カーゼニ
更新2017.05.29
自動車愛好家がカーシェアリングを利用するのはご法度なのか？
伊達軍曹
レンタカーを借りるべき事態が発生。だがコストが気になる
いきさつはこうだ。自分は「東京フォッケウルフ」なる中年草野球球団を主宰していて、普段は乗車定員2名のNAロードスターに自分と道具類を載せ、河川敷などにある球場へ日参している。いや日参はさすがにウソだな、月2ぐらいで通っている。
しかし此度の5月28日に今シーズンの初試合を迎えるにあたり、我らが中年選手団の集まりが少々悪い。
そこで自分は年若の友人であるシンゴ（28）に助っ人としての参戦を依頼。シンゴに助っ人を頼むと自動的にイッペイ（28）も来ることになり、そうなると乗車定員2名の我がNAロードスターは定員オーバーになってしまうわけだが、「まぁイッペイは死体のようにトランクに押し込んどきゃよかろう」などと自分は高をくくっていた。明白な道交法違反だが。
しかし、シンゴが気を利かせてくれて「もう1人ダチを連れて行きます！ 元野球部です！」と言う。となれば総員は4名。NAの狭いトランクにイッペイとヤキュウブ（仮名・たぶん28歳）の2名を押し込むことは不可能。ていうか、そもそも違反だし。
「うむう……となれば当日はレンタカーを借りるしかないか」と思った自分だが、レンタカーってやつは「予約して→当日出向いたうえでいろいろ記入させられて→ガソリン代とかもかかって→結論としてめんどくさいし、コスト高だし」という欠点がある。
うむう……とさらに唸っていた自分だが、ふと、先日アイフォーンで読んだ尊敬するライター・ヨッピー氏のカーシェアリングに関する記事を思い出した。
拙宅の近所には14箇所ものステーションがあった
カーシェアリングというものに対して、クルマ好きとして思うところはいろいろある自分だが、便利か便利じゃないかと言えば、圧倒的に便利であるらしい。ヨッピーがそう言ってるんだから、間違いないだろう。
「なるほど。では今こそカーシェアリングってやつを試してみようじゃないか」と思った自分はテキトーにPCを起動し、テキトーに（一番上にあった）タイムズカープラスに入会した。現在は「おためしキャンペーン」として最初の2カ月間の月額基本料金が無料になるらしい。渡りに船である。
本稿を書いているのが5月26日（金）で、クルマを借りるのが5月28日（日）なので、まだ実際のところはわからないのだが……なんかこれ、すげえイイんじゃないすか？
まずステーションが近い。
自分の場合、もっとも近いステーションまでは徒歩50秒。……徒歩50秒ってアナタ、ちょい離れた場所に月極駐車場を借りてる人よりラクじゃないですか！ で、仮にそのステーションにあるクルマの予約が取れなかったとしても、我が長屋の比較的近所には、今調べたところによれば計14箇所ものステーションがある。……ワオ。
まぁこれは自分が都市部に住んでいるからこそであり、「秩父」とか「奥多摩」とかでステーションを検索してもほとんどヒットしない。そして例えば西武多摩湖線という微妙な路線の、八坂という超微妙な駅にも、2017年5月末現在はタイムズカープラスのステーションはないようだ。そのあたりの問題は当然ある。が、都市部に住む人間にとっては「ななな、なんて便利なんだ！」としか言いようがない状況なのだ。
「タダみたいなもん」とすら言えそうな利用料金
そしてお安い。
月額基本料は、自分の場合とりあえずキャンペーンで最初の2カ月無料だが、その後の基本料は月額1030円（個人プラン）。……いい年こいた大人にとっては「タダみたいなもん」と言えよう。センベロ1回分、気の利いた飲み屋の日本酒1杯分でしかない。
で、利用料金はベーシッククラス（スイフトとかデミオとか）の場合で206円／15分。そしてレンタカーと違ってガソリン代はかからない。ということは、2時間借りたとして1648円。……これまたタダみたいなもんだ。
今回の自分は11時から18時まで借りる必要があるので5768円になってしまうわけだが、そんな場合は「6時間パック」というお安い料金体系が適用されるので、結論として4020円で済む。これはさすがに「タダみたいなもん」とは言わないが、レンタカーを6時間借りるのに比べれば断然お安い。レンタカーだと、ガソリン代込みで7000円ぐらいではナカロウカ。うむう……お安い。そして、便利である。
だが自動車愛好家としての“情念”的にはどうなんだ？
で、そうなったときに当然想起されるのが「じゃ、もうコレでいいんじゃねえの？」ということだ。
具体的には、月額賃料約2万5000円也で借りている駐車場を解約し、それなりの自動車税と整備費用ならびにガソリン代を必要とする自家用車を売却してこまし、向後はカーシェアリングのみにて生きていく。……そんなライフスタイルも、クルマ道を修める者としての良し悪しは別として、あり得るべき未来ではあるはずだ。
考えてみれば自分はあまり自家用車に乗らない。
や、乗らないこともないが、正直たまに乗る程度である。たまに遠方というか“郊外”ぐらいのニュアンスの場所へ取材に行き、たまに「電車とかバスでも行けるんだけど、クルマのほうがどう考えても便利」というような場所に、取材や私用で赴く。で、前述のとおり月2回ほど、河川敷の球場へ草野球選手として出動する。
あとは基本的にクルマには乗らず、徒歩ないしは電車／バスにて移動しつつ、酒を飲んだり、飲んだ勢いで「よっ、姉ちゃん！ オイラと遊ばない？」などと道端で婦女子に声をかけてビンタを食らう……というのがわたしの日常だ。
であるならば、その「たまに」をすべてカーシェアリングに代替させたとしても、さほど大きなプロブレムはオカーしないのではないか？ と、おぼろげに思うのである。
だがもちろん、話はゼニや使用頻度だけの単純な問題ではない。
わたしもこう見えていちおうはクルマ好きなので、つまらない用事のお供であったとしても、やはりNAロードスターを運転している最中はシンプルに楽しい。特にスピードを出したりカーブをギャーッと曲がるわけではないが、普通にターッと走ってるだけで「軽いなあ…素直だなあ…楽しいなあ……」とウットリする。その瞬間がなくなることに、自分は耐えられるだろうか？
またビジュアルの問題もある。他人から見ればただの古い中古車かもしれないが、自分としては、信号待ちでガラス壁面に映る我がNAロードスターのフォルムならびにディーテイルを見るたびに「正直、マブいぜよ……」と、これまたウットリしている。
そういった瞬間がすべてなくなっても、「やっぱ合理的に考えればカーシェアリングでしょ？ 都内住みでわざわざ自家用車持ってるヤツとか、正直バカじゃん？」と自分は思うのか？ それとも、「多少の無駄ゼニはかかっても、やっぱ“好きなクルマに乗る”っつーことの価値は無限大だよなあ……」と思うのか？
中年草野球球団の今シーズン初試合の結果も楽しみだが、そちらについても、どちらに転ぶにせよある意味楽しみな、不肖筆者である。
［ライター・画像/伊達軍曹］
