慢性の「フェラーリF355欲しい病」にかかってしまった事の顛末を語る

最終更新日: 公開日:2016-08-29 | Posted in カーゼニ by

いちばん欲しいのは、前回お伝えしたとおり空冷ポルシェ911(タイプ964)の上モノ5MTだ。その中古車相場は現在ウルトラ高騰しているが、近い将来、何らかの錬金術を駆使してどうにか手に入れたいと思っている。しかしそれと同時に筆者は、慢性の「フェラーリF355欲しい病」にも罹患している。


photo by Lothar Spurzem[CC-BY-SA-2.0-DE] (Wikimedia Commons)

そのように書くと、「なんだ、キミも清水草一(MJブロンディ)氏が主宰する大乗フェラーリ教の信者だったか」と言われそうだが、そうではない。

筆者が住まう貧乏長屋は東京の「目黒通り」という高級ガイシャ生息地の近くにあるため、ほぼ毎日のように458イタリアやらカリフォルニアやらが爆音とともに疾走している姿を目にする。が、目にしてところで特になんの感慨もわかない。

「あぁ、なんか低くて音の大きな車がすっ飛んでったな。……458かな?」と、おぼろげに思うぐらいだ。そんなおぼろげな思いすらわかないときもある。もちろん嫌いなわけでは全然ないが、なぜだかまったく興味がないのだ。

しかし、そんなわたしでもなぜか恋い焦がれてしまうのがF355だ。


photo by nakhon100 (Wikimedia Commons)

スリーサイズは4250×1900×1170mmということで、冷静に考えればそれなりにデカい車なのだが、そこからさらに大型化した458イタリアなどに慣れた目からすると「可憐なピッコロサイズ!」にすら思える。ステキである。そして全体的なフォルムもどこか可憐で、458イタリアや488GTBがパリス・ヒルトンのガングロ版みたいなものだとしたら、F355の中古車とは「やんごとなき深窓の令嬢が、諸般の事情で地元の公立中学(中古車屋さん)に転校してきた!」みたいなものである。事件である。

そんなご令嬢だが、高回転域までブン回した際の「音」は他のどんなモデルにも負けないないほどの素晴らしきF1サウンド(※キダスペなどの社外マフラーに交換済みな場合)。そして運動性能も、最新世代のガングロ・パリスと比べてしまうとさすがに数段階劣るが、一般的な地元公立中学の運動会であれば確実にリレーのアンカーを務めるだろう。最高である。

「……これはもう買うしかない!」と欲望メラメラの炎を目に宿していたとき、ちょうど某輸入車雑誌の仕事でかなりグッとくる条件のF355を取材することになった。ボディカラーはロッソコルサ(赤)で、ワンオーナーの実走1.9万km。博物館に飾ってみたい感じのコンディションだったが、価格はコミコミで1300万円。……もちろん安い買い物ではないが、これだけの好条件であることを考えれば「相対的には安い!」と言えるのかもしれない。


photo by Alexandre Prévot[CC-BY-SA-2.0] (Wikimedia Commons)

取材後、わたしは長屋に帰ってお金の計算を始めた。が、現実は厳しかった。現在乗っている車の買取査定額は予想の100万円を大きく下回る50万円にしか届かず、家中のブタさん貯金箱を破壊しつくしても、大した頭金にはならないことが判明した。頭のなかで『昭和枯れすすき』が流れた。

「……オレは一生あのF355を買うことができないのか? ド庶民のオレが深窓の令嬢と付き合おうと思ったのが、そもそも間違いだったのか?」

そんな思いをリフレインさせながら、わたしは呆然とゾンビのように街を歩き続けた。気がつくとわたしは渋谷のNHK付近を歩いており、さすがに疲れて腹も減ったため、目についたフレッシュネスバーガーに入ってランチセットを注文した。

ぽろぽろ涙を流しながらクラシックバーガーをほおばっていると、周囲で行われている複数の、ある共通したキーワードに基づく会話が耳に入ってきた。

見ると、ややイケイケなビジュアルの青年や婦女子らが、同年代の青年および婦女子に対して何らかのプレゼンをしている。「夢」「お金」「権利収入」「時間を手に入れる」「ハワイ」などの単語が聞こえてきて、彼らの手元を見ると、何らかのチャートのようなものが確認できた。

「はは~ん」と、わたしは察した。これはいわゆるマルチ商法の勧誘だ。

隣席のイケイケな青年が熱弁をふるっている。「夢は必ずかなう」と。そして、それに付随してフェラーリを買う程度のお金などごく普通に獲得できる、と。

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この記事の筆者:伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めた...