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カーゼニ

更新2017.02.20

非市場マインド的な業界に比べて、中古車業界のなんと健全なことよ!

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伊達軍曹

きょう、ママンが死んだ……というのはアルベール・カミュ『異邦人』新潮文庫版からのパクリで、しかもママンが死んだのは「きょう」ではなく昨夜であり、さらにはママンといっても実のママンではなく父が再婚した女性、つまりわたしにとっては「義理のママン」なのだが、とにかく、亡くなった。

葬儀を含むもろもろの打ち合わせを深夜に終えて思ったのは、葬式仏教界の古くさい、いまだ超絶非合理的な市場の現状と、それと真逆とも言える「中古車市場の健全性」についてであった。

「院」を付けると60万円、「大姉」は100万円?


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「戒名代は、お布施とあわせて60万円」と葬儀社の人に聞いたとき、わたしは病院の談話室で失神昏倒しそうになった。は? 60万円? わたしの聞き間違えではなく本当にロクジュウマンエンなんですか? お通夜なしのお葬式だけなのに?

「はい。あ、そのほかに『御車代』を1万円と、お食事を供されないということでしたら『御膳料』5000円ほどを別途ご住職にお渡しください」

……大変申し訳ないが、ちょっと来てお経をあげて、その前に電話で故人の人柄などを少々ヒアリングして漢字数文字のネーミングを考案するだけで60万円とは、まるでバブル期の糸井重里というか、いかな専門家に対する顧問アドバイザリー料とはいえ、どんなもんだろうか……と、わたくしは若干の怒気を含みつつ葬儀社の方に率直な思いを伝えた。しかし彼は苦悩するように答えた。

「……『院』を付けるとですね、どうしてもそのぐらいになるのが一般的でございまして、そこに関してはなんともどうして……」

院というのは、戒名における「ナントカ院カントカ信女」の院だ。5年前に死んだ父のあの世ネームがナントカ院カントカ信士だったため、それに合わせるというだけの意図で、深い考えもなく「戒名はナントカ院カントカ信女でお願いします。あ、最後のとこはカントカ大姉でもいいかな?」と言ったのだ。

しかし前述のとおり「院」を付けるとコミコミのフィーは60万円相当となり、「大姉となりますと、大変申し上げにくいのですが100万円近くは……」というのが葬式仏教界の相場なのだそうだ。そして、加えて彼は言った。

「院をお付けにならずナントカカントカ信女で行かれますなら、トータル25万円から30万円ほどでご住職もやっていただけるとは存じますが……」

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ここまで古くさい料金体系が今も残っていたとは…


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……申し訳ないがそういう問題ではないのだ。わたくしが怒っているのは(もちろん葬儀社の方個人に対してではなく、葬式仏教界に対してだ)、こういうことである。

すべての物事がより合理的に、効率的に、科学的に高生産性的に、市場の歪みを正しながら、これまでベラボーな既得権益を貪っていた人々には申し訳ないけどあきらめていただく形で、人類がプラクティカルに進歩を続けているこの2017年。そんな時代に貴殿ら葬式仏教界は、いまだ旧態依然たる、まるで昭和の土建屋かバブル期のモータージャーナリストのような、既得権益どっぷりの非効率・非科学・非合理の庭で、破廉恥なパーティを続けている。で、そのパーティが永遠に続くものと思っている。その傲慢さと鈍感さに、わたしは腹を立てているのだ。

もしもAmazonのジェフ・ベゾスが日本の葬式仏教市場への参入を決意したら、貴殿らの既得権益的市場なんてあっという間に壊滅され、滅亡するぞ。それでいいのか? 仏教の徒でありつつも1人の現代人である以上重要となる「合理性」「市場性」は、自分には無関係だとでも思っっているのか? ええい、腹が立つ。デストロイだ。ファック・オフだ。アナーキー・院じゃなかったイン・ザ・UKだ!

そのように絶叫しつつ談話室のテーブルをひっくり返し、窓に向けてパイプ椅子を放り投げる妄想をしながら、わたしのなかのもう1人の冷静なわたしが疑問を呈してきた。

「とはいえ相手は専門家じゃん? 何年も修行して得度した。そういったスペシャリストにはそれなりの報酬を支払うのが合理的な現代人ってやつじゃないかな?」と。

それはその通りでもあるが、否でもある。で、この場合は否だ。

君たちは「世の中の流れ」を知らんのか?


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無論、僧侶というのは(仮に葬式仏教に堕している人であったとしても)そこらのたまたま坊主刈りにしている男性とは異なる「その道のスペシャリスト」であるため、それなりの報酬は当然支払うべきである。

しかしギャランティーすなわち報酬には「相場」というものがあり、そしてその相場は現在、インフォメーション・テクノロジーの急激な発達などを要因にダダ下がりしている。わたくしも土下座まんじゅうライターとして各企業から報酬を頂戴している身なので、昨今のダダ下がり相場にはいろいろ思うところもあるが、しかしこれはもう致し方ない世の中の流れなのだ。

例えば過日、わたくしが代表を務める超絶零細企業「合同会社サージェント」の増資を行ったのだが、ひと昔前であれば行政書士事務所に書類作成を代行してもらうほかなかったため、チンケな書類であるにもかかわらず5万~7万円ぐらいのコストがかかったものだ。しかし今はインフォメーション・テクノロジーの発達により『変更登記ひとりでできるもん』などの電子的な代行サービスが誕生しているゆえ、チンケな書類の作成費用は約10分の1にまでなっている。いや10分の1になったというよりも「価値に見合った価格になった」というほうが正しいのだろう。

これが、世の中の流れだ。無論わたくしは低価格・低報酬を前提とするデフレマインド全開なブラック社会に与する者ではなく、前述のとおり専門家には敬意をもってそれなりの報酬をお支払いしたいと思っている。しかし、ちゃちゃっとやって25万円、1文字か2~3文字追加して60万円はさすがにねえだろ、ていうか今どき無理筋なビジネスでしょう……と思うのだ。

そんなこんなのデストロイ活動を含むネゴシエーションの結果、僧侶へのお布施は25万円でそれなりの戒名を付けていただく、ということで着地した。わたし自身は戒名というものに対する興味はゼロなため何だっていいのだが、古い人間だったママンは「それなり」の死後ネームがあったほうが嬉しいだろう。長い人生お疲れさまでした、ママン。

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それに比べて中古車業界のなんと健全なことよ!


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僧侶へのフィー以外にも指摘したい非合理的・非市場マインド的な葬儀費用見積り項目は山ほどあるのだが、これ以上は言うまい。

言いたいのは、「それに比べて中古車市場はいいなぁ~!」ということである。

わたくしが中古車メディア業界に転身した約20年前の中古車市場にはまだボッタクリ体質が一部に残っていた観もあり、わたしが参入するさらに前のバブル期とかは、たぶんもっとヒドかったのだろう。ロクでもない個体に利幅をノセまくって売って、購入後に壊れても知らん顔、的な。

しかしその後、インフォメーション・テクノロジーの進化と業界の自助努力により状況は大きく変わった。ごく一部にいまだ昭和の悪徳土建屋みたいな中古車販売店も残っているのかもしれないが、たいていのお店さんは(もちろん程度の差はあるが)普通の利幅で、ごくフツーにビジネスをしている。あまりにヒドいことをいまだにやっている店はSNSにて悪行をソッコーで拡散され、そもそもビジネスが成り立たなくなる……という好ましい環境も整備された。

中古車は完璧な機械ではないし、中古車業界に集う人々も決して聖人君子ばかりではないだろう。しかし、それはどこの業界であっても同じことである。中古車界というのはいまだ決して先進的な業界ではないのかもしれないが、ごく普通の人がごくフツーに購入し、そしてフツーに維持できるぐらいまで合理化されたことについて、非合理的な葬儀見積り書を再び見つめながら、わたくしは歓喜の涙を流したのであった。もしかしたらそれは、ママンに対する涙だったのかもしれないが。

[ライター/伊達軍曹]

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