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カーゼニ

更新2017.02.27

500万円ほどの遺産でクルマを買うと「シブい中年男の世界」にいけるのか?

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伊達軍曹

きょう、ママンが死んだ……というのは前回の当欄にてお伝え済みだが、亡くなった人間が自分の親であった場合は「遺産分割協議」という、ソー・マッチ・リアリスティックなイシューが残された息子たちの間で浮かび上がる。

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幸いにして我が軍曹家は兄弟仲が良く、ていうかハナからモメる可能性ゼロな微々たる財産を「貧乏子沢山」な我ら4人兄弟で分割するため、当該イシューはベリー・スムーズに進行するものと思われる。その結果、末弟たるわたくしはおそらくウン百万円、まぁ隠す必要もないので正味のところを言ってしまうと、たぶん500万円ほどの遺産をママンから受け取ることになるのだと思う。

で、わたしはそれでクルマを買おうかと考えている。

500万円級の予算だと選択肢はこんなに豊富だったのか!


貯金しておくっつーのも芸がなく、土下座まんじゅうライターとはいえ当座のカネに困っているわけでもないし、ほかに欲しい物も特にないわたしとしては、「ま、クルマ買うか」ぐらいの選択肢しかないのだ。形式上はママンからの遺産ではあるが、実質的には(詳しい経緯は割愛するが)ペール(パパ)・ユキヒロからの遺産であることを考えれば、若い時分は大層クルマ好きだったペール・ユキヒロへの供養にもなるだろう。

ということでわたくしはいつものカーセンサーnetを開き、「400万~500万円」「輸入車」という条件にて検索を開始した。そして、驚いた。

いつもと見える景色が違うのである。

普段は私用でも仕事でも「100万~200万円」ぐらいの価格で検索しているため、基本的には今ひとつパッとしない輸入車ばかりがヒットするわけだが(ま、そのなかから大穴を探すのが楽しいんですけど)、「400万~500万円」との条件で検索をすると、キラ星のごとき……と言っては少々大げさだが、まぁなんつーか「1軍の主力」みたいな車種が次々とヒットする。いやはやなんとも……。

で、「たはーっ!」とか独りつぶやきながら検索を続けていくと、いくつかの候補車種がなんとなく固まってきた。まず最初に目についたのがBMW 2シリーズ アクティブツアラーである。

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どうということのないクルマではあるが、流通台数が非常に多く、車両価格400万円も出せば「走行10km」とかの225xe Mスポーツが買える。現在は中年草野球部の道具一式を初代マツダ(ユーノス)ロードスターで運搬しているわけだが、もう1台のクルマとして2シリーズ アクティブツアラーがあれば、その方面でも重宝するだろう。

しかし……実際にコレを買うとなると、ペール・ユキヒロのとてつもない渋面が脳裏に浮かんでしまいそうな気がする。

「……凡庸なクルマを買いよってからに。そんなつまらん男に育てた覚えはないぞ」と。

どうも2シリーズ アクティブツアラーはダメだ。いや、当該のカーがダメなわけではなく、「この場合」「わたしにとって」ダメだということだ。ほかのにしよう。

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何を選んでも「内なる声」が邪魔をする……


では同じくBMW 2シリーズのカブリオレではどうだろうか?

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こちらの場合は車両440万円前後で、走行5000kmとかの220i Mスポーツを狙うことができる。なかなか悪くない選択ではあるだろう。

しかし……実際にコレを買うとなると、ペール・ユキヒロではなくわたし自身が、わたしのことを嫌いになってしまいそうな気もする。

「ハッ、親の遺産でビーエムのオープンってか? しかも半端な。ハンパな放蕩息子であるおめえと、あの半端な親父にゃぴったりのクルマだな。ご苦労さまなこった!」

……そんな心の声が聴こえてきてしまいそうだ。ダメだこれは。

ならばBMW 4シリーズ グランクーペでどうか?

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走行5000km前後の420i Mスポーツがだいたい460万円ぐらいだ。素晴らしいクルマであり、わたしがまさに望んでいる「シブい中年男の世界」である。これに乗って日々移動すれば、土下座まんじゅうライターであるわたくしもヤングエグゼクティブの世界に片足を突っ込めるような気がする。もはやヤングではないが。

……が、コレもダメだ。内なる声がわたしに言う。

「親とはいえ人のカネでエグゼクティブもクソもねえだろ。バカめ」

そのとおりだ。これもやめにしておこう。

それならいっそアバルト695トリブートフェラーリだとどうなんだ?

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車両460万円前後で走行1万km台のブツが狙えるようで、なかなか好きなクルマではあるのだが、冷静に考えるとコレもやっぱりダメだろう。父ユキヒロが夢枕に立ちそうな気がする。

「……初代ロードスターと695トリブートフェラーリの組み合わせってお前……(絶句しながら)バカか? バカの人なのか???」

おっしゃるとおりだ。組み合わせ的にあまりにもバカすぎる。やめておこう。

クルマ道楽は「自分のカネ」でやってこそ面白い


そのほかポルシェ911(タイプ997)も悪くないと思ったが「ケッ、親のカネでポルシェかよ」とのそしりは免れず、メルセデスAMGのG45 4MATICもいいが、ペール・ユキヒロから「小さくまとまりおって……」とため息をつかれそうだ。現行Cクラスステーションワゴンはさらに悪くないが、「普通だな、普通すぎる……」という、個性をもって尊しとする軍曹家では最大級の侮蔑を、故ユキヒロから受けそうだ。そしてM3もレンジローバー イヴォークも、仔細な検討の結果「すべてダメ」ということが判明した。

そして結局、わたくしは「買うべきクルマは特にない」という結論を下した。残念ではあるが、これでいいのだとも思う。

なぜならば、クルマ道楽というのはやはり自分の才覚で得た自分のカネで、つまりは「自分の責任」において、突き進むべきものであるからだ。人のカネでは、親とはいえどうも落ち着かない。ムズムズする。没頭できない。

そりゃもしもわたしが、よく知らないけど有栖川宮家かなんかの末裔で、蛇口をひねれば水道水が出てくるのとほぼ同じような感慨で「家のカネ」を使えるなら、それもまた善しだろう。しかし生憎こちとら庶民というか貧乏人の倅である。「テメエのケツはテメエで拭け」というか、もはや自分で拭く以外はあり得ないという感覚に慣れすぎているため、(微々たるものとはいえ)人のカネ=遺産で何かをしても、結局のところ心底シアワセなマインドにはなれないのである。

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そんなこんなの検討を終え、わたくしはいつもの中古NAロードスターに乗り、いつもの近所のイオン(最近ダイエーからイオンに改装されたのだ)へ買い物に行った。で、いつもの梅干しを買おうと思ったのだが、ちょっとだけ逡巡したのち、ちょこっとだけ高い紀州ナントカ梅というのを買ってみることにした。

「……贅沢かな?」とも思ったが、「そうでもないんじゃね?」という、なぜか今どきのイントネーションを使うペール・ユキヒロの声が聴こえたような気がした。たぶん、空耳だったと思う。

[ライター/伊達軍曹]

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