのか?

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鈴木 修一郎

今回はなぜ、偏執的な国産クラシック愛好家の筆者がメルセデスベンツに突然入れ込むようになったのかについて書いてみようかと思います。



筆者の愛車は「昭和48年型セリカLB2000GT」と「昭和44年型スバル360スーパーDX」であることは、筆者の拙筆を読んでいただいてるCLカーズ読者の方にはよくご存じの事かと思いますが、それとは別に我が家には1996年からメインの自家用車として「日産クルーLXサルーンGタイプ」が20年以上棲んでいます。

筆者のスバル360は1999年購入のため、新車購入した一番新しいクルマがじつは我が家では一番所有歴が長く、しかも「名古屋74」という今となって希少な名古屋の二桁7ナンバー末期のナンバープレートを掲げています。



ご存じの方もいらっしゃると思いますが、この「日産クルー」というクルマ、もともとは小型料金のタクシー専用モデル(中型はY31型セドリックセダン)として開発された5ナンバー4ドアセダンで、一般ユーザーからも「民生用モデルを販売してほしい」という要望からガソリンエンジンと一般ユーザー向けの装備をラインナップした「サルーン」というグレードがラインナップされます。

ところが、一部の目ざといクルマ好きの間ではシャシーは旧型のローレルやセドリックのコンポーネンツを使用。当時すでに絶滅危惧種だったFRの駆動方式を採用し、エンジンはスカイラインと同じRB型、デフやサスペンションはシルビアやセフィーロと互換性があるなど、日産のFR車のコンポーネンツを流用している事から、サーキット仕様やドリ車のベースになるのでは?と話題になりました。

国産クラシックカー好きの筆者には、直線基調ながらウエストラインやリアウィンドー周りのRを帯びたプレスラインや、当時の4ドアセダンとしては垂直に近いくらいに立った窓ガラスでずんぐりとした外見に1960年代の4ドアセダンの再来を感じました。

そこで、筆者の父が「クルマを買い替えるが、もう定年も近いし次のクルマ買ったらもう次はないだろう」というので「それなら、5ナンバーボディで4ドアセダンで、運転もしやすくて、車内も広くて、長く乗れるクルマがある」と日産クルーをすすめ、1996年4月無事我が家の自家用車となります。いざ乗ってみると…さすが人を運ぶプロ用のセダン。見た目こそ野暮ったく、飾りっ気のないクルマでしたが、まるで3ナンバーフルサイズセダンのような広々としたキャビンや、日本車にありがちな軽いだけのパワステではなく適度に重いステアリングと、ストロークの大きなサスペンション。初期制動は緩く奥に踏むごとに制動力が強くなるブレーキタッチ、程よく固いシートはドライバーもまったく疲れず、パッセンジャーにも快適なリアシートは、実用面ではまったく不満が出ないどころか、気が付けば代替える事もないまま気が付けば20年以上乗り続ける事になりました。

ところで、この「堅牢で合理性を最優先した無骨なセダン」の究極と言えばもちろん…「メルセデスベンツ」ですよね。スポーツカーの究極としてフェラーリやポルシェにあこがれる人がいるように、いつしか筆者の頭の片隅で4ドアセダンの実用車の究極としてメルセデスへの関心が沸いてきたのですが…

ベンツ壊れない伝説は本当なのか?


筆者のもっと興味の引くモデルは、ダイムラーがコストダウンを意識する前の1980年代より前のモデル。

中でもW111やW114・115といった縦目や人生の最期は戦前型のW136型170V、どちらかと言えばSLやSELの様なハイエンドモデルではなく、いわゆる「バネサス」「キャブ仕様」の廉価モデルで、新車当時、オーナーが高級車と思って意気揚々としていたら本国ではタクシーに使われているごくありふれた実用量販モデルと知ってガッカリしたというあのレンジのモデルです。



カレント自動車から仕事をいただくようになり、自分の好きな古いメルセデスのオーナーと話す機会も何度か得られたのですが、維持について聞くとグレード問わずほぼ間違いなくどのオーナーも満面の笑みを浮かべ「いや~、メルセデスはいいですよ。本当に頑丈で手がかからない良いクルマで、なにも困ることはありませんよ。」と言ってきます。

一方では、「所詮ベンツも外車だからすぐに壊れるに決まってる」「ベンツなんて余りに金食い虫だからすぐに売り払った」という話も聞きます。一体どっちが本当なのでしょうか。

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国産車とヨーロッパ車の考え方の違い


じつはセリカとは別で、筆者がレストアしているスバル360の部品でお世話になっているクラシックカー専門店に「ガレージプレアデス」という店があります。筆者がスバル360を購入した当時からお世話になっているのですが、以前プレアデスの社長はW126メルセデスの300SEその後は420SELや一時期はS500にも乗っていたメルセデスフリークでした。

当時は自分がメルセデスに興味を持つなんてまったく考えていなかったのですが、最近古いメルセデスが気になりだし、日に日に興味が増していくので、先日入荷した部品を取りに行ったついでに改めてメルセデスベンツについてじっくり聞いてみると…

「そりゃ、ベンツは金食い虫だったよ、あちこち壊れたし、でも国産車と同じ感覚で乗ったらの話だけどね。こまめに消耗品交換したりオイル交換だって忘れちゃいけない、国産車はオイル交換忘れても、10万km部品交換なしでも走っちゃうだろ」

もしや!?と思い
「今、僕はセリカLBを実用にして、スバル360にも乗ってますけど、セリカはオイル交換3000km厳守、アッパーマウントやブッシュなんか早い物は2年の車検ごとに交換してますし、スバル360なんかデスビが焼けて交換なんか修理のうちに入らないと思ってますけど、たとえばメルセデスも、ブッシュとかクッションとかのゴム部品とか消耗部品は車検や12カ月点検なんかのたびに一つづつ順番に交換するつもりで、オイル交換時期もきっちり守っていたら大丈夫ってことですか?」
と、たずねると

「まぁ、そういうことだね。ブッシュとかラバーマウントとか補器類の交換程度は修理だと思ってない人には手がかからないクルマだと思うよ」

つまり、こういうことのようです。国産車は10年間10万kmノーメンテで走る事が出来るものの10万kmもしくは10年を超えた途端、一度にゴム類やクッション、マウント類や補器類の消耗品が壊れだし1度の修理に何十万円かかったり、場合によってはヘタリの出た部品でも中途半端に動いてしまうため、気が付いたらエンジン・トランスミッション本体が破断してしまい走行不能になる。

ノーメンテで長期間走れるのと引き換えに、ある日修復困難な突然死の様な壊れ方をするため、買い替えサイクルも短いのに対し、メルセデスベンツは、オイル交換のタイミングも厳守で、消耗品は数年、数万kmごとに交換する必要があるものの、交換サイクルを守っていれば数十万km、数十年スパンで見ればエンジン・トランスミッション本体やフレームは頑丈で、最終的には走行距離100万km超えの一生の愛車にもにもなりうる…ということのようです。



実際、筆者の自家用車のクルーも最初のうちの10年はよかったのですが、所有歴10年を超えたあたりから、燃料ポンプ、メーターイルミネーション、アブソーバー、ブッシュ類、オルタネーター、ウォーターポンプ、エアフロセンサー(日産車オーナーならお約束ですよね)が立て続けに壊れたのですが「下取り査定額より修理代は高いが代替えになるクルマが無い」という理由でしぶとく修理を続けた結果、再び安定期に入ったのか「定期的な油脂類と消耗品のみで、エンジンとトランスミッション本体は壊れる様子はない」という感じです。

もともとタクシー用で1990年代のクルマとしても構造が簡素というのもあるのでしょう、マルチリンクのアクティブサスやアテーサ4WDなど、なまじ凝ったハイメカだったらむしろ20年も実用用途で使うのは困難だったのかもしれません。それゆえ初代シーマを新車当時から愛用しているという某有名女優さんのシーマへの情熱は称賛に値します。

幸い、筆者の自宅のクルーは運用コストを抑える事が何よりも重要なタクシーで、しかも長期間生産していたとあって、整備費用も比較的安くまだまだ部品は出ますが、生産中止からもうすぐ10年。ガソリン仕様が生産中止になったのは2002年で一部ガソリン仕様の部品は補給打ち切りになった物も出始めてきました。実用車として安穏と乗っていられるのももう長くはないかもしれません。

むしろメルセデスベンツは10年10万kmを超えてからが勝負


一方プレアデスの社長は
「ベンツはね、販売後10年経ったモデルの部品は部品メーカーで自由に販売していい契約になってるから、昔のモデルなら純正部品と同じ部品が社外品(同じ部品でもダイムラーの保証やクレームの対象外となる)という体裁で安く(おおむね半分~1/3くらいの値段)買えるよ」
とのこと…

メルセデスは旧型モデルでも部品供給がなくならないばかりか、むしろ部品メーカーとの契約上、旧型モデルになると部品を製造しているメーカーからメーカーの純正部品共販の中間マージン無しで純正部品とまったく同じ部品を直接買えるというのです。

さらに
「中古のベンツを買うなら、ヤナセでずっと整備を受けていたようなクルマを選ぶことだね」

というので、以前ある中古メルセデス専門店で「メルセデスの複数オーナーである大学教授が普段使いしていた、走行11万kmの190Eのディーラー車(ヤナセ)のワンオーナー車」という個体が気になって見に行った事があると話すと

「あ、それ当たり(笑)むしろ、そういうベンツだったら10万km超えてからが本番だから、たぶん鈴木君の考え方で乗れば大丈夫かもしれないね」

もちろん、スバル360もレストア途中、セリカLBも長期修理という筆者にとってメルセデスベンツに手を出す余地は無いのですが…どうやら遠い存在のようで向かっている方向は間違っていない、随分悩ましいところにメルセデスベンツが居るようです。

[ライター・カメラ/鈴木修一郎]

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