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コラム

更新2018.01.19

次期型カローラがフルモデルチェンジ!?カローラ3ナンバーと5ナンバー枠の今後の在り方について

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鈴木 修一郎

CL読者の皆様、明けましておめでとうございます。年末年始いかがお過ごしされたでしょうか?

今年も様々な新型車のニュースがクルマ業界を賑わせる事になると思いますが、以前から噂されていた次期型カローラのフルモデルチェンジによる3ナンバーワイドボディ化がいよいよ、今年夏に予定されているフルモデルチェンジでボディサイズの3ナンバー化が確定したというニュースが元旦の新聞の紙面を飾っていました。

筆者の周囲でもさっそく、カローラの3ナンバー化に対して賛否分かれています。
もはや、ボディのワイドトレッド化は世界の潮流であり、年々厳しくなる衝突安全基準にいち早く対応するためには日本を代表するグローバルカーである以上、たとえカローラであっても日本独自の5ナンバーという企画に固執するのは時代遅れという人、その一方で日本、欧州問わず乗用車のボディサイズの拡大に歯止めがかかることも無く、「コンパクトカー」を標榜しながら、かつての中型車に迫るサイズで特に全幅に至ってはフルサイズ車と大差ないサイズとなり、取り回しや駐車スペースの問題で買い替えの選択肢に困るユーザーも多い中、5ナンバーセダンの最後の砦だったカローラが3ナンバーに拡大などまかりならんという人もあり、意見は二分しています。



さて、筆者の意見ですが、筆者の自宅近辺の道路事情や自宅駐車場のスペースの関係で5ナンバー車しか選択肢がなく、筆者の亡父が20年ほど前に新車で買った日産クルーの代替えになりうるクルマが全滅してしまった身からすれば、カローラのボディ拡大はまた一台、筆者のように居住場所の道路事情や駐車スペースの関係で5ナンバーボディ車でなければ困るという人にとって購入できるクルマの選択肢が消滅してしまったという事実に変わりありません。
むしろ筆者としては、世界に名だたる日本発祥のグローバルカーとしてあえて5ナンバーを堅持しダウンサイジングやコンパクトカーのデファクトスタンダードを標榜してほしかったというのが正直な感想です。

ところで、「3ナンバーと5ナンバー」というと時に話題に出すのを憚りたくなるほど場が荒れることもあります。もはや国産車・輸入車問わずの乗用車の大半が3ナンバーボディが常識となり、Bセグメントのコンパクトカーですら全幅1800mm超も珍しくなくなった今となっては「今更、5ナンバーという日本独自の規格に固執するのはもう時代にそぐわない」という意見が多数派になりつつあります。
その一方で筆者のように「生活道路が狭く駐車スペースが狭い以上、5ナンバー車の消滅は死活問題」という自動車ユーザーの意見もまだまだ無視できるものではないと思います。

カローラ3ナンバー化で筆者が真っ先に気になったのが、カローラの上級車種で5ナンバーボディを堅持するプレミオとアリオンです。さっそく隣町のトヨペット店のセールスに今後プレミオがどうなるか聞いてみたところ現在、3ナンバー化や統合の話は無いとのことですが、年配のユーザーを中心に取り回しの良い、コンパクトサイズの4ドアセダンというニーズは根強く残っているとのことでした。

さてこの小型自動車、いわゆる「5ナンバー」という規格ですが最初に制定されたのが昭和8年で、全長2.8m以下、全幅1.2m以下、全高1.8m以下、排気量4サイクル750cc以下、2サイクルが500cc以下と定められその後、何度かの改定を経て昭和35年に現在の全長4.7m以下、全幅1.7m以下、全高2.0m以下、排気量ガソリン2000cc以下、ディーゼル制限無しとなります。
ちなみにこのときの改定でクラウンやグロリアが1500ccから1900ccに排気量が変更されます。かつてはこの規格のうち一つでも小型車枠を超えると、税率も普通乗用車(3ナンバー)の税率が適用されたのですが平成元年の改正で5ナンバー・3ナンバー関係なく税率は排気量に準拠するようになり、以後国産車も3ナンバーのワイドボディを採用する車種が増えていきます。

今となっては「5cm、10cmの差はそんなに騒ぐことなのか?」という意見を耳にすることも多くなりました。しかし筆者のような事情を抱えるユーザーにはこの5cm、10cmというのは決して無視できる数値ではありません。昔、郊外の町工場を回る営業車を運転していたときは、狭い信号交差点で前の右折待ちのクルマの脇があと5cm、10cm空いていれば次の信号まで待たずに後ろの直進車がこのまま直進できたのにという場面に何度も出くわしました。

道が広いと言われている名古屋市でも郊外にいけばまだ軽自動車でもすれ違いの難しい道も多く「この先、幅員狭小軽自動車以外走行困難」という掲示のある道路も少数ながら存在します。5cm幅が広くなったクルマが2台すれ違うのに必要な幅員は10cm増え、10cm幅が広くなったクルマが2台すれ違うのに必要な幅員に至っては20cm増えます。郊外の入り組んだ宅地では決して無視できる数字では無いでしょう。
そういう地域に住んでいる人にとっては5cm、10cmの違いは大きく、買い替えでやむを得ず軽自動車にダウングレード、もしくは古い5ナンバー車をそのまま使い続けざるをえない事になります。

例えば、筆者の場合、母は20年前、亡父が購入した日産クルーを使用し、筆者はセリカLBを使用しているのですが、クルーの全幅は5ナンバー枠上限の1695mm、セリカLBの全幅は1620mm、その差は75mmおおよそ拳一個分といったところですが、築40年を超える自宅前の駐車場にそれぞれのクルマを停めるとこうなります。



間取りとしては自宅前の幅約4m弱のスペースを半分にして隣家と共同で使用する形なのですが、5ナンバー枠の上限いっぱいの横幅で左タイヤをU字溝の上に少しはみ出した状態でようやく境界線から20cm弱余裕ができるくらいです。



現在、U字溝の向こう側は電気工事を営んでいる隣家の資材置き場になっていますが、昔はU字溝の向こう側は道路までブロック塀があり、ここまで寄せる事は困難だったでしょう。



しかし、ここまで寄せても境界線までこのクルマが履いている195幅のタイヤ一本分のスペースもありません。これ以上車幅のあるクルマではお互い自宅の駐車場にクルマを乗り入れることが困難になってしまいます。



一方、普段別の場所で保管しているセリカLB(全幅1620mm)を自宅前の駐車スペースに停めるとこの通り



左タイヤはU字溝から数cm離れた状態でも中央の境界線から余裕を持った状態で停める事が可能です。もし、左に塀があってもこのくらいまでは寄せることが出来るでしょう。



これでも境界線までは上記のクルーと同じくらいの余裕があります。参考なまでにセリカLBのタイヤは205幅です。筆者の自宅が設計された1970年代では、5ナンバー枠いっぱいのクラウンですら一般家庭の購入対象の自家用車ではフルサイズの上限だったのでしょう。

現在右隣の隣家の方は高齢を理由に免許も返納し、自家用車も処分しているため右隣の駐車スペースは使っていないのですが、ワイドボディが増えた1990年代以降この駐車スペースの制約で買い替えの選択肢が狭まってしまった上に、母の小柄な体格上ハイトワゴンやミニバンでは運転ポジションが合わないという事情もあり、遂には20年間クルーを乗り続ける事になりました。

亡父が「クルマを買うのはもうこれが最後だな」と言った事で「それならタクシー用の日産クルーというクルマがあってそれなら間違いなく長く乗れるし、車内も広くて、今後5ナンバーで6気筒エンジンの4ドアセダンに乗れるのはこのクルマが最後だろう」とクルーを勧めたのですが、まさかここまでひっ迫した理由で乗り続けることになるとは思いもしませんでした。
商業施設の駐車場を見てもタイヤの両端が区画の白線ギリギリ、もしくは白線を少し踏んだ状態で停まっているクルマを見かけます。



ちなみにこちらは筆者が時折利用する名古屋市内の某自走式パーキングビルの標識です。今となってはほとんど有名無実化していますが、幅員の制限は1.7mとなっています。本来はここの駐車場は3ナンバーワイドボディのクルマを停める事は想定していないのです。パレット式やゴンドラ式の立体駐車場で、デミオやプロボックスでもスペースギリギリだったというのは筆者自身も経験した事があります。現行プリウスでパレットの両端にタイヤウォールが当たって入庫に苦労している方を見たこともあります。

車体の規格は大きくなっても、そもそも日本の国土事情も含めて道路や駐車場のインフラの設計は全幅1.7m以下の乗用車を基準に規格で作られている事に変わりはないのです。クルマが大きくなっても走るためのインフラがワイドボディに対応しきれていないという齟齬が、国産ベーシックカーの代表格のカローラの3ナンバー化に対する抵抗感として表れているのではないでしょうか?

ところで、日本独自のいわゆる「ガラパゴス」とも思えるこの5ナンバー規格ですが、今回のカローラのモデルチェンジでも要となる全幅1700mmという上限、一見ローカルな基準値のようで実は絶妙な数値であるということを、ご存知の方は少ない事かと思います。



CLの読者ならご存知の方も多いと思いますが、史上初の大量生産車であり、また世界初のグローバルカーと呼んでも差し支えの無いであろう名車で、フォードT型というクルマがあります。実はこのフォードT型の全幅が奇遇にも1687mm(66インチ)、トレッドが1422mm(56インチ)とほぼ、日本の5ナンバー車と同じ全幅・トレッドになっています。

世界を巻き込んだ標準化、規格化のフォーディズムの権化たるフォードT型です。もちろん何の理由もなくこのボディサイズなったわけではありません。この56インチというトレッドはイギリス発祥の軽量馬車のトレッドの標準規格56.5インチに由来するもので、そこに左右のフェンダーを入れると1700mm弱という数値になります。更に全幅1687mm(66インチ)全長3318mm(134インチ)というボディサイズは当時アメリカで使われていた4輪馬車を格納している納屋に確実に収まるサイズという意図で算出された数値なのだそうで、奇遇にも日本の5ナンバーコンパクトカーと4輪馬車は非常に近いボディサイズを有しているのです。

1920年代、世界中の自動車市場をフォードT型一車種で席巻するまでに至ったのはこの4輪馬車に準拠したボディサイズに依る部分も多い事でしょう。
つまりこれは、見方を変えれば世界中のどんな古い街道でも路地でも馬車が走るのが前提で整備された道であれば、日本の5ナンバー規格準拠のクルマであれば確実に通行ができるということではないでしょうか?

日本のように自動車の購入時に駐車場の確保が義務付けになっておらず、路上駐車が基本合法で自家用車の保管場所も路上駐車が認められている欧州では保管場所の確保の問題で車幅の肥大化が懸念事項になるということは少ないでしょうが、道路の両端が容赦なくビッシリ路上駐車で埋め尽くされているという交通事情を考えると、馬車の時代からの街道と街並みが残る欧州こそ馬車の標準規格に近い数値である日本の5ナンバーサイズの存在意義が見出せるのではないか?とも思えるのです。

1990年代以降「グローバル化」が進むと、日本の企業も我先に「グローバルスタンダード・世界基準」に準拠するのが正義とあらゆる分野でグローバルスタンダードの導入が進みましたが、一方で日本は他国に合わせるばかりで自らがグローバルスタンダードになる努力を疎かにしていたのではないか?とも思います。

日本発祥の世界共通の規格といえば古くは旧日本ビクターの家庭用VTRのVHS、フィリップスと共同ではありますがソニーのCDの12cm光学記録ディスク、変わったところではタミヤのプラモデル「ウォーターラインシリーズ」の艦船模型の1/700スケールとミリタリーモデルの1/35スケールと全幅190mm、ホイールベース260mmの1/10スケール電動RCカーくらいでしょうか?
路上駐車が合法の国でも、BセグメントやCセグメントのコンパクト~ロワーミドルサイズでも全幅1800mm超えも珍しくありません。昨今の際限の無いボディの肥大化は今後見過ごせる物でもなくなってくるのはないかと思います。

日本車は欧州市場に弱いと言いますが、今のご時勢、むしろ日本のお家芸であるダウンサイジングがプレミアムになる可能性もあるのではないでしょうか?今こそ日本の5ナンバー規格や軽自動車規格を小型車・マイクロカーの世界基準としてそれこそ「5セグメント」「Kセグメント」とでも銘打って提唱すべきだと思うのです。

カローラ同様にボディの肥大化が顕著な日本車としてホンダシビックがあります。タイプRも設定され10年ぶりの国内販売復活で話題になっていますが、全長4520mm全幅1800mmはもはやキャデラックATSの全長4680mm全幅1805mmに迫るサイズです。
かつてフルサイズボディに大排気量エンジンと過剰な装備が正義だったアメリカ市場の価値観へのカウンターとして、コンパクトなボディに小排気量エンジンのシンプルで経済的な小型車を持つ事が知性的という価値観を提案し、ついにはアメリカビッグ3もいよいよダウンサイジングを余儀なくされるに至らしめたあのシビックが今やキャデラックに迫るボディサイズまで拡大してしまったという事実に言葉にしがたい複雑な思いを抱かざるを得ません。

ボディの拡大の要因である年々厳しくなる衝突安全基準への対応の難しさもあると思いますが、コンパクトなボディに詰め込まれた高い品質と性能に環境性能と安全こそ日本車にしかできない、プレミアムカーの有るべき姿ではないでしょうか?
また、ダウンサイジングが進めば日本が得意とする超高張力鋼鈑や、構造材のプレス成形技術やレーザー溶接といった小型でも十分な強度や剛性を確保するための材料技術や成形・加工技術で優位に立てる可能性もあります。
むしろカローラこそ、日本のベーシックカーとして全てを凝縮したダウンサイジングがプレミアムという日本発祥の価値観とデファクトスタンダードを世界に提案する、そういうクルマであって欲しかったと思います。

[ライター・カメラ/鈴木修一郎]

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