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カーゼニ

更新2017.09.18

専門である中古車についても、私は「教える」ことができない理由

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伊達軍曹

過日。とある企業のとある編集部からとある依頼を受け、とある案件に関わる文章を書いた。……「とある」が連続する悪文で恐縮だが、まぁとにかくそれは約10日後、インターネット空間に公開された。しかし私は大変に困った。なぜならば、編集部がその文章に「○○○教えます」というタイトルを付けてしまったからだ。

それがなぜ困るかというと、私には他人様に「教える」ことができるものなど一つもないのである。

専門である中古車についても、私は「教える」ことなどできない




そもそも「教える」とはどういう意味なのだろうか? デジタル大辞林によれば、どうやらそれは以下のような行為を指す日本語らしい。

1 知識・学問・技能などを相手に身につけさせるよう導く。教育する。教授する。
2 知っていることを相手に告げ知らせる。
3 ものの道理や真実を相手に悟らせて導く。戒める。教訓を与える。

……なかなかの上目線である。何事においても私は1の「導く、教育する、教授する」というほどの立派な知識や見識は持ち合わせていない。そしてもしも私ごときが3の「悟らせる、戒める、教訓を与える」をやろうものなら、鼻で笑われるか殴られるかの二択となるだろう。

せいぜい2の「知っていることを相手に告げ知らせる」ぐらいならできそうな気もするが、これに関しても油断はできない。

私が「知っていること」といえば中古車のこと、それも主には輸入車のユーズドカーに関するあれこれだ。これについては28歳の頃から20年以上にわたり本職の記者を続けているので、それなりに「告げ知らせる」こともできなくはない。

しかし私が知っている中古車のモロモロとは、あくまでも記者として、あるいはユーザーとして見た業界の一側面に過ぎない。



私は中古車を販売したこともないし、職業としてそれをバラして整備した経験もない。そんな者が中古車について「教える」などと言ったら、やはり鼻で笑われるか、あるいは正拳突きにてぶん殴られるかの二択になることは間違いない。

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クルマの「その後」についてもユーザーのほうが詳しい




もちろん世の中には私のような半端者ではなく、そのジャンルに超絶精通しておられる方も希にいらっしゃる。そういった方が「教える」のは別に構わないと思うわけだが、そんな「ほぼ全能の人」の数というのは非常に少ない。多くの専門家は、決してそこまでの超絶オールマイティではないのだ。

特に自動車(の評論)においてはその傾向が強いと愚考する。

私の場合は前述のとおり中古車にはそれなりに詳しいが、あくまで「一側面」について詳しいだけだ。

新車の評論を主にされている先生方は、確かにその時代時代のブランニューモデルを同時期に多数比較試乗しているため、「ニューモデルの乗り味等について」は信頼のおける原稿をお書きになる場合が多い(もちろん人によるが……)。

しかし「そのクルマに3年か5年ぐらい、あるいは10年乗り続けた場合、乗り味はどう変化するのか?」「その際、どんな箇所にどのような不具合が発生しがちなのか?」等々については、センセイ方よりも、その車種に実際乗っているユーザーのほうが100億倍詳しい。

センセイ方も、お詳しいのはやはり「一側面について」のみなのだ。

できるのは「共に考えること」か「主観の一方的表明」




それゆれ私は、「○○○教えます」などという前時代のタイトルをいまだに付けている特集等については「ケッ!」と心の中でディスリスペクトしつつ、「わたしはこのように思うわけだが、貴殿はどうお考えだろうか? まぁ“真実”については共にゆっくり考えてまいりましょう」というスタンスにて原稿を書いていく所存だ。

実際は長屋の机で独りコツコツと書いているため、その時点では読み手の方と「共に考える」ことなどできはしない。しかし現代社会というのは便利なもので、ソーシャルなんちゃらを通じて「共感しました!」だとか、逆に「これ書いたやつ馬鹿じゃねえの?」「氏ねよ」みたいな声が届いたり、あるいは「言ってることはわからなくもないが、これこれこうすれば、もっと良くなる」みたいなアウフヘーベン的ご意見を頂戴することも多い。

いちいち返答はしていないが、そういったご意見のエッセンスをその後書くものに反映させることで(あるいは意識的に無視することで)、「共に考える」ことは十分可能なはずなのだ。少なとも、私個人にとっては「教える」以上の実現可能性はある。

……などということを駅前のドトールで考えていたら、どうやら脳内での考え事が声に出てしまっていたようで、気がつくと私はドトールのテーブルに上り、拳を突き上げながら見えない聴衆に向かい演説をしていた。「さあ皆さん、共に考えてまいりましょう!」と。

すると1人のご婦人が私に声をかけてきた。

「そこの気持ち悪い人、お話はわかりましたが、ところで今何時ですか?」

わたしは正気に戻り、テーブルから降りて手元のアイフォーンを見やった。

「……11時58分40秒です」

アイフォーンに内蔵されている時計は電波時計ではないが、「NITZ(Network Identity and Time Zone)」により時刻が自動的に修正されるため、ほぼほぼ正確である。これであれば「2 知っていることを相手に告げ知らせる」に該当するはずなので、特に問題行動にはなるまい。



ご婦人に「教える」ことができた満足感に包まれながら、わたしはアイスラテ(Mサイズ)の会計を済ませ、長屋へと帰っていった。

[ライター/伊達軍曹]

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